【疎開日記2021】#24 食べるか、溜めるか問題
10月18日(月) 疎開生活140日目
最近、昼頃にスコールが来る。
お昼ご飯の用意をしている時に外が真っ白になって、慌てて洗濯物を取り込む。そういえば、雨季だった。このところ雨が少なかったし、ずっと引きこもっているので忘れていた。
大雨で飛ばされてしまった向かいの家のシーツ
雨季、外出先でスコールが来るとタクシーが捕まらなくなるし、場所によっては冠水するので、天気を読みながら出かけなくてはならない。ちょうど日本人学校の下校時刻にスコールがやってきて、娘とビチョビチョで帰宅することもある。厄介だけれど、乾季ほどの暑さはなく果物も美味しいので、それなりに雨も楽しい。今年は引きこもっている間に雨季が終わってしまう可能性もある。
ブンタウにきたばかりの頃、ストレスで蕁麻疹だらけだったわたしの体。そういえば、いつの間にか痒みはなくなってきている。顔は相変わらず白ニキビだらけだけれど、ガサガサはだいぶ減ってきた気がする。ストレスだけでなく、栄養&睡眠の問題も大きいかもしれない。
食べるものが手に入らなくて、不安のどん底に落とされた経験から、買い物ができるようになって少し食べ過ぎているかもしれない。口角炎ができた。笑うとピキッと割れる。胃腸の調子を整えなければ。
ブンタウは日常が戻りつつあるとはいえ、牛乳はやはり手に入りにくいし、スーパーの食材は品切れが多い。買える時に買っておかなければいけない。
ベトナムに住んだことがある人ならわかるだろう。ベトナムに来てすぐ悟ることは「欲しい物は見かけた時に買え」ということだ。
来越してすぐ、多くの人はどこに何が売っているかわからないので、まずはスーパーなどを回って売っているものを確かめただろう。ここにこれが売っていて、あれはあそこで買えばよくて…まずは売っていることがわかって一安心。最近ベトナムへ来た人は、ホーチミン、思ったよりいろいろあるじゃん、そう思ったはずだ。
けれど、必要な時にいざ買いに行こうとすると、在庫がない!売り切れている!いつ入荷するかと待っていても、なかなか入荷されない。以前見たのは幻だったのか?たまたま入荷したものを売り切ってしまったらそれっきり?諦めた頃に運良く再入荷することもあれば、もう入荷されないこともある。
スーパーへ行けばなんでも揃う、そんなことは夢のまた夢。欲しい物は見かけた時に買うしかないのだ。例えそれが他の用事の前にちょっと立ち寄ったお店であっても、帰りにまた寄ろうと思っていると無くなってしまう可能性もある。今買わなきゃ、でも、持ち歩きたくない、そんな状況になったことは何度もある。
そして、レアな物を見かけたら、友人とシェアする。ここでこれを売ってるよ、なんなら買っておこうか?いくついる?同じベトナムに住む友人達はいわば戦友のようなものだ。情報は共有してみんなで分かち合う。
昔はスーパーも少なかったので、欲しい物はそれぞれ小売店を回る必要があり、ネット等で情報を得ることも難しかったので、必要なものを探すのにとても苦労をした。あちこち回って自ら開拓、代々受け継がれてきた先輩方からの情報も重宝した。
今はスーパーやコンビニ、日本食材を売る店などが増え、本当に便利になった。日本人が増えるにつれ、手に入る日本の物はどんどん増え、今やホーチミンにはイオン、マツキヨ、MUJI、ユニクロまである。
2010年、Nguyen Khac Nhuにファミマ一号店ができ、おにぎりが買えるようになったとウキウキしながら訪れた日が懐かしい。
けれど、ここはブンタウ。欲しい物の多くは手に入らない。見かけたら買っておかなければ、本当に次はいつ買えるかわからない。実際、来てすぐに運良く買えたパン粉もホットケーキミックスも、あれ以来入荷されているのを見ていない。
自宅隔離の経験から、いつ何が起こってもいいように食料はある程度買い込んでおかなければと思っている。いつ入荷するかわからない物も多いので、見かけたら必要な個数以上にまとめ買いするのが習慣になっている。けれど、ここで一つ問題が出てくるのだ。それは、買い溜めておいた食材はホーチミンへ戻る時に持って帰らなければならないということだ。
ブンタウに来て5ヶ月目、ホーチミン から持ってきた調味料は底をついて、来てすぐにブンタウで買った物も残り少なくなってきた。ごま油やオリーブオイル、砂糖、醤油、塩、毎日の料理で使う物は切らすわけにはいかないが、これらはなかなか重くてかさばる。新しいのを買わずに、出来る限り今ある分を使い切ってホーチミンに戻りたい。
