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門下生作品講評【No.11】

◉札幌手稲教室 本間智美さん
『明』

智美さんは長く通われていて(たぶん5年くらいかな…)
3年前に、私ともう一人の生徒と3人で
札幌のギャラリーで共同展示会をやった方です。
絵本作家でもあるので、
絵画的な造形が得意なんだと思います。

さて、ペタペタと版画技法で
模様作品をたくさん生み出していて、
その中から


「先生、これを、脈と派とかの、こっちの
右側のツクリ、にしたいんですけど…
でも、そうすると、左側に、月とかサンズイとかを
書かなくちゃならないですよね…
だとすると、どうやって書いたらいいか…
あまり書き過ぎると…変ですよね…」

ほほー…なるほどー…
脈かぁー…うーん…遠いなー…

この模様、ものすごく綺麗です。
これが右側にあるのが
あずましくない。(北海道弁で、居心地が悪い)
なぜ、あずましくないのか、は
感覚的なところではあるんだけど、
私の感覚や分析だと、日本人は心理的に
書道作品を見る時にパッと
「上から」見るし、「左から」見ると思うんです。
なので、この綺麗な模様が主役だと思うので、
これを左側に置く方が、
見た時に一番に目に入るので、落ち着くかな、と。

90°回転させて、

こうしてみたらどうだろう。

おー…わかった!!
「よし!明、にしましょう!
ここに、ポチっと、薄墨で丸い点を入れて、
右側に、例の紐持ちの線で月を書きましょう!」

「わかりました!月は、どこから書き始めますか?終わりは?」

「月は、上にはみ出して、下は、
ラッパずぼんみたいに、少し広げてください!」

そして、智美さんは、「月」の練習を。
しばらくして、

「こんな感じでどうでしょう?」

はい!オッケーです!
では、本番!!書いてみよー!!

「わぁ〜…緊張するー…」

そうなんです。
渾身の、とても上手くいった模様に
筆を入れる。
一発本番。失敗したらもう二度と同じ模様は
書けない。台無し。

わかります…

そしてできたのがこちらです。

おおー!良いじゃない!!!

でもご本人は
「さっきの練習の月の方が良いですよね…」と。

良いか悪いか、は置いといて
実は、これ、半紙が違うんです。

本番の半紙と練習の半紙が違うので、
線の出方、墨の滲み方、掠れ方が違います。

半紙の質で言えば、本番の方が
良い半紙です。(高い半紙です!)

写真ではわかりにくいですが、
墨の黒が本番の方が綺麗です。
なので、こっちの方が良いです。
(裏打ちするともっと黒が綺麗に出るはずです)

墨も紙も、自然のものから作られています。
なので、「いつも同じようにいかない」
「意図しない表現が出る」ことも
多々ありますが、そこが墨と紙との
面白いところですよね。

偶然性と、再現性無し。
だから難しいし、面白いです。

2023.07.11@北海道札幌市

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