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困ったもんだ

先週の金曜日、久しぶりに小さい劇場でミュージカルを見た。第二次世界大戦の日本が舞台で、日系2世で、戦時下の日本にいて、捕虜になったアメリカ兵向けのラジオ放送に携わったDJ東京ローズについてのミュージカルだった。

内容はまた別に書くとして、面白かった。6人組の女性ユニットがいろいろな役をこなしながら東京ローズの人生を再現していく。とても面白くて見に行ってよかったなという感じだった。最寄り駅までかえってきて、そのあとパブで少し過ごして家に帰った。

結構昨晩遅かったから、土曜は朝遅かった。が、ある程度の時間から私の携帯がずっと「ぶるる」となっているのである。何かと思ったら、グループワッツアップに誰かがずっと何かを投稿しているらしかった。

朝やっと起きて、携帯を見たら、いつものおばさんがずっと写真を投稿していた。おばさんは近所のガソリンスタンドにガソリンを入れに朝7時に向かったところ、長蛇の列で、順番が回ってきたのは10時頃、そしてもちろん満タンにはできず、そのガソリンスタンドの別支店を案内され、そこでも2時間待ってようやく満タンにできたという。朝7時にでかけたのに、家に戻ったのはお昼過ぎだった。

私の行きつけのパブによく来るアイリッシュのおじさんもガソリンを満タンにするのに、ほぼ一日使った。と文句を言いながら本日ビールを飲んでいた。このおじさんのお嬢さん、かわいい小柄なお嬢さんだが、パニック障害だかなんだかをこじらせ、仕事に行くのに公共交通機関を使えなくなってしまい、このおじさんが運転手を買って出ていた。お嬢さんは「ガソリンのことを考えたら、お父さん私大丈夫よ。電車に乗って会社に行くわ」と言ってくれたというが、やはり心配なので、娘のためにあちこちのガソリンスタンドを回ってなんとか調達したという。娘はお父さんごめんなさいと言って、ビール代をくれたそうだ。

ガソリンはちょっと前から怪しかった。その前は豚肉と鶏肉だった。豚肉と鶏肉をさばいたあと、パッケージにする際にガスを注入するのだが、そのガスの在庫が切れる、そのあと、ガスは各スーパーマーケット間で、争奪戦になっており、あなたが鶏肉や豚肉を欲しいときに手に入れられるかわからなくなる、という脅し文句が新聞に踊った。

その前はビールだった。パブから、大陸産のビールが姿を消した。ハイネケン、カールスバーグの樽が入手できず、あるのはイギリス産のぬるいビールしかないという日が幾日が続いた。天気がいい日が多かったから、ビールを飲みたい人達は「なんだよ、イギリスのエールしかないなんて」と文句を言いながらビールを飲んでいた。

その前はなんだ、ミネラルウォーターが一時怪しかった。その前はなんだ、ナイキやH&Mといった大手のアパレルブランドは「ネットショップでの発送タイミングが以前より遅れます。」と断り書きがでて、気の早いアイルランド系の新聞は「クリスマスプレゼントは今から用意しましょう」「土壇場になって、すぐ手に入るものではなくなってきていますよ」という警告を出し、イケアも在庫が1割程度が欠損になるのが通常モードという新聞記事が躍った。

これ、全部なんのせいかと言えば、Brexitとコロナのせいである。正直、Brexitのせいなのか。

大陸からの物流がBrexitになり、猶予期限が過ぎてから、滞りがちになっている。大陸から来たトレーラーがイギリスに労働ビザがないと上陸できなくなり、まず、運転手の母数が減った。そしてコロナ禍ということもあり、自主隔離などが必要になったりして、運転手が確保できず、本数が減った。政府は「外国人のドライバーに頼らず、イギリス人の労働を確保してください」の一本槍で、何かの対策をする気にはなっていない。

(私の会社が入っている建物の中に産廃業者、引っ越し後の荷物を処分する業者が入っているが、ドライバーが確保できず、職員は週に一回しか出て来ない。出てきても「ごめんなさい、いつできるか約束できません」というお詫びの文句ばっかり言っている。)

運送会社は運転手を確保するために、免許保持者で経験者の場合、初任給を年収1000万以上の設定を今はしている。経験者では間に合わないので、政府は免許を取るための試験の回数を増やしたりと一応対策はしている。

結局、これでも全然間に合わず、政府は臨時で労働ビザを大陸の運転手に出すようになり、多少物流が戻っているという感じであるが、ガソリンは今「パニック買い」の対象になっている。