ここで困るのは、いつ帰れるかわからないということ。まだ1ヶ月ブンタウにいるというのと、来週には戻れるというのでは、買う物が変わってくるのだが、いかんせんここはベトナム、予定が立てられない。
食料は若干減らし気味に、けれど、またいつ封鎖されても困らないように最低1週間分のストックは保ちつつ、微調整を続ける日々。
そんな問題に頭を悩ませていた13日、ホーチミンと隣接3省は移動が可能になったとのニュースあり。これは期待が持てるニュース。ブンタウ⇄ホーチミン間も、もうすぐ移動が可能になるかもしれない。翌14日ウキウキしながら問い合わせてみると…
ホーチミンからブンタウへ入るにはまだ14日間の隔離が必要とのこと。
なかなか厳しいブンタウ。
11月には海に入れるようにすると動いているそうなので、やっぱりそれまで待つしかないのか。
期待しすぎるとがっかりするので、ほどほどに。けれど、希望がなくてはやっていけないので、来月までにはホーチミンへ戻れるはずだと自分に言い聞かせて毎日を過ごす。
娘はすっかり引きこもり生活に慣れ、わたしに似たのか、色々な遊びがすぐ思いつくようになってきた。例えば、部屋から見える景色を見るだけで、雲の形でお話を考えたり、家の形でキャラクターを作ったり、二人で大喜利状態。より面白いことを言ったほうが勝ち。相変わらず笑いは絶えない。
豚に見えるブヒブヒハウス
歯を見せて、イシシと笑っているかのような家
ところが、15日に急展開が訪れる。11月からの観光客受け入れに向けて、ブンタウが規制緩和していくというニュースを発見。何ができるようになるのか、はっきりわからないままドキドキして次のニュースを待っていると、夫から連絡が来た。
明日、16日(土)から自由に外出できるようになるとのこと。
海が見られる!こそこそじゃなくて散歩ができる!これは嬉しいニュース!ちょうどこの週は夫が土日休み。これは思いっきり歩けるぞ、散歩三昧の週末にするぞ!
午後、外から子ども達の笑い声が聞こえてきた。今までみんな部屋にこもっていたのだろう。ベランダから覗くと、向かいの道路で子ども達が追いかけっこをしていた。久々に外で遊ぶ子どもを見て、こっちまで嬉しい気分になる。楽しそうなその声は夜まで続いた。
土曜日、本当に大丈夫だよね?と若干ドキドキしながら海へ散歩に出た。
立入禁止のはずのビーチには人がちらほら。柵はこじ開けられていた。
海沿いの道にマットが干されている。振り返ると、目の前の民宿が大掃除をしていた。
ずっと閉まっていたホテルも窓拭きを開始。
止まっていた時間が急に動き出したかのよう。街全体がウキウキしているのがわかる。こんなに楽しい散歩は久しぶり。
日曜日は快晴、太陽の周りに光の輪ハロが見えた。
海に出てくる親子連れは土曜より増えていた。
魚を干すおばさんもいた。
シーンと静まり返っていた民宿街に掃除の音と子どもの笑い声が響く。
日差しは眩しいけれど、風が吹いていてブンタウらしい週末だった。家に帰ってシャワーを浴びてさっぱり。夫の顔を見たら、くっきり半袖焼けとマスク焼け。次の散歩からは気をつけなければ。
家に帰ってニュースを確認すると、どうやらブンタウも他の省から移動が可能になった様子。やったー!ついにホーチミンへ帰れる!
ただ、ホーチミンへ戻るのはいつでもできるのだが、ブンタウに入るのはワクチン2回接種や陰性証明が必要とのこと。通勤できなければホーチミンへは戻れない。夫は問題なし。わたしと娘はもうブンタウに戻らないからいいけれど、気になるのはドライバーさんのこと。
夫の通勤は朝早くに家を出てブンタウに向かうため、ホーチミン在住のドライバーさんが担当している。今回の疎開時にドライバーさんも一緒にブンタウに引っ越してきた。だから、戻るときはドライバーさんも一緒だ。さて、ワクチン2回接種が終わっているかどうか…。
通勤で省を跨いでの移動が必要な場合、書類など諸々の手続きが必要だろうだし、娘の授業もあるので、戻れるのは早くても次の週末。ドライバーさん事情によっては、もう少し遅れるかもしれないけれど。
これでようやく、食料食べ切り作戦へと舵を切れる。
やると決めたら、気持ちもスッキリ。今日は家にある食べ物の在庫確認と1週間のメニュー作り。美味しくきれいに食べきって、ブンタウを後にしたい。
でも、月曜日の11時過ぎ。夫から正式にホーチミンへ帰れるとの連絡はないので、若干ドキドキは続いている。お昼に嬉しい報告があるといいけれど。
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