『管子』の読書感想文
1 『管子』の紹介
『管子』とは、中国春秋時代の斉の名宰相「管仲」に仮託して著述された書物であり、管仲の著書であると伝えられているが、その内容は種種雑多・複雑多岐であり、著者は複数はおり、またその著者達も、管仲の死後の遥か後世の者達で、様々な異なる思想や主義を持った者達であると考えられる。
日本で、『管子』の全訳版は、以下であり、大学時代に自分は全てを購入して、大学時代と新卒社会人一年目に精読・熟読し、そして、拙作『愛国心 伯胡への書簡集』の重要参考文献の一つとして、味読させて頂いた。
上記は、極めて専門的で高度な研究・詳解が施された全訳版のものである。自分としては、この記事を読んで下さった方々が、もし『管子』に興味や関心を持って、購入して下されば、嬉しい限りであるが、『管子』自体、その内容は雑多で複雑かつ難解で高度であり、そして、上記の『新釈漢文大系シリーズ』は、愛好家・最上級者・専門家・研究者向けのレベルの本であり、さらに、価格も大変高いため、以下の三つレベルの『管子』の文献も紹介させて頂きます。
1.1 初級者
「管鮑の交わり」で知られる春秋時代の宰相・管仲と鮑叔。二人は若き日に周の都で出会い、互いの異なる性格を認め、共に商いや各国遊学の旅をしつつ絆を深めていく。やがて鮑叔は生国の斉に戻り、不運が続き恋人とも裂かれた管仲を斉に招く―。理想の宰相として名高い管仲の無名時代と周囲の人々を生き生きと描く。
鮑叔は斉国の公子小白の傅となり、管仲はその兄弟・公子糾の家宰となった。君主の座をめぐる争いで、二人は戦場で敵同士となる。追いつめられた管仲の放った一矢は虚空を横切り、小白の腹部に刺さった…。新しい時代の霸者が生まれるまでのドラマを、鋭い人物描写と為政への洞察で読ませる渾身の長編。
上記は宮城谷先生による仮想の歴史小説である。宮城谷先生は、古代中国を舞台とした仮想の歴史小説を書いていらっしゃる方であり、その内容は極めて面白く、その分析力や創造力には、独創性と碩学がある。
「まず管仲がどんな人であるのかを知りたい。」や「学問ではなく、歴史や教養として面白く知ってみたい。」という方に、お薦めです。
1.2 中級者
覇者の条件。いかに政治力を養うか。群雄割拠の春秋時代、斬新な経済政策を基盤に、巧みな人心掌握術で斉を最強国家たらしめた名宰相・管仲。現実に政権を担った者のみが語り得た、実践的政治論の真髄。
食うか食われるかの実業の世界にあっては、一日一日がまさに真剣勝負だ。そして、もっとも厳しく自己を鍛えあげた者だけが、最後に笑う。「管鮑の交わり」によって余りにも有名な斉の名宰相・管仲の知謀と行動力は、現代社会を懸命に生きぬくビジネスマンにとって、最高の「実学」となろう。
現代に通じる勝利者への道、卓抜の政治・経済理論に学ぶ!!人心の掌握術をはじめ、国の大きさに応じた政治の仕方、計数に則った経済政策など、『管子』の根本思想は、時を超え、現代社会を生き抜くヒントを提供する。
人心の掌握術をはじめ、国の大きさに応じた政治の仕方、計数に則った経済政策など、「管子」の根本思想は、時を超え、現代社会を生き抜くヒントを提供する。中国の古典から現代に通じる勝利者への道を学ぶ。
「管子を学び知りたい!」という方にお薦めです。こちらは抄訳版で、比較的に実用性がある、及び、教養や見識等を広め深める内容の話を抜粋して著述しています。
1.3 上級者
「管子を学び知って、実用や応用するぞ!」という方にはお薦めです。ここまで来ると、新釈漢文大系シリーズの購入は間近あるいは既にする方でしょう。自分自身もそうでした。本格的に、政治哲学や経営哲学、そして、心理学や精神論等の基礎作りや立志にも、大いに役に立つと思いますので、そのような方々にお薦めです。