イギリス人に仕事を、イギリス人のドライバーを、移民ではなく、イギリス人に仕事を、政府はこんなことばっかり言っている。「はあ?」という感じである。どこのイギリス人がトレーラーの運転手なんかになるかよ。

正直、私の知っている限りで言えばイギリス人というのは働かないのである。今行っているパブはアイリッシュ系のパブでアイルランド人が多く、アイルランドで仕事がなくイギリスに来たという人が多いので、労働に関しては日本人も頭が下がるくらいハードワーカーである。自分の仕事があるうちは万々歳という考え方の人が多いからとにかく働くし仕事はやめない。しかし、イギリス人がそこまで働くかというかというと、疑問である。

ロンドンにいて、家が何件かあるような人はまず働かない。家の値段は20年前から比べると約10から15倍になり、それを人に貸したりして生きている人が多い。

家がなくても実家暮らしで、失業手当をずっともらって生きている人もいる。病気で働けない人もいるが、病気の手当てをもらいながら、毎日パブに来てギャンブルやってる人達も知っている。

若い人で、働かずずっと家にいて「年収xxポンド以上の仕事でないとやる気しないわ。そういう仕事がないならベッドで寝ていて国から手当をもらった方がいい」と言い捨ててる人も知っている。(まるで一時期のスーパーモデルのようである。)

とにかく働かない。地方はどうだかわからないが、ロンドン、割に働いていない人が結構いたりする。

前にイギリス南部のあたりを旅行に入ったときにドライバーさんがある工場を指さして、「ここのソーセージはイギリス伝統の手法で作っていておいしかったんです。でも今はそうでなくってね」というので「どうしたのですか?」と聞いたら「従業員は社長を覗いて全員ポーランド人になってしまったんです。手法は昔からのものを使っていても、作っている人達はもうイギリス人ではないのです」と嘆いていた。しかし、だ、イギリス人はソーセージ作り、そういう工場勤めなんかばかばかしくて、やらないのだ。そして、そういう仕事は移民が取っていく。

Brexit後、イギリス人にもっと仕事を、EU移民ではなくイギリス人に仕事をという声があり、それは実現されるかと思ったが、世の中そうは甘くない。もともと移民の人がやっていたような仕事をプライドの高いイギリス人がやるわけがない。そしてそういう仕事をイギリス人にやってもらうようにするから、今まで享受していた便利さ、利便性は犠牲にしてくださいというのが、現在の政府の方針であるような気がする。

まあ、このトレーラーの運転手不足による物流の滞りは結局、その論では対応できず、政府はクリスマスまでは臨時の労働ビザを発行しますと言い出し、それで対応することにはなっているが、クリスマス後にはわからない。

移民は高技術保持者以外は増やさない方針、という話であったが、結局移民がいないと成り立たないようである。

まあ、日本だって同じであろう、いまさら、若い人に技能生がやっているような仕事(漁業だったり、他工業だったり)をやれと言ってもすぐにそこに対応できるかというとどうなのだろうと思う。

正直、ここからは個人の愚痴になるが、EU離脱後、物流やらなにやらがとにかく面倒になり、今まで通りに行かないことが多く、一つのことをやるのに、今までだったら1週間くらいで済みそうなものが1カ月以上かかったり、いろいろな労力がいることになったり、そしてそれが無駄になったり、ということをここ1年ずっとやっているような気がする。

イギリス人、投票するときは全然わかっていなかったようだが、ここいらで、相当EU離脱の影響が生活全般に出てきている。それに気がついているのかいないのか、その辺わかってみんな離脱に投票したのか、どうか、正直イギリス人の胸倉つかんで一人ずつ聞いていきたい気分である。

別にEU離脱しても構わない、ある程度覚悟があって、今までの利便性がなくなったり、仕事がややこしくなったり、ある程度の自由がなくなったり、いろいろあるが、それでもそれを呑み込んででも離脱したいから離脱に投票したというのであれば、その覚悟は買ってあげたい気分だが、ここまでものをちゃんと言える人がいるのか否か、その辺もわからない。みんなあんまり結果を考えないで「大丈夫よ」で投票していないか?そして今みたいなことが起こった場合、もしかしてEU離脱ってこういうことなの?と振り帰ることができるのであれば話は別だが、、、、、、

まあ、とにかく、あんまり先行きよさそうな話ではないねえ。

せっかくブログやってるんだからさ、もっとなんというかかわいい話とか(スコーンとかマカロンとかそういうの、とか、なんかもっと外国暮らしのかわいい話とか書けないのか、と自分でも思うが)、書いてもいいのだが、最近、ちょっとなーと思うことが多かったので、それを書いてみた。



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