ラストアイドルの解散に寄せて
2022年5月31日、生まれて初めて自分で好きになり、真剣に応援していたアイドルグループ「ラストアイドル」が解散した。
3月に急に告知された、5月末での活動終了。
多くのメンバーやファンが悲しみ、悔やみ、私もしっかり途方に暮れた。
正直なところ、ラストアイドルはあんまり売れなかった。
売れなかったというか「売る気がなかった」のが正しい気がする。
11枚のシングルを出したし、いずれもクオリティの高い楽曲とライブパフォーマンスでアイドルオタクからは高評価を集めたけれど、ラストアイドルというグループは、気軽に推すにはハードルが高いグループだったと思う。
私がラストアイドルを知ったのは1stシーズンだけど、ハマったのは3rdシーズン。
そもそも、アイドルの歴史をこんなに細かく分けることがないから「ファーストシーズンって何?」となるはず。
詳しくは公式のYouTubeを見てください、としか言えないくらい説明するのが面倒くさいのだけど、
秋元康が「語りたくなるアイドルが至高(的な発言)」をしたのに比べて「語ると長くなるから…まぁ…」と濁したくなるなんていかがなものかと思う。ねぇ秋元先生。
私がラストアイドルを好きなことを知って、周りの人が社交辞令的に「どんなグループなの?」と聞いてくれたところで
「最初はオーディションバトルがメインで7人のデビューメンバーを決めるとこから始まったんだけど、結局バトルの敗者もほとんどユニットとしてデビューすることになって、番組が終わるころには20人以上のファミリーになってた。その後はユニット同士でのシングルタイトル争いとかしてて、一年後には2期生も募集したから50人超えの大所帯グループになって…だけどメンバーの卒業が相次いで最終的に今は30人くらいのグループになっていて今に至る」
という説明をしないといけないグループになっていたし、
バトルから始まったグループだったから「単推し」「ユニット推し」の意識がすごく強くてファン同士もピリピリしていた。
他のグループにもあるのかもしれないけど、何しろ大所帯なので矢印の行先が多すぎる件。もはや誰を推しても何か言われるような感覚だった。
グループの変遷がカオスなのはともかくその活動内容も独特で、シンプルにライブとバラエティをすればいいのに、団体行動をやってみたり、殺陣をしたり、ボリウッドダンスをしてみたりと、オタクの頭の上には常に「?」があったけど
メンバーが頑張るといった以上は応援するのがオタクと云ふもの。「?」を消せないままペンライトを振り続けていた。
コロナ流行時から2021年以降、明らかにアクティブなファンが減っているなという感覚があったし、「?」を無視できなくなったオタクは少しずつ姿を消していった。
それでもそのカオスさに慣れてしまったし、何しろ推しの人間性やパフォーマンス性に魅了されていた私は相変わらずしっかりとハマり続け、深夜にやっていて何となく見始めて存在を知ったグループの解散を見届けるまでに至った。
合わない人には合わないけど、ハマる人にはめちゃくちゃハマるコンテンツだったなと思う。
ユニットやメンバー同士(実際はファン同士)のバチバチ感は往年のギラギラしていたAKBみたいだったし、
実際のところバトルはしたくなくて平和主義の子が多くてライブを純粋に楽しんでいる姿は坂道グループのようでもあったし、小さい頃から生粋のアイドル人生を過ごしてきた筋金入りのメンバーのパフォーマンスはハロプロのようだった。
これだけは言い続けたいけど、ラストアイドルは楽曲にとても恵まれていた。
そしてライブのパフォーマンスを引っ張る主力メンバーにも恵まれていて(正直歌があんまり上手くない子もダンスが覚えられない子もいたけど)主力メンバーがちゃんとリードしている限り大丈夫という安心感がすごくあった。
つまりやっぱりそこらへんの地下アイドルとはレベルが違って、ライブ満足度がすごかった。
コロナがなくて、もっとしっかり定期公演のライブ活動が続けられていたら今はもっと違う形だったかもしれないなと思う。
とはいえ、ラストアイドルで有名と言えるのが「運営のひどさ」。
オタクの口から息をするように吐かれる「運営がクソ」のような言葉がこんなに日常的に呟かれたグループはなかなかいないんじゃないだろうかと思う。
もうあえてここでは何も言うまいと思うので言わないけど、本当に「なんで??」が多い運営だった。
全体的にセンスがなくてちょっと古くてメンバー任せで、とてもエンタメ業界の高収入の大人たちが考えているとは思えない内容の企画やプロモーションが多かった。
たらればは悲しいけど、どうしたって「もうちょっとどうにかならなかったのか」と思わざるをえないし、ずっとこのモヤモヤは抱えてしまうのだと思う。
たくさんの楽曲を日常的に聴いて、ここ数年はラスアイ漬けだった私の耳。
ライブの日を楽しみにして頑張って、仕事が終わって即ライブ会場に向かって、推しだけを観てペンライトを振って、何ものにも代え難い幸せを抱えながらふわふわとした足取りで帰った日。
まさか私がアイドルの握手会に行くなんてと思いながら往復4時間かけて行った幕張メッセでのイベント、推しが本当に神々しすぎたけれど、遠慮がちに握らせてもらった細くて美しい手は忘れられない。
私の好きだったラストアイドルは大人の都合により解散してしまったけれど、大人の都合により生まれ、4年半活動できたのも事実。
たくさんの思い出をありがとうという気持ちは本当だし、ラストアイドルという進路を断たれて強制的に方向転換した未来を歩むことになったメンバーの今後が、より幸せで素敵なものになるようにと願わずにはいられない。
ラストアイドル解散から約3ヶ月経つけど、まだラストアイドルの楽曲は聴けていない。いつかまた純粋に楽しみたいな。