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J2第42節 水戸ホーリーホック戦 プレビュー

前節、山口に勝利を収めながら他会場の結果により昇格が絶たれることとなってしまった。
来シーズンもJ2で戦うこととなったが、伊藤監督の退任が発表され、このメンバーで戦える試合は残り1試合となってしまった。
伊藤ヴァンフォーレラストマッチ、勝って有終の美を飾りたい。

1.前回対戦

アウェイ水戸に乗り込んでの一戦。
5分に関口のプロ初ゴールで先制。
その後は水戸の猛攻を受ける展開となるが、守り抜いた甲府が勝ち点3を掴んだ。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。

2.対戦成績

2000年に水戸がJ2に加わり、初めてJリーグの舞台で対戦してから41度の対戦を経てきた。
甲府から見て17勝9分15敗と勝ち越してはいるが、五分五分の成績となっている。

ホームでは10勝5分5敗と甲府優勢となっている。

直近10試合の対戦で見ると甲府の4勝4分2敗とこちらも勝ち越している。
また、現在は4試合負け無しとなっており2020年に就任した秋葉忠宏監督が指揮を取る水戸には負けていない。

3.前節

甲府

山口がボールを握りながら試合を進める展開となったが、後半途中投入された中村がミスを突き先制点を決める。
この1点を守りきった甲府が勝ち点3を掴んだが、京都が引き分けたことで昇格の可能性は潰えてしまった。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。

水戸

ホーム最終戦となった水戸。
前節からスタメンを1人変更。
奥田に代えて山根を左サイドに起用した。
愛媛のキックオフで始まった一戦は強風の中での試合となる。
立ち上がりは愛媛が水戸陣内でプレーする時間が長くなる。
最初にチャンスを作ったのは水戸。
背後へ抜け出した藤尾がシュートを放つが、枠を捉えられない。
藤尾のシュートを機に水戸が押し込んでいく展開となる。
ショートパスをテンポ良く繋ぎながら背後も積極的に狙い、愛媛に的を絞らせずボールを保持していく。
水戸の攻撃を凌ぐと17分に内田がゴール正面から直接FKを決め、愛媛が先制に成功する。
得点は動いたが、試合展開は変わらず水戸が押し込んでいく展開が続く。
だが、愛媛の集中力は高く切り替えも速いこともあり水戸は大きなチャンスが作れない。
飲水タイムを経ても水戸が押し込んでいく展開は変わらず、左SBの大崎を中心にチャンスの数を増やしていく。
ピッチを広く使いながら愛媛を揺さぶっていくが、ゴールをこじ開けられず愛媛が1点リードして試合を折り返す。
後半立ち上がりに水戸が決定機を作る。
右サイドからクロスを入れると山根のラストパスを受けた中山が左足を振り抜くが岡本が防ぐ。
このプレーの流れで得たCKのセカンドボールから新里がボレーを放つが、岡本の正面となり愛媛が守り抜く。
すると今度は愛媛がチャンスを作る。
中盤でボールを奪うと唐山のパスを受けた川村がシュートを放つが、 牲川がセーブ。
共にゴール前の展開が多い後半の立ち上がりとなったが、水戸が試合を振り出しに戻す。
前線に長いボールを送ると松崎のラストパスを受けた大崎が左足を振り抜き、同点に追いつく。
同点に追いつかれた愛媛は残留が掛かっている一戦ということもあり、勝ち越し点を取りに前に出ていく。
59分に水戸が先に選手交代を行う。
中里と山根に代え、伊藤と奥田を投入する。
62分には愛媛が唐山に代え、吉田を投入。
65分に水戸は藤尾に代え、木村を投入する。
共に選手交代を行い、試合の流れを引き寄せようとしていく。
中盤での攻防が増えたことで、ゴール前の局面が少なくなり共にチャンスが作れない。
得点が欲しい愛媛は75分に内田と近藤に代え、岩井と榎本を投入する。
だが愛媛は栗山が負傷し、交代を余儀なくされる。
81分に池田を投入し、同時に山瀬に代えて森谷を投入。
また、水戸も大崎と松崎に代えて岸田と安藤を投入する。
84分にはCKから水戸がチャンスを作るが、安藤のシュートは枠を外れる。
86分にも右サイドからのクロスに安藤が合わせるが、ここも枠を捉えられない。
ゴールに近づいていく水戸は87分に勝ち越し点を決める。
中盤でボールを受けた安藤からのパスを伊藤が受けると持ち運び、左足でゴールネットに突き刺す。
残留に向けて得点が欲しい愛媛は池田を前線に上げてパワープレーを行い、得点を取りにいく。
だが、ゴールは奪えず水戸の逆転勝利となった。
この結果、愛媛のJ3降格が決まった。

