[021]「Seekr」と「「seeker」
先日、香港のスタートアップVidi Labsから「Seekr」と名付けられた視覚障害者向けウェアラブルデバイスの発表がありました。これは深度検知カメラとプロセッサ、バッテリーなどを備えたマッチ箱ほどのコンパクトな端末で、衣服やバッグなどにクリップオンし、ワイヤレス接続されたスマートフォンアプリと連携させ使用するデバイスです。音声を再生させるため、スマホ接続が前提となっており、スタンドアロンのウェアラブルデバイスというよりは、スマホ向け外付けAIカメラユニットとも呼ぶべき製品かもしれません。App Storeの説明によると、現時点で明らかになっている機能は以下の4種類。
1.障害物検知。3メートル以内の障害物や物体を検出します。
2.テキスト識別。印刷物や看板、メニューなどを読み上げます。
3.シーン説明。人、色、材質、雰囲気など、周囲の詳細な説明を提供します。
4.スーパーマーケットモード。店舗内の通路と製品情報について説明します。
Seekrは現在、公式サイトで予約注文を受け付け中。価格は6,000香港ドル(約770米ドル)で、これには1年間のサブスクリプションが含まれます。連携アプリは将来的に英語、広東語、北京語、日本語、スペイン語に対応する予定で、この情報から考えてみると日本への展開もあり得るかもしれません。
ただこの製品、気にはなるのですが、現段階でスペックをはじめとする細かい情報が出ておらず、実用性に関しては判断が難しいところ。おそらく処理はオンデバイスで実行されると考えられますが、各モードがリアルタイムで動作するのか、なんらかのアクションで実行されるものなのかも今一つはっきりとせず、また駆動時間など不明な部分も多い。ただ既にCES 2025 INNOVATION AWARDSを獲得しており、そう遠くない時期にその全貌が明らかになると思われます。
ところでこのデバイスの名前、どこかで聞いたことがあるような、と感じている方もいるのでは無いでしょうか。そう、日本のスタートアップであるマリス creative designが「seeker」と名付けられたウェアラブルデバイスを開発しているのです。こちらのseekerは首から下げるメインユニットと、白杖に装着する振動ユニットで構成されたウェアラブルデバイス。メインユニットにはカメラ、深度センサー、エッジAIプロセッサなどが備えられており、カメラでキャプチャした画像をAIで解析、白杖を振動させて障害物や横断歩道などの情報を伝えます。2025年の出荷を目指しているとのことで、先日開催されたCEATECでも出展されていたようです。
こちらは頭文字が小文字で「e」が多いため、スペルを確認すると別物とすぐにわかるのですが、スクリーンリーダーでは判別が難しいのも事実。そして日本の「seeker」の方が改発が古い(2018年)ため、紛らわしいことをしているのはVidi Labsの方ということになります。おそらく偶然ではあると思うのですが、将来的に混乱を招くことにならなければ良いのですが。
それにしても、ここのところRay-Ban Metaを始め、にわかに視覚障害者向けウェアラブルの話題が目に入るようになっているような気がします。視覚障害者が求める性能を持った上で、ハンズフリーや長時間駆動、ファッション性などスマートフォンとの差別化が明確になれば、定番のウェアラブルデバイスの登場もそう遠くはないのかもしれません。まあ、そこにたどり着くためには、まだまだ超えるべき技術的ハードルは少なくないようにも思うのですけどね。
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