英国ギャング風の髪型
ロックダウンになってから、このかた美容院や理容院、床屋の類は閉店になっている。ロックダウンももう慣れっこだから、男性陣はほとんど自前でバリカンなどを持っており、セルフで髪の毛を切ったり剃ったりするようになっている。ガールフレンドに頼んで切ってもらっている人も知っている。
最近はなぜか、スキンという頭がはやっていた。これは前髪や、髪のトップの方だけ髪の毛を残し、あとは丸坊主、日本でいうところの五厘刈りみたいな髪型になる。
ルーツはBBCで制作されたギャングスターのドラマ「ピーキーブラインダーズ」である。これは第一次世界大戦中のバーミンガムが舞台のギャング抗争のドラマだが、主演のキリアンマーフィーはじめ他の出演者も似たような頭をしている。だいたいヘリンボーンのスーツを着て、鳥打帽をかぶってという感じで、おしゃれでかっこいいというか、いかにもイギリスって感じのスタイルである。ただし、頭自体はちゃんと見るとちょっと怖い。やっぱりルーツがやくざのヘアスタイルだから、ちょっとおっかないヘアスタイルに見えないこともない。なので、冷たい美貌のキリアンがやるからカッコよく決まるのだと思っていたが、案外素人男性がやってもそれなりに様になるヘアスタイルだと思われる。最近はツーブロックからみんなこの頭になってしまった。
(詳しい説明と写真はこの記事でどうぞ)
横から見たときの首と頭のバランスをちゃんと計算すれば、割とどんな年齢でも顔型でも調整できるヘアスタイルなので、誰がやってもそれなりに見えるという髪型だと思う。ただしルーツはギャングのヘアスタイルなので、お上品かというと、そうではなく、日本でいうところのイナセということになるのだろうか。
イギリスに来てみて驚くというか、みんな同じことを言うのだが、外人の男性、髪の毛がみんな「ゴリゴリ」してるのである。床屋に行くスピードが日本人男性とは違う。2週間に一回くらいという人も結構多いし、行けば行ったでこっちがのけぞるくらいみんなぞりぞり頭を剃ってもらってかなり短くなってかえってくることが多い。冬など見ていてさむざむしいくらいの頭になって帰ってくる。(だから帽子かぶるのでしょうね。日本の男性に比べるとハット率高いです。)
癖がかなりあり、伸ばすとカールになってくるくるしてしまい、大変なことになるとか、伸ばすとそのままずっと伸びてしまい、ドンキングみたいな頭になるとか、日本人だと想像できない事態が待っているらしく、とにかく男どもは床屋にはマメに行くのである。もしくは自分でマイバリカンを持って調整している。ひまがあるとその辺にたばこを吸いに行くような感覚で床屋に行く。代金はそこまで高くない。シャンプーや髭剃りなどというサービスは込みではないが、単なるカットだけだと、13ポンド、1560円くらいである。待たされることもなく、さっさとやってくれて、おしゃべりもしなくていいから、かなりラクだと思う。
ベッカムとか昔のヒューグラントのようなブロンドサラサラのヘアスタイルが外人のヘアスタイルかと思いきや残念ながらそういう人は宝くじにあたったようなもので、あまりいない。というか、イギリス人、ブロンドあんまりいないイメージである。
ブロンドはやはり北欧あたりまで行かないといない。青い目だってその辺まで行かないといない。イギリス男性、ほとんど黒から茶色の頭でたまにジンジャー色がいる程度、目は青い人もいるにはいるが、きれいな青ではなく青灰色が多いような気がする。あと、体調によって色が変わるという人もいて、青から灰色のグラデーションの人など、一言で何色、と言い表せない人も多い。たまに男性で何名か見かけたが緑色、ちょっと深めの緑色がいる。時たま、黒髪で青い目の男性がいて「あらかっこいいわね」と思って話している英語を聞いていると、中東の男性だったことがある。中東は地域によってだいぶ目や髪の色が違うようだ。
イギリスで今人気のある俳優たとえばエディレッドメイン、トムハーディ、トムヒドルトン、ベネディクトカンバーバッチ、など、皆さんだいたい頭の色が濃い。なんとなくイメージついたでしょうか。アイリッシュで国際的に有名となると誰だ、コリンファレル、リーアムニーソン、キリアンマーフィー、ちょっと年代バラバラですが、なんとなく濃い髪の人が多いような気がしませんかね。普通に電車などに乗っていて、人を見ると髪の濃い人意外に多いです。(アイルランドを代表する名優、ピーターオトゥールは金髪碧眼でしたが。)
てなわけで濃い色の髪の人がぞりぞり剃ってギャングのヘアスタイルになっているのが最近のブリテンという感じである。ツーブロックの時もおおと思ったが、剃るとなると徹底的にやるので、剃り跡がじょりじょりというかんじである。
あと最近、すごい増えたなと思うのが男性の長髪ポニーテールである。だいたいやっている人は雰囲気がみんな似ていて、だいたい顔型がハート型というか逆三角形型であごがとがっている人が多い。あと、おでこが狭い人が多い。肩まで垂らすというのではなく、だいたいヘアゴムやひもでしばっていて頭の上にお団子を作っている。サッカーの選手などでも最近1チームに一人いる感じだ。思うにこの頭はある程度、顔型のごまかしがきくというか、おでこが狭い人などには似あう髪型だと思う。あと短髪になると怖すぎる顔になってしまう人はこの髪型をしている人が多いような気がする。サッカーだとイブラヒモビッチ、アンディキャロル、ガレスベイルなど、強面の人が多い。この髪型はそれなりに手入れが必要なので、やっている人はかなり気をつけて不潔に見えないようにしていると思う。ただ単に床屋が嫌で結わっている人も知っているが、ファッションでこの髪型を選ぶ人はかなりおしゃれではないかと勝手に思っている。結構手間のかかる髪型だよね。毛先や髪の毛にかなりジェルみたいなのをつけて、ほつれたり乱れたりしないように気を使ってるような気がする。