4.今季成績

両チーム比較

勝ち点79で3位甲府と勝ち点58で11位山口の一戦。
ホームでの好成績が3位に繋がったが、最終節も勝って終わりたい。

甲府

4勝1敗と11月は岡山に次ぐ勝ち点を稼いだ。
現在4連勝中と今シーズン初の5連勝を掛けた一戦となる。

前節の結果で3位が確定したが、攻守共に最も安定したチームは甲府であったと言えるかもしれない。
まずは総得点を見てみたい。

優勝した磐田が圧倒的な得点力を見せた一方で京都は得点ランキング2位のウタカを擁しながら、得点数は6位となっている。
一方で京都を支えたのは強固な守備にある。

磐田の失点数は7位と堅守と呼べるチームではなかった。
得失点で見てみると甲府は京都と差が無いことがわかる。

得点数、失点数共にJ2トップ3に入っているのは甲府のみと総合力が高かったことがわかる。
だが、磐田や京都のように圧倒できるものが無かったことが昇格に届かなかった要因と言えるかもしれない。

ただ、甲府には絶対負けないシチュエーションがある。

26試合で先制点を取ったが、一度も負けていない。
逆転負けは一度も無かったことがわかる。
負けていないことも見事だが、ほとんどの試合で勝ち切っていることに伊藤ヴァンフォーレの勝ちパターンは完成したとも言える。

では、勝ち点を失うきっかけとなったのは何か。

やはり外せないのはセットプレーからの失点の多さ。
35失点の内、セットプレーから喫した失点は20と半数以上となっている。

時間帯別の失点を見てみると終盤の失点が多くなっていることがわかる。

終盤に失点して勝ち点を失った試合は7試合。
内、アディショナルタイムの失点で失った勝ち点は5。
特にセットプレーから失点した試合は4試合となるが、26節の千葉戦を最後となっている。
試合を重ねる中で、チームが成長してきたことがわかる。

水戸

2勝2分1敗と勝ち越している。
磐田に目の前で昇格を決められたが、2連勝中と好調となっている。

シーズンのスタッツを見ていきたい。

目立つところはシュート数、オフサイド数、攻撃回数か。
積極的に背後を狙いながら攻撃をシュートで完結させているとがわかる。
攻撃回数が多いということはボールを持ち、押し込んでいく時間が長いというよりも積極的に前線にボールを入れ込む回数が多いということである。
その結果、水戸は前線の選手がゴールに絡む回数が多くなっている。

ゴール、アシストの上位を見てみると平野を除くとFWか2列目に入る選手が名を連ねている。
攻撃のタレントを活かすサッカーをしていることがわかる。
では、どのようにゴールに繋げているか。

最多はスルーパス、次いでドリブルからとなっている。
積極的に背後を狙う前線の選手へスルーパスを通してゴールに迫っていくのが、水戸の形といえる。
また、ドリブルに長けた選手も多く攻撃陣の個人技から奪う得点も多くある。

5.予想スタメン

甲府
来シーズンを見据えて出番の少なかった選手を起用するかとも思ったが、伊藤監督は甲府を離れる決断を下しただけに最後勝って終わりたいだろう。
前節のメンバーが今の戦い方のベースとなっているだけにスタメンの変更は無いと予想した。

水戸
甲府とは違い、秋葉監督の続投が決まっている。
そのため、水戸も出番の少なかった選手やチームを離れる選手の起用も考えられるが、シーズンの集大成全力で勝ちにこだわると予想した。

6.注目選手

甲府

荒木翔
開幕から全試合出場。
また、34節の金沢戦を除きここまで40試合にスタメン出場と中心選手としてチームを牽引してきた。
アシスト数はチームトップと結果でもチームに貢献している。
昨年、チームにの力になれなかった2年半分の恩返しをしなければいけないと契約更新の際にコメントしたが荒木の活躍なくして今シーズンの結果はあり得なかった。

水戸

松崎快
東洋大学から加入して2年目のドリブラー。
大宮のアカデミー出身の選手で山田と長谷川の1学年先輩であり、浦上の1学年後輩となるが浦上とは大学でも共にプレーした。
伊藤監督の教え子でもあり、大学時代には練習にも参加する等甲府にも縁がある選手。
J1レベルのドリブラーはJ2で飛び抜けたタレントであることを示したい。

7.展望

来シーズンも秋葉忠宏監督の続投が決まった水戸。
先程データでも見ていただいたが、水戸は攻撃のタレントを活かした躍動感のあるアグレッシブで攻撃的なサッカーを志向している。
ボール保持時の水戸はテンポの良いショートパスによるビルドアップとシンプルに長いボールを使い、背後を突くことを使いわけていく。

ビルドアップの際にはボランチの中里もボールを引き出しにDFラインに落ちながらSBを高い位置に押し出し、前線に厚みを加えていく。
SBが高い位置で幅を取るのに合わせ、SHが中央に入りDFラインと中盤のライン間でボールを引き出すことを狙う。
ライン間にポジションを取った選手に縦パスを通し、中央を割ることを優先するが左サイドからは大崎からのクロスでゴールに迫る形も見せてくる。

だが、SBが幅を取る最大の狙いはDFラインを横に広げさせSBとCBの間を突くことにある。

左サイドでは主にSBの大崎が幅を取るが、右サイドでは松崎がサイドに張ることでSBの黒石がインサイドに入ることもある。
甲府の左サイド同様に相手の状況を見ながらローテーションしてくるが、松崎はサイドに張っても中央にポジションを取っても力を発揮する柔軟性を持った選手となる。
特に甲府の左サイドは荒木の背後、メンデスの脇は狙われることも多いだけに警戒が必要となる。

