【疎開日記2020#21】 どん底
4月29日、疎開生活30日目。
ついにブンタウ生活も1ヶ月となりました。楽しかった先週末、そして、明日から始まる4連休。そう、ベトナムも連休です。
ベトナムは祝日がとても少ないので、2連休でも年に数回、とても貴重です。今年は土日とうまく絡んで貴重な貴重な4連休!!!だのに、どこにも行けません、仕方がないですが。連休にどこへ行こうかと話していた数ヶ月前が懐かしい…。
でも、今日のわたしはウキウキしていました。連休があるからではありません。ベトナムでは連休明けから学校再開との話が出ています。学校が始まるとなれば、我が家もサイゴンへ戻れるはず!となると、この連休中にきっと引っ越しとなるに違いない!「ゴキげんよう おひさしブリ」の出現に怯え、ビクビクしながらキッチンに立つ日ともオサラバだ!
朝からニコニコと夫を送り出し、朝ごはんを食べながら娘とサイゴンへ帰ったら何を食べようか、何のご飯を作ろうかと相談です。冷蔵庫の中身を食べきらなくては、と頭の中で今夜の献立を考えながら、ブンタウ土産に干物でも買って行こうかとか、帰ったらいつ美容院へ行こうだとか、持って帰るならシーツを洗わなくちゃとか、思いつく限りあれやこれやと頭の中で巡らせていました。
あっという間にお昼になり、前にいっぱい作って冷凍しておいたハンバーグでロコモコ丼を作ります。このハンバーグも食べ切っちゃわないとね。
娘のウェブ授業も終わり、さてスーパーへ行きましょうと立ち上がった時、夫から着信あり。サイゴンへ帰る話が決まったのね、といそいそと電話に出ると…
結論から言うと、まだ帰れない。
サイゴンはまだ感染リスクがあるって判断されたよ。
…まさかのブンタウ生活延長宣言!
もう限界だよ、帰りたいよ。
わかってる、でも、それを言うと「じゃ、日本に帰れば?」ってなるよ。
そうでした、我が家は日本への帰国を拒んでブンタウへやって来たのでした。
期待が大きかっただけに、確信していたと言っても過言ではなかっただけに、落胆が大きかった…
浮かれていた朝の気分から、一気にどん底へ
どーん!!!!
泣きました。ええ、泣きましたとも。
娘も泣きました。そして、たぶん生まれて初めてでしょう。娘がキレました。
「お母さん、どうしていいかわからない。イライラする。イライラがなくならない。気持ちが切り替わらない!」
しばらくゲームをしたり、テレビを見たり、いろいろ気を紛らわしてみましたがダメなようでした。こういう時、どうしたらいいんでしょうか?サンドバッグとか殴りつけていれば気がすむのでしょうか。
Siriに聞いてみたら、「深呼吸してください」と返ってきました。
小さい体で一生懸命受け入れたくない現実と闘っている娘を見ると、堪らなくなります。
ブンタウが嫌いなわけではありません。ただ、ただ帰りたいんです。自分のうちに。娘は自分の部屋の自分のベッドで寝たいだけなんです。大好きなぬいぐるみ達におやすみを言って、ゆっくりと好きなだけゴロゴロしたいだけなんです。それもまだ叶わないのか…
疎開、そう、これは疎開です。
初めてブンタウ行きと言われた時に、今は戦時中かと思いました。
政府から送られてくるメッセージには「国民一人一人が戦士です。力を合わせてコロナと戦いましょう!」とありました。
ヨーロッパ帰りの第2波を受けて感染者が増え始めた時、国を挙げて戦闘態勢に入ったと感じました。
日に日に厳しくなっていく規制、文句を言わずに粛々と受け止める国民。戦争を知らないわたしですが、こんな感じで少しずつ少しずつ状況が変わっていったんだろうなと、祖父母の青春時代に思いを馳せました。
コロナの恐怖はそこまでないベトナムで、こんなことを言ったら笑われるかもしれません。でも、疎開ってこんな感じだったのかなと、町を離れて田舎へ向かう人々の気持ちが少しわかった気がしました。
今の時代、食べるものは困りませんが、この状況プラスひもじい思いって、現代人には耐えられないだろうなとも思いました。しみじみと戦時中に東京から離れた祖父母のことを思いました。
そんなことを考えているうちに、だんだん気持ちがおさまっていき、娘には好きなテレビを夕飯まで見放題と、いつも買わない高めの韓国アイスを買うことで何とか気持ちの切り替えをお願いし、夕飯は手抜きで美味しいサムゲタンに決定。
と、そこへ中学生のお母さんから連絡が。
中3は5日から授業再開だけれど、その他の学年はそれ以降だって。
娘の学校再開はもう少し先になりそうです。ってことは、少なくとも1週間以上はまだブンタウ生活。連休でちょうど食べ終わる予定だったお米も、空っぽにした野菜室の中身も、また買い出しに行かなければいけません。
なんだかもう、色々なことが嫌になり、すべてを投げ出したい気分ですが、コトコトとサムゲタンだけは煮続けます。こんな気分で食いっぱぐれはゴメンだわ。やらなきゃいけないことがあると、人間は冷静になれるのかもしれません。
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