この亜流バージョンで、刈り上げだが、残した髪の部分だけ長髪にして、ほんとに日本のちょんまげのように結わっている人もたまに見かける。凝った髪型だなと思うことしきりである。
この辺までは髪の毛がある人達の話で、ないとなるとどうなるかという話であるが、だいたいそうなると坊主である。勢いよくゴリゴリ行く人が多いような気がするが、テレビなどに出ているパーソナリティを見ていてあきらかに植毛ぽい人もいるので、薄いのを気にするかどうかはその人次第になる。
うすいからもてないとか禿げネタ当たりで日本のコメディアンはごはんを食べられそうなものだが、こちらだとこの手の容貌いじりというのはあまりない。若いうちから行っている人もいるし、薄くなる人もいるというのがみんなわかっているからそこまで気にしていないような気がする。ただし、だ、この手の頭になるとだいたいみんなガタイをよくする方向に行く人が多いような気がする。
というのも、イギリスに来て嫌というほど感じているが、男性が女性にモテたいなら体を鍛えるというかゴリゴリにするのが一番なのである。もうそこしかない。髪があるとかないとかどうでもよく、ガタイがいいか悪いかもうそこしかない。正直顔だってあんまり関係ない。ジェイソンステイサムとか、ザロック様とか、もうあの路線である。男性の一般受けするカッコよさといえば、あのガタイなのであって、頭なんかもうほんとはどうでもよかったりする。確かにカンバーバッチやエディレッドメインのファンもいるにはいるが、それより男性として人気があるのはこのカテゴリーに上がってくる人達である。イドリスエルバとかかっこいいですもん。なんというか、そういうガタイがあれば、夏白いはだけたシャツに短パンにサンダルで、もう女の子はいちころなのである。老いも若きもそれだけが好きで、その割り切り方は異邦人である私からすれば潔いほどである。
(滝沢カレンというテレビタレントが子供のころから、シュワルツェネッガーの大ファンだというのはなんとなくうなづけるのである。この人、生まれも育ちも日本だが、たぶん好みとかものの考え方は日本人離れしているような気がする。ちょっと欧米ぽいというか。あとブルゾンちえみとかフワちゃんとかも外人好きというのもわかるような気がする。この辺のメンツ、あんまり日本人女子っぽくないので。)
だから、髪型やら洋服の流行というのは男が考えて、男がかっこいいという視点になる。日本だと女子がかっこいいと思ったり、女子が男性の服を選んだりすることが多いが、こちらはその役割はほとんど女子には渡してくれない。その辺はかなり厳しいのである。あくまでも洋服の流行やら好みは女子受けではなく、野郎どもの中で完結するものである。女子は体だけしかみていないので、それでいいのである。なので、野郎の好みとなると上品とか上流階級好みというよりは、下に下に行く感じだ。だいたいちょっとエッジがあると言えば聞こえはいいが私からするとちょっとえぐみがあって、下品なパンチが聞いているファッションの方が受けがいいらしい。
なんとなくであるが、日本の女性が外人のファッションやら流行を見て「どぎつい」と感じるのはこの辺に起因しているのではないかと思う。日本の女性の方が、男性のディテールをかなり細かく見て判断する人が多いので、この辺は全く文化の違いだと思う。(細やかなしぐさなどは日本の女性の方がよく見てるような気がする。)
日本人からすると信じられないくらい、男のファッションは敷居が高いというか入れない壁みたいなのがあるのである。男性が女性の服をデザインするが、女が男の服をデザインするのはあまりない。日本だとおしゃれに無頓着な息子の服をお母さんが選んだりするが、こちらはあまりそれがない。お母さんはそこまで出しゃばらないし、周囲もそれをさせない。おとこの服は男が選ぶべきであって、それはママの仕事ではないのである。ガールフレンドが選んで着せているところもあるとは思うが、それはあまりに無頓着な場合であって、普通はそうではないような気がする。その辺の線引きはかなり厳しかったりする。だいたい女の目線が入っていたら、第一次世界大戦中のバーミンガムのギャングの髪型などはやるわけがないであろうと思う。
話があっちこっち飛んで行っているが、現在はやりの髪型のスキンは、ロックダウン中でも、バリカンさえあれば、なんとか恰好が付く頭である。最悪失敗すれば、丸坊主にして、伸びたころにロックダウンが解除されるであろう、また床屋へ行けばいいくらいに考えていれば、いらいらすることもない髪型である。そういう意味でも今の時代に合っているのかもしれない。
イギリスが極端に男性の頭が短くなっているお陰で、日本の男性の頭が長くそしてとてもフェミニンに見えてしょうがない。そういう意味では流行が今は全然違ってきているような気がする。(ローランドとかりゅうちぇるとあか長いよね。こちらの女性に受けそうな感じだと小峠かな、と思う。あのヘアスタイルに皮ジャンはイギリスでも通用しそうだ。)
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