「二人称的アプローチ」による英語授業研究の試み
吉田達弘(2020). 「『二人称的アプローチ』による英語授業研究の試み」『英語授業学の最前線』, 49-71.
この本に紹介されている「二人称的アプローチ」(吉田達弘先生)の考えは示唆に富んでいます。主観的でも客観的でもない2人称としての評価者について考えています。例を挙げながらまとめてみます。
皆さんも評価を行う際に色々な葛藤があると思います。英語で言いたいことをたくさん抱えている児童を目の前にして、指導者が考える正しい表現(一人称的)を教えるのか、教科書に書かれている教えるべき表現をたんたんと教えるのか(三人称的)、それとも児童の言いたいに耳を傾けて一緒に悩んで考えるのか(二人称的)。
また、授業反省会等においても同様の場面に出くわすこともあります。公開してくれた授業に対して、自分の経験から答えを導き出して助言するのか(一人称的)、学習指導要領等を基に客観的な材料から助言をするのか(三人称的)、授業者の視点にたって一緒に考えを共有して考えていくのか(二人称的)。
指導と評価の一体化という視点で考えると、評価については客観的な指標を基にしなくては不公平が生じてしまいます。客観的(3人称的視点)は非常に重要です。評価者の主観に基づいた評価では妥当性に問題があることは言うまでもありません。一方で、客観的な視点に偏りすぎて評価を続けるというのも人間味がないというか、時には冷たい印象を与えてしまうかもしれません。2人称的な視点から共感的に考えるというのはどうでしょうか。評価者が指導や助言を受ける側に共感的理解を深めながら評価をするというのはむずかしいことです。評価をするというよりは、望ましい状態になるように共感的理解を大切にしながら一緒に歩んでいくという感じが近いかもしれません。
既存の授業研究や評価の在り方に一石投じるアプローチではないでしょうか。この本にも書かれていますが、2人称的アプローチと、客観性を重視した3人称的アプローチをうまく組み合わせていくことでよりよいアプローチが可能になります。授業改善を進める上での一つの視点として考えてみても面白いかもしれません。