見出し画像

ナイトポーターとルースターコグバーン

タイトルみて、なんの話だかわかったあなた、結構映画通ですね。

イギリス来て、アーめんどくせーと思うときが結構多いのが映画の話である。映画好きなので、映画は外国人とコミュニケーションを取るための手段と考えていた時期もあったが面倒臭いので最近はやめている。日本人が見てきた映画と外国人が見てきた映画かぶるようでかぶらないことが多いし、日本ではそこそこ人気のあったスターがこっちでは全く無名、日本では人気のなかったスターがこちらでは大スターというのが結構ある。(洋楽でも同じことだが)その辺の事情をあまりしらないで話に出したりすると全然盛り上がらなかったりするのも映画や音楽の話だったりする。結構思ったよりハードルが高いなあと思う2ジャンルである。(ちゃんと勉強しないと恥ずかしい結果になりやすいジャンルなのかな。)

ラグビーワールドカップで日本に行ったという外人さん(結構年配のウェールズの人とアイルランドの人)二人に指摘された。「ギャラクシーのCMに出てる人が日本ではあちこちにポートレートでありましたけど人気のあるモデルさんなんですか?」

ギャラクシーというのはイギリスのチョコレートの銘柄である。で、最近のギャラクシーのCMは昔の若いころのオードリーヘップバーンをCGにして、ヘップバーンが電車に乗ってチョコ食べたり、とかそんなCMを流している。ということで、この外人二人はオードリーヘップバーンを知らず、何かのモデルだと勘違いし、そのまま日本に行って日本では絶大なる人気のあるヘップバーンのポートレートを見て、「ギャラクシーと同じ人だ」になったのであろう。

オードリーヘップバーン、日本では絶大なる人気のファッションアイコン、もちろんイギリスでも人気がある人であるが、いかんせん映画女優としてのキャリアが若いころで途絶えてしまっているので知らない人は知らない、という感じなのだ。こういう人に限ってベティデイビスとかジョーンクロフォード、キャサリンヘップバーンあたりは知っている。この辺の女優はばばあになっても出続けたりしたので、それなりに「こどものころに見た映画でばばあだったけど若いころはきれいな人」みたいな認識がある。ただし、間違ってもベティデイビスやジョーンクロフォード、キャサリンヘップバーンはCGでよみがえってチョコレートの宣伝に出たりはしないのである。(そんなんあったら怖すぎて誰も買わない。)

(映画スターがテレビコマーシャルには出ないという認識はいまだに強くある。)

古い映画の話を外人とする場合、まず障害になるのが邦題。古い映画の場合「邦題」がある。割に英語をそのまんま日本語にしてタイトルにすればいいのだが、全然関係のないタイトルの映画は困ってしまう。

イギリスではしょっちゅうBBCで再放送され続けている犯罪映画「ミニミニ大作戦」、これは元のタイトルは「イタリアンジョブ」(イタリア人の仕事、怠けてばっかりで働かないのでそれを揶揄してつけられた。)。なので、新聞のテレビ欄を見て「知らない映画だな」と思ってテレビをみていたら「なんだミニミニ大作戦じゃない」と一緒に見ていた、たまたまイギリスにいた母が叫んでいたのを思い出す。ただし、この邦題を英国人に説明すると「わかってる人がつけたタイトルだね」と必ず言われる。それくらいあの映画はミニがたくさん出てきたので、ミニを誇りに思うイギリス人にはピンとくるタイトルなのであろう。が、なんだろうとかんだろうとあの映画は「イタリアンジョブ」であって、ミニミニ大作戦ではない。とっさであの映画を説明しようとなるとえーとあのなんだっけとかになるのである。

「風と共に去りぬ」「アラビアのロレンス」「タイタニック」当たりはいいよ。そのまま英語にすればいいから。「北北西に進路を取れ」とかもまあ、いいよ。でも「お熱いのがお好き」(some like it hot うまいこと訳したとは思うが、邦題からすぐ英語が出る人はなかなか英語脳だと思う。)とか「大人はわかってくれない」(フランス語、英語のタイトルともに400回の打撃)とか結構厳しい。「勝手にしやがれ」「突然炎のごとく」もそうだね。(この時代のフランス映画の邦題はやりたい放題。勘弁してくれってのが結構多い。「さらば友よ」とか悪くないけど。映画史を英語で聞くとフランス映画は英語題もしくは原題と邦題がまず一致しないものとかからないと後でえらい目にあう。)

