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【疎開日記2021】#21 救援物資のありがたみ

9月14日(火) 疎開生活106日目

ずっと警察が来ないまま、連休最終日に確認したところ、自宅隔離でいいとのこと。しばらく部屋から出ないようにと言われ、スーツケースにしまった荷物を元に戻す連休明けの先週月曜日。

とりあえず、隔離施設には行かずにすんでホッと一息。後から聞いた話では、同じマンションのF1(濃厚接触者)は140人くらい隔離施設につれていかれたらしいが、夫と同じ会社に勤める日本人や外国人達も自宅隔離で済んだ。なぜか。
考えられることは以下の2つ。

•ワクチンを接種している。(有難いことに、工場で働く人達はクラスターが起きないようにとのことで、早めに接種する機会があった。)

•警察から連絡が来たのは接触したとされる日から1週間後。夫は会社で3日おきにPCR検査をしており、感染者に接触後、既に2回の検査で陰性が出ている。

今回F1になった同じ会社に勤める外国人は夫を含んで10人ほど。正直、外国人は言葉も通じないし面倒くさい、というのもあるかもしれない。

ブンタウはまだワクチン接種が進んでいない状態なので、早めに接種できたことは本当にラッキーだった。この地でワクチン後の副反応のことを考えると怖いことは怖かったけれど、この状況を考えれば打つより他はなかった。


自宅隔離、部屋から出られないのは今までと同じなので、精神的に参ることはなかったが、困ったのは食べる物。とにかく食料が乏しい。

連休は食料の減りが早い。次にいつ何が手に入るかわからないので、思い切って食材を使えない。ちょっとケチって作るので少なめになり、子どもに多めに食べさせるので、自分の分が少なくなる。

オヤゴコロ全開。「わたしはいいから、お前がお食べ」

昔話や、戦争映画などでよく聞くこのセリフをまさか自分が口にすることがあるとは。夜中にお腹が空いて目が覚めて、つーっと涙が流れた。お腹が空いて眠れない夜、いつぶりだろうか。

貧乏日本語教師時代、非常勤講師とバーのバイトを掛け持ちしてなんとかやりくりしていたあの時代。キャベツ一個で1週間過ごした懐かしい日々。交通事故に遭って仕事ができなくなり、その日の食べ物にも困ったのは20年も前のこと。若かったから、睡眠不足も栄養不足も気力でカバーできた。

40代はもろに体にくる。お肌ボロボロ。体中痛い。ストレッチをしようにも、食べていないので、無駄に体を動かしたくない。体力を温存しておかなければ、と本能がそう言っている。じっとしていると余計にお腹が空くが仕方がない。


夫は出勤できないので、娘がオンライン授業を受けている隣でPCを広げ、電話がかかってきた時はベッドルームへ移動しコソコソ話す。狭いダイニングテーブルを二人で共有し合って、それぞれやるべきことをこなす日々。

ベトナムのマンションでいいのは、ゴミが毎日捨てられることだ。日本のように細かい分類も曜日指定もないので、とにかくゴミが出たらすぐ捨てられる。ところが、自宅隔離中はゴミ捨てにも行けない。ここは南国、生ゴミの痛みが早い。二重の袋にしてベランダに出しておくけれど、臭いは窓を開けるたびに漂ってくる。これじゃ日光浴もできない。


そんな中、ベトナム人スタッフが市場で野菜を買って来てくれた。

会社は隣のバリアブンタウ市にあるのだが、バイクでの通勤が禁止され、許可の下りた会社の車で送迎するしかできない日々。乗降するのも一箇所のみと指定されている。自宅のあるエリアが封鎖され、通えなくなった人達はテントで工場敷地内に寝泊まりして生産を続けている。テント暮らしの人達は日に日に増え、今は二千人くらいだろうか。
自宅から通えている人たちも夜間外出禁止令で早めに店が閉まるので、買い物に行くのも大変だ。家族に頼んでくれたのかもしれない。バリアでも感染者が増えているので、買い物に行くにもリスクが伴う。
前日に買った野菜を会社に持って来てくれて、同じ会社の人が我が家へ届けてくれた。

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小松菜ときゅうりとオクラ

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土だらけ、蟻だらけで、束の中の方はほとんど溶けていたけれど、
久々の葉物野菜にテンションが上がる


一時間くらいかけてよく洗い、食べられるところだけを取り分ける。ホーチミンで食べていたきれいな野菜達は高級品なんだなとしみじみ。ベランダは砂利だらけ、蟻だらけになった。

早速、お浸しにしていただいた。久々に食卓に緑があることの感動といったらない。小松菜を噛み締めた時、涙が溢れそうになった。こんな美味しい小松菜、食べたことがない。

いろんな人達のおかげで、ようやく手に入った野菜。毎日ご飯が食べられることに感謝して、無駄なく食べ尽くす。


人に頼ることが苦手なわたし達夫婦。どうにかしようと必死にもがいていたけれど、どうしようもなくなって頼ってみたら、いろんな人が助けてくれた。自分達だって大切に取っておきたいだろうに、お米を分けてくれる人もいた。お米と一緒に入れてくれたお菓子の甘さにこんなにも癒されるなんて。思いがけない人の優しさに触れて、脆くなっていた心がだんだん元通りになっていった。


