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「シカゴ7裁判」映画レビュー

製作年:2020年
製作国:アメリカ
監督:アーロン・ソーキン
レビュアー:淡路大護(現代社会学部現代社会学科)

 1968年、アメリカのシカゴでベトナム戦争に反対する市民や活動家たちが民主党全国大会の会場近くに集まり抗議デモを引き起こした。当初は平和的なデモ活動として計画されていた活動だったが、デモを行う最中で活動家たちと警察との間で激しい衝突が生じてしまう。そこでデモの首謀者とされたアビー・ホフマン、トム・ヘイデンを含む7人(シカゴセブン)が平和的なデモが暴動に発展してしまう原因を作ったとして起訴され、裁判にかけられる。シカゴセブンのメンバーは暴動を煽るようなことはしていないため大丈夫だと思われたが、裁判では陪審員の買収や裁判長の偏見思考、盗聴などの問題が相次ぎ不利な状況へ... しかし、男たちは信念を曲げずにのちに悪名をはせる裁判へと立ち向かっていく。

 今作は全体を通じて時間軸がシャッフルされている場面展開が多く、徐々に明るみになっていく真実に気づきながらも、結末を予測するということもできるため非常に楽しめた。
実話を基に作られた映画ということで戦争がまだ世界的に行われていた時代背景を重ねて視聴することでより内容を理解できると思う。暴動や共謀罪の裁判に関する映画という事で暗い展開やシリアスな空気感をイメージする人もいるだろうが、そんなことはない。むしろ行動する勇気と友情の大切さを感じる事ができる作品となっており挑戦することの大切さを実感させられた。

今作はNetflixで配信されている映画であり、当時のアメリカに生きる人々の戦争に対する考えなども知る事ができる作品となっている。作品の半分ほどが裁判を行なっている法廷内でのキャスト同士の会話だが、映画全体を通して流れがスムーズでありとても視聴しやすかったように感じた。法律や政治についての知識がなくても理解できる構成になっており観ていて飽きてしまうという事がなかった。
また、主な登場人物であるシカゴセブンのメンバーのキャラクターに非常に興味をそそられた。私は特にトム・ヘイデンとアビー・ホフマンの戦争に抗議したいという考えは同じなのにも関わらずリーダーとしての性質の違いに注目した。真面目で周りくどい言い方が特徴のトム・ヘイデンと活動家だがコメディアンのようにも見えるアビー・ホフマン。私が大学の授業内で学んでいるリーダーの多様性をここに感じた。

 この映画は普段、SF映画やホラー映画しか観る事がない私でものめり込んで視聴できた。私と同じように実話に基づいた映画にあまり馴染みのない人にお勧めできる作品となっている。戦争映画というものは数多くある中、それに反対する若者たちの様子を描くような社会派映画にはあまり触れたことのないという人も多いのではないだろうか。そんな人にはぜひ視聴してほしい。個人的にはNetflixでしか観れない事が非常に残念だと感じるほど良い作品だと思った。

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