[004] 支援技術の「所有者」とは、いったい誰であるべきなのか?
この記事は、支援技術が持つ根深い問題の一つを炙り出しているように思います。どれほど画期的で障害者の生活を改善するものであったとしても、ユーザーの生殺与奪は製造メーカーにガッチリと握られているというこの事実には、どうしても暗澹たる気分にならざるを得ません。
そもそもこのお話は、10万ドル相当のReWalk Personal外骨格のユーザーが、モデルが古いという理由で修理を拒否されたことが発端となっています。最終的にはメディアや世論からの批判を浴びたメーカーが折れ、修理に応じたことで一応の決着をみたわけですが、これは日常的に支援技術に依存している障害者にとってまさに「明日は我が身」なお話といえます。
この記事でも言及されていますが、このようなトラブルはこれまでにもいくつか発生しており、特に網膜インプラント「Argus II」を改発するSecond Sight社の経営破綻により、デバイスを埋め込まれた多くのユーザーが置き去りにされたという、ショッキングな報道は記憶に新しいところ。このnoteでも先日取りあげたNeuralink社のBlindsightに関しても、同様の懸念が提起されています。
外骨格にしろインプラントにしろ、身体の一部を支援技術により置き換えるという決断は、それを使用する健康的、経済的負担はもちろん、突然何かしらの理由でそれが機能しなくなるというリスクも抱えることになります。一般的な製品と異なり、支援技術は代替手段が少なく価格も高価であり、さらにパーソナライズが必要である場合が多く、簡単には交換することはできないのです。
この問題を完全に解決することは難しいかもしれませんが、支援技術を導入する上での負担を軽減するためになにかしらの法的規制や保険システムの整備、柔軟なメンテナンスの仕組みなどが求められてくるでしょう。これは支援技術を改発、販売する側にもメリットは大きいはずですが、現状ではまだそのような枠組みは存在せず、障害者はいまだに難しい洗濯を強いられているのです。
もちろんこの問題は、独占的な技術を持つスタートアップ企業に限ったお話ではありません。巨大企業であっても(さすがにいきなりクローズするようなことはなくとも)、経営陣の方針転換によりアクセシビリティの優先度を下げられてしまう懸念もあるのです。実際私たちはtwitterの買収劇でこのリスクに直面したわけです。テクノロジーへの依存には常にこのようなリスクが付き纏うと言って仕舞えばそれまでですが、こと障害者にとってはこれが情報の遮断や失職、さらに言えば声明にも関わりかねない重大な影響を受ける可能性があるのです。だからと言って生活の負担を軽減させてくれる技術に手を出さないという選択もあり得ない。支援技術とは、いったい誰のものであるべきなのか、考えてしまうお話でした。
情報源:Paralyzed Man Unable to Walk After Maker of His Powered Exoskeleton Tells Him It's Now Obsolete
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