“戦場から無言で帰宅”ウクライナ兵の妻「傷だらけでもあなたの愛で生きる」

停戦交渉が断続的に行われる中、ロシアによる攻撃は止まらずウクライナ側の応戦も続いています。こうした中、1人のウクライナ兵が戦場から無言で帰宅しました。残された妻の叫びです。

ウクライナ南部の港湾都市オデッサ。郊外にある教会で行われた葬儀には、兵士たちが花を持って集まっていました。

亡くなったのはウクライナ軍の兵士、クラベッツさん38歳。妻のデニセンコさんが、両脇を支えられながら棺の後ろをゆっくりと歩きます。

夫、クラベッツさんは、2015年に東部の親ロシア派と戦うため入隊しましたが、翌年に除隊。その後、オデッサの港で働いていましたが、ロシアによる軍事侵攻の翌日先月25日に軍に戻りました。

そしてオデッサから近い前線、南部のミコライウに向かうことになったのです。

18日、ロシア軍はウクライナ兵200人が滞在していたミコライウの兵舎を空爆。クラベッツさんを含む、およそ80人が死亡したとみられています。

クラベッツさんの母
「こんなにたくさんいいことをしていたのに、なぜあなたはそんなに傷だらけなの」

棺を正視するのがつらいのか、手で顔を覆うクラベッツさんの母親。

妻のデニセンコさんは悲しみに顔をゆがめながら抱きしめ、夫との思い出を涙ながらに振り返ります。

亡くなった兵士の妻 デニセンコさん
「2018年7月5日が、初めてキスをした日。2019年9月6日が愛を誓った結婚式の日。3年8か月と13日の幸せがあったけど、私は一人になってしまった。私は傷だらけで怖いけど、強さをみつけて生きていく」

夫への愛情とともにわき上がったのは、ロシアに対する強い怒りでした。

亡くなった兵士の妻 デニセンコさん
「無防備に寝ているところを卑怯な手で殺されてしまった。臆病者のやることよ。名誉のかけらもないロシアよ、あなたたちはクズ同然よ!」

悲しみと憎悪が入り交じった感情に耐えきれなかったのか、デニセンコさんはこの後、立ち上がることができませんでした。

ウクライナ側はこれまでに、兵士1300人以上が死亡したと発表。国連は、報告されているだけで一般市民の死者が925人にのぼるとしていますが被害の全容はつかめていません。

ウクライナ国防省はロシア兵の死者が1万5000人にのぼるとしていますが、正確な数は不明です。こうした中。

アメリカ バイデン大統領
「プーチンが生物・化学兵器の使用を検討している明確な兆候だ。彼は過去に化学兵器を使用したことがあり、注意しなければならない」

アメリカのバイデン大統領は、ロシアのプーチン大統領が「追い詰められている」と指摘。

ロシア側が、“アメリカはヨーロッパに生物兵器や化学兵器を保有している”と主張していることを挙げて、プーチン氏が事実をねつ造し、生物兵器などを使用するうえで口実を作るための、いわゆる「偽旗作戦」を行っていると強調し、警戒を強めています。

事態打開に向けては、ロシアとウクライナのオンライン形式での停戦交渉は21日も行われているほか、ゼレンスキー大統領がプーチン大統領との会談を求めていますが。

ロシア ペスコフ大統領報道官
「首脳会談を実現するためには、まず宿題を片付ける必要がある。これまでのところ大きな成果は得られていない」

ロシア側がこう主張する一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は。

ウクライナ ゼレンスキ―大統領
「戦争を止めるには、プーチン大統領と会談しないと、ロシア側がどこまで妥協できるか誰も分からない」

また、ロシア側は停戦交渉で一方的に併合したクリミア半島の主権を認めることなどをウクライナに要求していますが、ゼレンスキー氏は問題の決定には国民投票が必要になるとの考えを表明。

まずは停戦の実現を求め、そのためにはプーチン氏との直接会談が必要だと訴えています。

停戦に向け具体的な進展が見られない中、多くの人の命が奪われ続けています。

ありがとうございます。心より感謝を申し上げます。