ベトナムでは助け合い精神というか、困った時の自助パワーがものすごい。外国人だけが住んでいる高級マンションでは味わえないだろうが、ローカルエリアでは地域で情報交換、おすそ分け、共同購入、いろいろな動きがあったようだ。

困った時、ベトナム人はすぐに助けてくれる。躊躇することなく行動に移せる。こういうところは見習いたい。わたしも何かあった時は、さらっと誰かを助けられる人でありたい。


食べ物が少しでも家にあるということだけで、こんなにも穏やかな日が送れるのか。自宅隔離の後半は救援物資のおかげで満たされた気分だった。

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差し入れの韓国インスタントうどん
あと乗せサクサク?的な少し辛いうどんだった
うどんスキスキよりもっちり麺

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他の部屋の掃除をしているお手伝いさんに
頼んで買って来てもらったバナナ
栄養もあるし、お腹も膨れる、
今一番我が家に必要なものかもしれない

会社の単身者用に取っているお弁当も頼むことができた。毎日は注文しないけれど、他の人が作ってくれた物を食べる幸せを噛み締める。お惣菜でも冷凍食品でも、何でもいいから誰かが作ったものが食べたかった。
これ、ここ数ヶ月ロックダウンで三食作り続けているほとんどの主婦の願いじゃないだろうか。


食べる物が手に入ったので、安心して動き回れるぞと、子どもと一緒に走りまわっていたら、警備員さんがうるさいと注意しに来た。ごめんなさい。
子どもが沢山いると思ったのか、一人だけか?女の子か?と聞いて首を傾げていた警備員のおじさん。まさか大人が走り回っているとは思いもよらなかったのだろう。


そんなこんなで、無事に自宅隔離を終えた。夫はPCR検査で陰性、我が家は再び自由を手に入れた。ゴミが無くなったベランダで、久しぶりに深呼吸。

が、近所に感染者が出続けているようで、マンション独自の外出禁止令は続いている。

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道を挟んだ向こう側は、もう1ヶ月以上封鎖されている。初めはテープ一本での封鎖だったが、封鎖されて二週間が過ぎた頃、だんだん気が緩んできたのか、ちょいちょい出入りする人が現れた。そして、再びの感染者発見で、テープは二本になり、警察官が常駐のでっかいテントが設置されることとなった。


マンションから出られないので、デリバリーにチャレンジするしかない。自宅隔離中は受け取りにも行けなかったけれど、ようやく注文ができる。

ホーチミンと違って、デリバリーの選択肢がほとんどないブンタウ。いつもロックダウンが始まってから来るせいなのか、元々ないのか、Grab martのアイコンを見たことがない。できるのは、それぞれの店へ直接連絡をして配達してもらうか、デリバリーアプリNow(今は名前が変わってshopee何とかになったが)の二択。Nowは先月の時点では一、二件しかやっているところがなかった。

だが、ここまで規制が続くとずっと閉めているわけにはいかないのだろう。久々に開いてみると、デリバリーアプリに表示される野菜やシーフードの店が数件増えていた。コンビニもほとんど閉まっているが、注文できるところも見つけた。

が、ドライバーが全くいない。何度も何度も挑戦するが、デリバリーチャレンジ失敗。

このままではまた来週には食糧難に陥る。毎回誰かに助けてもらうわけにはいかない、自力でどうにかしなければ。


ロッテマートが閉まって、ロッテのデリバリーサービス、スピードLも閉まっていると思っていた。いつ開いてもclosedの表示が出ているからだ。ところが、やっているという情報を入手。なんと朝7時にスタートするが、数分で受付終了となり閉まってしまうとのこと。

よし、デリバリーチャレンジ再び!

意気込んでホームページを開いてみると…

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SPEED L Vung Tauは、2021年9月12日から一時的に新規注文の受け付けを停止します。 以前に注文された場合、納期が変更されます。SPEEDLからの次の通知をお待ちください。


…speed L、やっていなかった。

他にまだ打つ手はあるだろうか。いろいろ考えているところに管理人さんから朗報が入る。ロビーでまた野菜の販売をします、とのこと。慌ててロビーへ行くと、ポストの前に野菜が積まれていた。

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わー!大根、人参、茄子もある!テンションが上がる。


次、またいつ買えるかわからないけれど、とりあえずはこれでまたしばらくは食いつないでいける。この感じだと週に一回は野菜を売りに来るのではないか。安定した食料確保とまではいかないまでも、なんとかなりそうだなと希望が見えて来た。

ホーチミンは規制緩和に向けて動き始めたようだ。もう底辺は過ぎただろう。あとは浮上あるのみ。耐えよう、もう少し、耐えよう。大好きなベトナムでまた楽しく暮らせる日を夢見て、もう少し頑張ろう。

いつかは買えるはず、今日もせっせとデリバリーチャレンジに精を出すのだった。(全敗記録更新中)

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F1(濃厚接触者)となり、隔離施設に連れて行かれることを覚悟して過ごした4連休、日記を読んだ友人達から安否確認の連絡をたくさんいただきました。我が家の食料問題に関しても、ご心配おかけしております。家族三人、元気です。皆さん、ありがとう。



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