【大人の武者修行】国内コーヒー栽培の手伝いで得た経験
国内でコーヒー生産の経験を積みたい
これから生産国で働くにあたって、コーヒー生産の経験は重要です。
コーヒーの木がどのように成長し、1年の中でどのようなケアをするのか。基本的な知識や経験がなければ生産者との会話が成り立たないのは目に見えています。
そこで、日本国内でコーヒー農園を営んでいる方々にお願いし、少しの期間ですがコーヒー栽培や経験を経験させてもらうことになりました。
農作物であるコーヒーは、1年を通して複数の作業が発生します。過去に産地訪問をする機会はありましたが、ショートステイで生産の全体像をつかむことは不可能に等しく、限られた時間では生産者とのコミュニケーションも表面的になってしまうのが残念でした。
ショートステイで感じるのは、とにかくポジティブな面を沢山見せてくれること。品質向上がわかるウォッシングステーション、コミュニティが村に投資している井戸やクリニックなど。
ですが、実際にコーヒーチェリーを売りに来た小規模生産者たちに話をきくと、「給料には満足できてない」という返事が返ってくることも多々ありました。
こういった光景は、どちらも本当なのでしょう。
だからこそ、国内でコーヒー生産を手伝わせてもらえたことは、少なからず今後役に立つと感じています。
何度か作業をさせてもらう中で、特に印象深かったことや品質に直に影響をもたらすと感じたものをお話ししたいと思います。
剪定作業
コーヒーの木の「剪定」を数回やらせてもらいました。
剪定とは葉や枝を切り、形を整えたり無駄な枝を切って木のバランスを整えたりすることです。 枝間の風通しを上げ、害虫発生を抑制します。まんべんなく日が当たるようにして木の成長を促し、将来的なコーヒー生産量を増加させる狙いがあります。春先の収穫期が終了すれば、剪定時期の始まりです。
剪定作業でで最も重要なのは「切らない枝」を判断できるようになること。
必要な枝や葉を切り過ぎると実をつける枝がなくなってしまうだけでなく、光合成の効率も下がって収穫量が減少します。
コーヒーにとっては寒すぎる日本、生産には信じられないほどのコストがかかり、輸入する生豆と市場で価格競争をするためには少しでも多くの収穫量が必要になります。
生豆の品質を高めるために切るのか、収穫量を維持するために切らないのか。
「切るけど、切らない」という絶妙な塩梅が必要でした。
切ってよい枝
・メインの幹に向かって生えている枝
・1か所に何本も生えている枝
・真っすぐ上に向かって生えている枝
・複数の枝と並行して生えている枝
・主となる枝から5本以上生えている枝
理由は、メインとなる枝と競合していまうから。日当たりが悪くなり、枝や葉同士で栄養を取り合ってしまうからです。
作業は1本の木につき15~20分が目安。長々と時間をかけてはいられません。わかってはいるものの、考え始めると1時間くらいすぐに過ぎてしまいました。(すみません)
慣れてくると、陽のあたり方や時間帯によってどのように陽あたりが変化するかも考慮しながら行うそうです。高い部分は脚立にのって葉をめくりながら行う作業でした。
落ち葉の回収
木の下は常に清掃されている必要があります。ゴミや落ち葉がなく、肥料が散乱していない状態を目指します。
厄介なのは、収穫後に残ったコーヒーチェリー。黒く、腐った状態のものはカビや虫を誘引して木の根にダメージを与えることがあります。
収穫期は効率を重視して、基準に満たないチェリーを地面に落としていくこともありますが、収穫期が終了したらそれらを回収することを忘れてはいけません。
剪定後は特に大変でした。熊手や大きなチリトリで、落下している葉や枝やチェリーをひたすら回収します。
この時、肥料が散ってしまうことがあるので、土の表面を荒らさないように気を付けて作業するのもコツがいりました。
収穫とチェリーの熟度
約2か月かけて熟したチェリーを摘み取っていきます。ハウス栽培のため、品質と効率を考えるとハンドピックが最適な方法になります。(収穫量が少ないため機械はコストがかかるのと、ハウス内は狭いため機械を入れることができない)
違いを感じたのは収穫推奨のチェリーの色です。
海外の生産地では「真っ赤なチェリー」を選別するように言われていましたが、国内では「紫色」のものを選ぶように教えて頂いたのが印象的でした。
海外では何10トンもの大量生産・大量収穫で、ハンドピックしたあとに機械で選別する作業が何回も発生します。(重量や密度やスクリーンサイズなど)
しかし、収穫量がわずかな国産では機械選別を行うほどのコストをまだかけられないため、収穫するチェリーの熟度を最優先に選別するというのです。
もちろん、水に漬けて軽いもの(栄養が少ない豆)を取り除く作業は行いますが、不快な味をもたらす未成熟豆の混入をふせぐためには、目視で判断できる「超完熟チェリー」の紫色が重要とのこと。
生産者の資金力・生産量やリソースによって、選別作業に割けるコストは変わるため、収穫期にはいってしまうと小規模であればあるほど初期の収穫段階が重要になります。
「品質を上げるには、収穫後に機械で選別すればいいじゃないか」と考えていたことが安直でした。
他の国の小規模生産者でも同じケースが当てはまるため、チェリーの熟度について伝える重要性を再認識しました。
特に、農園のオーナーと収穫だけを担当する「ピッカー」が別である場合、収穫量で給料が決まるピッカーが質より量を優先することが多々あるからです。
紫色の「超完熟チェリー」は、色以外でも判別できる、とも教わりました。触感がぶどうのように柔らかく、潰した時の果汁が滴りやすいもの。
また、木になっている状態であってもほんのり甘い香りが皮から感じられます。喉が渇いているときにチェリーを口に含むと、べっこう飴のような甘さが感じられました。
チェリーがまだ赤い場合、できるだけ紫がかるまで数日~1週間の時間を置き、その後また同じ木に戻って収穫をします。
コーヒーリーフティー
剪定後、大量にでたコーヒーの葉でコーヒーリーフティーのつくり方を教えてもらいました。
新芽だけを回収するのが大変で、大きな紙袋に葉を集めてやっと目標量に達成しました。
作ってみると薄めの緑茶の味わいで、ほんのりと苦みがあり面白い味わいでした。コーヒーの風味はしません。
ただ、水分の飛ばし方が不十分だったのか、少し生っぽい風味が残ってしまいました。丁寧に水分を抜く必要がありそうです。
さいごに
農園に行くたびに、木の様子や結実がすすむ様子を見ることができて興味深かった一方で、改めてコーヒーは手のかかる農作物であることを感じました。
また時間ができれば精選のお話もしたいと思います。
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