また、英語の抄訳版もあり、英語の勉強や西洋の解釈を学び知るのも、極めて重要でしょう。
ちなみに、自分は『管子』に関する文献を以下のように多く揃えて、数年後の哲学書の執筆の重要参考文献とする。最重要参考文献として用いるのが、第四作品目の『国基 国家造りの十二基礎』である。
2 ビジネス・ノウハウ・役立つ
さて、今回は『THE NEW COOL NOTER』の読書感想文企画に応募させて頂き、そして、この記事の募集内容は、『ビジネス・ノウハウ 役立つ本』である。この三つの言葉の意味を、もう一度確認する。
(business) 仕事。職業。事務。また、事業。商売。特に、情熱とか人情とかを切り捨て、金もうけの手段としてだけにする仕事・事業をいうこともある。
1 仕事。職業。また、事業。商売。
2 個人的な感情を交えずに利益の追求のみを目的として進める仕事。
産業目的に役だつある種の技術を、実際に応用するために必要とされる秘密の技術的知識、経験またはそれらの集積
1 ある専門的な技術やその蓄積のこと。
2 技術競争の有力な手段となり得る情報・経験。また、それらを秘密にしておくこと。
役に立つ。有用である。
3 学んで働く・応用と発展・役立てる
さて、『管子』の内容は、私見として、ほとんどが、社会的・現実的に言うと、ほぼビジネスに使えず、ノウハウにもならず、役に立たないものである、と本当に思う。
しかし同時に、私見として、『管子』の内容は、個人的・理想的に言うと、政治や経営等の高度や上位の社会活動から、仕事や生活等の日常の重要な参考やノウハウ・助力、そして、心理や精神、科学や哲学への興味や関心を高め深めて、その基礎を作る要因となる、極めて有用なものである、と本当に思う。
この矛盾した二つの私見は、「社会的・現実的」と「個人的・理想的」という違った立場や角度からなっている。
全く、悲しくて情けないことであると思う。「社会」や「現実」という言葉が、総じて、「嫌なことばかり」・「疲労困憊」・「不自由」・「自分自身を殺して我慢する。」等といった連想やそのような実態の方が多く、「個人」や「理想」等の言葉は、「どうにもならない」・「捨てて楽になるべき」・「考えないようにするのが一番いい」等といった連想やそのような実態の方が多いということが。
しかし、だからこそ、そして決して、自分は諦めない。なぜなら、徳を修めては、志を立てて、能動的・積極的・主体的、そして、個性的かつ創造的に生きると決意した自分は、挑戦し続けることで、
「学んで働く」即ち「利益に使役されるのではなく、利益を使役して、『盛徳大業』という目的を実現するために生きる。」
「応用と発展」即ち「生きている化石の如く、古き良き遺徳を学び受け継いでは、喋れる赤子の如く、個性的かつ創造的に学問を応用と発展させていく。」
「役立てる」即ち「情報や知識に対して、『これらは役立つか?』という考え方だけではなく、『これらをどう役立てようか?』という考え方を以て、試行錯誤と創意工夫していく。」
という「幸せ」を得ていく。このような考えと姿勢を、『管子』から学んだ。その考えと姿勢を深めたのが、主に『論語』・『大学・中庸』、そして、ホー・チ・ミン主席の作品である。以下の記事に、自分の考えが詳しく述べられている。
4 結語と反省
ここ二週間、仕事が忙しく、また、時に休養や遊楽が必要であるとはいえ、多少怠けていて、生活の乱れもあった。深く反省して、明日からの仕事に勤め励みつつ、再び気を引き締めて、明日(来週)から、帰宅後の執筆活動や哲学サイトの更新の準備に取り組んでいく。
5 紹介文献
ありがとうございます。心より感謝を申し上げます。