このように幅を取り、DFを広げて素早いパスワークで荒木とメンデスの間を割って入ってくる。
この形を警戒しすぎるとサイドで数的優位を作り、クロスに持ち込む形も見せる。

こちらはSB黒石のクロスに逆サイドのSB大崎が飛び込んだ場面。
水戸の両SBは攻撃的にゴールに絡んでくる。

2トップをターゲットにシンプルに前線へボールを送り込むこともある。

秋田のようにコーナー目掛けて蹴ることはなく、トップの中山のポストプレーを活かして2列目の選手が絡む形もあれば藤尾が単独で裏へ抜け出す形と攻撃は多彩なチームとなる。

この場面はサイドからのクロスを中山が落とすと山根のラストパスを受けた中山が左足でフィニッシュ。

こちらは山根からのスルーパスに藤尾が抜け出し、シュートに持ち込んだ場面。
水戸は幅も取り、深さも取れるチームなだけに的を絞りにくく耐える時間も多くなるかもしれない。

甲府がボールを保持すると水戸は4222の形でブロックを敷き、中央を封鎖する。

ブロックを敷き、甲府のボール保持に対し牽制を掛けながらプレスを掛けるタイミングを探る。
対して、甲府は可変を行い相手の状況を見ながら優位性を作れるポイントを探っていく。
全体でボールにアプローチを掛けられる態勢が整うと水戸はSHを上げる形で連動して人を捕まえに出てくる。

甲府は新井が中盤に上がり、ボールを保持する形に対し水戸は2トップが縦関係となり新井を消しながらSHが前に出る形で嵌めていく。
空いたサイドのスペースにはSBがスライドしないことが多く、プレスの逃げ道とすることはできるがSBが出てくることでボールの取り所ともなる。

このようにショートカウンターへと繋げてくるため、左サイドでは荒木が中途半端なポジションを取り、右サイドでは山田や長谷川が降りてくることで水戸のSBが出てきにくい状況を作りプレスの逃げ道を作りたい。

プレスに出て行けず、ブロックを敷き守る際の水戸はSHが中央を封鎖しながらプレスに行くタイミングを探るためSHの背後や横が空きやすくなる。

プレス回避に対してもセットしたブロックに対する前進ルートにしてもポイントはサイドとなる。
特にブロックを敷いて守る際は、中央を厚く守ることを重視するためサイドに出たボールに対してはSHのプレスバックに頼ることが多くなる。
サイド深くへ出たボールに対してもSHが戻って対応したいため、幅を使った攻めは有効となる。
SHが戻れない場合にはSBが対応することとなるが、DFライン全体で連動することはあまり無くSBとCBの間が空く傾向にある。

右サイドでは関口が幅を取ることで大崎を引っ張りだし、その背中を長谷川が取る形を作りたい。
左サイドでは通常通り、ローテーションしながらメンデスも加え数的優位を作ることでボランチを引っ張りだしバイタルエリアを空けさせたい。

オープンな状況でボールが行ったり来たりする展開が多くなると水戸のペース、ゆっくりとボールが動く展開となると甲府のペースと言えるだろう。
甲府としてはボールを保持し、水戸を自陣に下げさせる時間を多くしたい。
下げさせた後は理詰めで水戸の守備ブロックを動かし、攻略したい。

8.あとがき

今シーズンも悲しいことに最後の試合となります。
シーズンが終わって欲しく無いとは毎シーズン思うが、このチームが見られなくなる悲しさは今まで以上にある。
また、昇格を逃した悲しみ以上に伊藤監督がチームを去る悲しさがある。
コーチとして甲府に来てから4シーズン、若返りやスタイルの転換を図りながら一定以上の結果を残せたのは伊藤監督の手腕無くしてあり得なかった。
伊藤監督には感謝しかない。
直接声に出して感謝を伝えることができないのは非常に残念である。
試合後のセレモニーで話す機会があると思うが、話す余地もないくらいの拍手を伊藤監督に送りたいと思う。
泣いても笑っても伊藤監督と戦える最後の一戦。
ホームで勝って伊藤監督を送り出したい。

水戸は来シーズンも秋葉監督の続投が決まっており、勝負の年となるだろう。
専用の練習場を整備してから年々有望な若手選手が集まるようになり、チームとしての伸びしろを持っている。
2000年にJ2に加入して以降、いまだJ1昇格は無いが昇格を現実的な目標とできるための土台はできてきた。
来シーズン以降も楽しみなチームであり、強力なライバルとなるであろう。
水戸としても来シーズンに繋がる戦いを見せたい。

開幕から42試合全試合のプレビューを書くことができました。
読んでいただける方がいるから続けてくることができました。
ありがとうございました。
いろいろあったシーズンです。
個人的に傷ついた時期もありました。
ですが、結果的に今までで一番楽しかったと言ってもいいシーズンとなりました。
最終節大好きなサッカーを全力で楽しみたいと思います。
サポーターの力でチームに力を与え、絶対に勝って伊藤監督の挑戦を後押ししてあげましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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