[009] サイトワールド2024で気になった支援技術的なもの
2024年11月1日からの3日間、東京都すみだ産業会館において開催された「サイトワールド2024」へ行ってきました。私は11月1日にガッツリ展示を回り、11月2日は午前のワークショップに参加。本当は3日の石川先生の講演も聞きたかったのですが、諸事情により断念。まあそれはそれとして、私が展示を回って気になった、興味を持った製品や技術について、いくつかピックアップしてみます。なお来年のサイトワールドは10月16日からの3日間にかわるとのことですのでお間違えのないように。
※今回初めて記事に画像をアップロードしてみましたが、どうしてもスクリーンリーダーでうまくaltを設定できず入れていません。画像サイズなど見づらい部分などありましたら、コメントで指摘していただけると助かります。いや難しいですね。
Magnatab:点図が描けるアナログおもちゃ
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まず公益財団法人共用品推進機構のブースで見つけた「Magnatab」に興味を惹かれました。このブースでは障害のあるなしにかかわらず便利に使えて楽しく遊べるグッズ、例えばユニバーサルデザインの生活用品や点字付き絵本、タカラトミーが推進する共有玩具などがずらりと展示されています。
そんなアイテムの中にあった「Magnatab」は米国のメーカーが設計したアナログ知育玩具。四角いタブレット型の本体表面にグリッド状の穴が開いているおもちゃです。付属のスタイラスペンで図形や絵を描くと、マグネットの力で穴の内側からボールが隆起し、描いた形を触覚で感じられます。隆起したボールは指で押し込むかスタイラスを寝かせてスワイプすることで元に戻るという仕組み。2種類のサイズが展示されており、うろ覚えですが小さい方は一辺20ドット、大きい方は28ドットくらいの解像度でした。ドット同士の隙間がやや広く、一般的な点図や触図と比べるとかなり粗いですが、即興的に触覚によるコミュニケーションが取れるアイテムとして、例えばアート鑑賞などにも使えるかもと思いました。まあ美術館にこれを持ち込めるかは別の問題ですが。日本でもAmazonなどで入手できるようなので、現在購入を検討中です。
ぶるなび:錯覚を応用した仮想牽引デバイス
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NTTドコモのブースでは「ぶるなび」が不思議で面白かった。手のひらにすっぽりおさまる程野ワイヤレス端末の裏表にある振動素子を親指と人差し指で軽くつまむと、水平方向360度の方向へ引っ張られるような感覚を体験できます。ナビゲーションシステムや遠隔サポートと組み合わせることで、視覚障害者の誘導に使えるかもと感じました。
同様の技術は少し前にCCBTで開催されたオーディオゲームセンターでも体験したことがあるのですが、ぶるなびの方が素子サイズが大きく、より引っ張られる力をはっきりと感じられます。ただ得られる感覚には多少の個人差があるようで、安定した誘導には課題もありそうです。
あしらせ2:靴装着型振動デバイス
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今回のサイトワールド出展社の中でもかなり注目度の高かったAshirase。代表の千野さんに、新製品である「あしらせ2」について直々のレクチャーをいただきました。実は体験するのは初めてで、一通りの振動によるナビゲーションを体験。私がその場で思いつくシチュエーションはほぼカバーされており、非常に練られているという印象で、ウェアラブルデバイスとしての完成度はかなり高いように思いました。
ナビゲーションデバイスとして考えると基本、衛星による測位であり、どうしても「ラスト×メートル」の課題があるわけですが、これを有人遠隔サポートサービス「アイコサポート」と連携することで補完するサービスも提供しています。このような複数の支援技術を組み合わせる取り組みは今後も増えてきそう。あとはソフトウェア側でどのような展開が出てくるのか楽しみです。
音響車両警報システムの安全性
株式会社オートテクニックジャパンは今年初出展。EV(電気自動車)やhv(ハイブリッド車)から発せられる、音響車両警報システム(AVAS)を解析し視覚障害者に警告するシステムを開発中とのことです。サイトワールド出展社の中ではかなりマニアックな内容ですが、普段なかなかお話しすることもないモーターエンジニアの方から貴重なお話を伺うことができました。
この問題、派手ではありませんが、ここのところ急速に増えつつあるEVやHVの「奇妙な音」が気になっている視覚障害者には結構重要なトピックであるように思います。担当の方とお話ししていて共感したのは、メーカーによって音が違うことによる混乱。要するに従来のエンジン音ではダメなのか?というお話し。なお、ブースでは日産、ホンダ、トヨタのAVASを聴き比べる体験もできました。
Hable OneとDot Pad
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株式会社ラビットのブースでは、新製品としてiPhone向け点字入力キーボード「Hable One」に触れられました。6つの物理ボタンで点字入力が行え、左右に備えるオプションキーとの組み合わせでVoiceoverのほとんどのコマンドを実行できるそうです。想像よりもサイズが大きく、その割に軽量なので少し頼りない(もしくは安っぽい)と感じるところもなくもないのですが、iPhoneにおけるタイピングの効率性は確実に上がりそうです。Webにはまだ情報がありませんが、価格は4、5万円くらいだったと思います。
また韓国Dot Inc.の「Dot Pad」もこちらのブースにありました。iPadで何か絵を描くと即座にDot Pad上にレンダリングされるというデモンストレーションと、マルチラインの点字表示を体験。出展されていたDotPadは製品版で、価格は税込1,218,800円。現在在庫切れのようですがラビットのWebで予約を受け付けています。
LV-HAT:頭への振動で障害物や方角をお知らせ
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最後にアルプスアルパインのブースで参考出品されていたのがロービジョンハット(LV-HAT)。出展者情報によると「視覚障害を持った人が被ることで、方位や歩行ナビの案内を直感的に知らせることができる方向認知デバイス」とのことです。帽子の内側に、頭部をぐるりと囲むような形で振動素子が仕込まれており、赤外線センサーで検知した障害物やむいている方向の情報を装着者へ伝達する仕組み。あしらせが足ならこっちは頭だ、ということなのでしょうか。同社が持つ高度な振動技術が今後どのような形で生かされてくるのか興味深い展示でした。何よりも担当の方が熱かったのが印象的。なおアルプスアルパインはAIスーツケースを改発する次世代移動支援技術開発コンソーシアムへ参加していますが、LV-HATはまた別のプロジェクトとのことです。
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