あとイギリスのコメディ映画の「マダムと泥棒」がタイトルが「レディキラーズ」これも最初全然わからなくて、あとからリメイク版が「レディキラーズ」となって、ようやく頭の中で合致した。この映画、イギリスでは結構みんな見ていてよく知ってるという映画である。「マダムと泥棒」でも悪くはないが、レディキラーズの方がなんとなくピンとくる映画である。この映画の主演のアレックギネスはどちらかというともちろん映画のスターだけど、割に話があがってくるのは、晩年、BBCでやったスパイシリーズの主役を張った話とかかな。

(イギリス人の場合、俳優として活躍し続ける人は認識度が非常に高く、人気があるというか尊敬されているイメージがあるし、その辺必ずテレビで起用されるので、比較的爺さんばあさん俳優がまだテレビに出ているのね、と思うことが多い。マギースミス、イアンマッカラン、ヘレンミレン、ジョディリンチ、大御所だが未だ現役。岩下志麻や松坂慶子が主役で時代劇がお正月に毎年ある、みたいな感じです。主人公のお母さん役とかではなく。)

前にパブで映画が流れていた。その映画の途中から私はパブに入ったがパブにいたじーさんが「お前映画好きだって言っていたよな」「まあ好きだけど」「この映画さ、マリオンが主演でばばあの女優が結構有名なやつで復讐の西部劇。マリオンが結構爺さんになっているころのやつ、タイトルなんだっけ」「ラストシューティストじゃないの?」「違う、女優の顔はあんな顔をしてない。女優はたぶんアフリカを舞台とした映画でボガートと一緒に出ていた女優」正解は「オレゴン魂」で共演者キャサリンヘップバーンであるが、私はどうしてもタイトルが英語で出てこなかった。これタイトル「ルースターコグバーン」という主人公の呼び名そのままがタイトルになっている。そばにいた若いバーテンがもしかして「ルースターコグバーンだよね」と言い出して、そうだそうだという話になった。こんなのハードル高すぎるよ、、、、、、

マリオン、これジョンウェインの本名がマリオンというのを揶揄して、ジョンウェインのことこうやって呼ぶ人結構います。マリオンは女の名前なので、男らしさを売りにしていた彼を揶揄しているのだろうなあと思うが、だいたいここから躓きます。

ナイトポーターは「愛の嵐」というシャーロットランプリングの出世作の映画のタイトルです。この映画はユダヤ人とナチスの看守のいけない恋の物語なのですが、なんというかもちろん映画のストーリーもショッキングだったけど、いけない恋の感じとか、その傍らにある死の匂いとか、なんかもう退廃していてすごい映画なのである。映画ジャンルはどれにもあてはまらなくてただジャンルは「愛の嵐」みたいな映画である。邦題、絶妙に思わせぶりで悪くないと思う。ドイツの話であるのに、主演の男優女優ともにイギリス人という不思議な映画でもある。(イギリス人俳優はこの辺の人種の臭みみたいなのを消すのはうまい。)

ただし、邦題は「愛の嵐」でも原題は「The night porter」、夜勤のホテルのフロント係という意味です。前にNARSという化粧品ブランドでアイライナーを買ったときに色の名前がこれでした。お店の人にさりげなく「あの映画にぴったりな色よね」と言われて「?」となり、失礼ですがどの映画ですかと聞いて「シャーロットランプリングがナチスの」とまで言われて「ああわかりました」みたいな会話になった。(余談だがNARSの色の名前は映画からとられていることが非常に多いですが、割に口にするのに恥ずかしい系の映画のタイトルも結構ありますね。「ディープスロート」とかね。)あれ、愛の嵐じゃなかったんだねと気がついたのでした。この映画もかなり古い映画だが、年よりだけではなく、若い人と話をするときも、時々話に上がってくるが、最初タイトルと邦題が合致するのに時間がかかった。

前にいっしょに英語を勉強していた中国人や韓国、台湾の子は英語は勉強していたが、イギリスやアメリカの歴史や風俗、文化当たりには全く興味がない子が多かった。別に何がはやろうが、自分の興味のあることはのぞいてみるが、それ以外は別にどうでもいいという子が多かった。(アジア圏全般、この考え方の人は多かったような気がする。)別に映画や音楽の知識が多少あって外人と話がはかどったって、という考え方の人が多かったような気がする。合わせて「話を合わせるのに覚えることが多くて、それを覚えても相手が興味なかったら意味ないし、英語の勉強と考えたら効率悪いよね。」と言われることが結構あった。「最低限仕事とかで通じる英語を使えればいいし」みたいなことを言われた記憶がある。そうなんですよ、別に英語が使えればそれでよくって、あとは雑学として切り捨てたって別にいいんだよね。まあ、英語が道具と考えれば、そういう考え方でもいいと思う。

わたしの場合、横道それた勉強や雑学的なものには非常に興味があるので日々こういう話をコレクションして、こういうところでああだこうだいうのが好きだから、興味があるってことになるのかな。お金にはならないけど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?