【疎開日記2021】#17 泣き活とくすぐり大会
7月31日(土) 疎開生活61日目
ついに7月が終わろうとしている。
ロックダウンからの毎日と言っても、特に変わったこともなく、相変わらず野菜と牛乳が手に入らない日々だった。
野菜と牛乳と書いているので、じゃ、肉は買えるんだね?という印象を受けるかもしれないけれど、もちろん肉も買えない。ただ肉類は冷凍しておけるので、買い込んだ分がまだある、というだけ。
野菜類でも、茹でたり、調理したりで冷凍して取っておける物や、日持ちする根菜類は手元にある。今一番欲しいのは葉物、新鮮なレタスもりもりのサラダが食べたい。
先週までは毎日近所のスーパーとコンビニをチェックしに行っていたけれど、なかなか入荷されず、おにぎりやパン、牛乳、卵はもちろん、インスタント麺の棚も空っぽのまま。
米は買ってあるけれど、作っておいたなめ茸やきゅうりのキューちゃんだけではやはり飽きが来る。他のものが食べたい。パスタもあるけれど、パスタソースにする物も少なくなってきた。
ベトナムのインスタントラーメンやインスタントフォーも買ってあるけれど、やはり毎日食べたいものではないし、これだってもうしばらく売り切れ状態が続いていて入荷される見込みがないので、大事に食べなければならない。
そもそも子どもが食べられる辛くないインスタント麺が少ないので、買える種類だって限られている。
本当はうどんやそうめんが食べたい。けれど、こちらには売っていないし、ホーチミンから持ってきた日本の調味料も底をつき始めているので、麺つゆを作るのも一苦労だ。ほんだし、コンソメ、味噌、みりん…ホーチミンの家になら買い置きがあるのに。
この食が豊かなベトナムで食べ物の心配をすることになろうとは思いもしなかった。数日もすれば、何かしら手に入るだろうと思っていた。前回のロックダウン時は「食べ物は豊富にあるから大丈夫だ」と政府も言っていた。今回はだいぶ違う。
前にロープを張って、店内に入れないようになっているお店
金網で囲っている店もある
市場やロッテマートのような大きいスーパーへ行けば野菜も買えるのだろうけれど、タクシーやgrabが止まった今、移動手段がないわたしは近所で済ませるしかない。しかも、子連れだ。子連れで大きなスーパーへ行くのはリスクが高い。かと言って置いていくのも不安だ。
考えれば考えるほど不安は増すばかり。
①大きなスーパーで感染者と同じ時間に買い物をして感染する可能性
この場合、否応なしに隔離施設(野戦病院と呼ばれている)行きなので、わたしだけが感染して子どもを置いていくのも、子どもが感染して連れて行かれるのも困る。人混みは避けるべきだ。
②スーパーへ行っている間に運悪くスーパーや道路が封鎖される可能性
出かけた先でその地域に感染者が出たために突然封鎖され、帰れなくなってしまったという人の話をいくつか聞いた。買い物帰りに通ったヘムが封鎖され、そのまま2週間…言葉も通じない外国でそんな目に遭ったら。考えるだけで恐ろしい。
③子どもを置いて出かけているうちにマンションが封鎖される可能性
留守番ができる歳になったとはいえ、一人で置いていくのもリスクが高い。ブンタウも感染者が増えていて、我が家の近くの道路も次々と封鎖されている現在。実は数日前に同じマンションの隣の棟で感染者が見つかり、フロアが封鎖されたばかりだ。
そんな中、今週ようやくコンビニに僅かな野菜と卵が並んだ。インスタント麺も入荷した。同じマンションに感染者が出てから、わたしと娘は家から出ないことにしたので、仕事帰りの夫がコンビニとスーパーを覗いて来てくれる。
そして、嬉しいことに牛乳も手に入った。うちから少し歩く場所にある輸入品のお店に並んでいたのだ。前にナツメグを買った店だ。もう狂喜乱舞。
3週間ぶりにお目にかかったカップヌードル、ジャパニーズシーフード味
こちらのカップヌードルにはフォークが入っている
お久しぶりの「うどんスキスキ」も和を感じられてありがたい
食べ物への不安が少し和らいできて、またようやく日記を書く気にもなった、そんなところだ。
夏休みが始まり、一番困ったのは本が手に入らないことだ。わたしも娘も活字中毒。本がないとどこか満たされない。それで、ついに電子書籍に手を出した。もう好き嫌いは言っていられない。
まずは娘用に10冊ほど購入してみた。iPadで読んでいるので、目が疲れるらしく、集中して読み切りたいところだが途中で「遠方凝視訓練」。休み休みでも、本を読む喜びを再び噛み締めている様子。
午後になるとベランダに日が当たるようになるので、休憩がてら日光浴をする。もともと真っ黒に日焼けしているわたしと娘、ロックダウンしてから出かけることもできないので、日に当たる時間が少なくなりビタミンDの不足が心配。紫外線が日本の4倍だろうが、日焼け止めは塗らずに1日20分は日に当たりたい。
運動も毎日している。上半身、特に背中と、お尻と股関節は積極的に動かすようにしている。トレーナーになるべく勉強した経験があるので、効率よく体を動かしていると思う。音楽に合わせて踊ったりもする。
それでも、やはり家から一歩も出ない生活はストレスが溜まる。
娘が夜に突然泣き出すことがある。「ホーチミンのおうちに帰りたい」と言う。そうなったら、とにかくギュッと抱きしめて、わかるよ、わかる、お母さんも同じ気持ちだよと言って一緒に泣く。泣くだけ泣くとスッキリする。
そんなわけで、たまにはみんなで涙を流そうと「泣き活」なるものをやってみた。家族みんなで絶対に泣けるであろう映画を見るというだけだけれど、泣くことでストレスが発散されればいい。
選んだのは「旅猫リポート」。本を読んでいて内容を知っていた。過去に読んだ本が映画化された場合、自分の想像していたものと違ってがっかりすることが多く見ることも少ないのだが、今回の目的はとにかく泣くことだったので、深く考えずに見ることができた。
結果、家族で大泣き。鼻が詰まって苦しかったが、目が腫れるほど泣いてスッキリ。免疫が高まったに違いない。
けれど、まだまだ免疫を高めたい。
我が家で感染するリスクが一番高いのは夫。家族で唯一、外出している人だからだ。普段から滅多に風邪もひかないような健康体の夫だが、このところ疲れが目立つようになって来た。どうにかして夫の免疫力を高めたい。
泣く他に、笑いやスキンシップもストレス解消や免疫を高めるにはいいらしい。そんなわけで、娘がたくさん夫にくっつくことに。夫ウハウハ。
娘が寝る前に夫とじゃれあっていると、夫が声をあげて笑い出した。娘の髪の毛が夫をくすぐって、たまらなくなって大笑いしたらしい。これが娘にも伝染。わたしも参戦して、三人でくっつきながら大笑いしながらのくすぐり合いっこへと発展した。
そして、それが夜寝る前の恒例行事となった。
この笑い声が響いている限り、我が家は安泰に違いない。
8月も笑いながら過ごしていきたい。
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