[過去記事特集] ベトナム人と家族主義
ベトナム人の暮らし、人生に深く根差しているのは過剰なまでの「家族主義」です。この記事では、ベトナムで家族がどのようにして社会的なセーフティネットの役割を果たし、ベトナム語の使用がこの考え方を如実に表しているのか、さらにこれが日本でのベトナム人の犯罪にどう関わっているのかについて、丁寧に紐解いていきます。
①ベトナム人にとって家族は最後のセーフティーネット
ベトナム人と関わったことがある人なら、ベトナム人の過剰なまでの家族主義(chủ nghĩa gia đình)と言われる家族第一信仰を誰しも感じたことがあるでしょう。
職業、年齢、貴賤など関係なく、どんなベトナム人でも「親が大事」「家族が一番」「子どものために」などの信仰を必ずといっていいほど持っています。
ではなぜベトナム人は過剰なまでに家族を大事にするのでしょうか?
家族は最後のセーフティーネット
それは共産党政府にとって都合の良い「最後のセーフティーネット」として機能しているからだと考えられます。
なぜベトナム政府にとって国民が家族主義でいてくれたほうが都合がいいのでしょうか。それは親と子が互いに補完し合い、家族が共依存の関係にあると、国民の生活の責任を政府が負わずに家族に押し付けることができるからです。
例えば都会で働く子どもが失業した時は親のいる実家に帰れば衣食住の保障がされます。近年のコロナ禍でも都市部に出稼ぎに来ていた多くのベトナム人が失業して田舎に帰りました。仕事は失っても実家に帰れば最低限の生活の保障はされるからです。
また、親が年老いて介護が必要になった時は逆に今度は子どもが親の面倒をみます。ベトナムには老人ホームなどがほとんど普及していないため、家で家族が介護しなければなりません。
さらに、ベトナムでは病院に入院すると身の回りの世話は周りの家族がやらなければなりません。ローカル病院では医者や看護師は医療的なケアをするだけで、患者の食事、トイレ、着替えなどは周りの家族がしなければなりません。
そのためローカル病院では患者の家族が患者と一緒のベットで寝たり、床や廊下にゴザなどを敷いて寝たりしている風景がよく見られます。
ベトナム家族主義共和国
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