老齢馬における下部尿路疾患
老齢馬、特に高齢の繁殖牝馬では、会陰のコンフォメーション不良や膀胱炎、出産や交配に伴う尿道損傷が原因となって尿失禁が認められることがある。
また高齢の種牡馬では、膀胱内の沈殿物に伴う排尿障害が認められることがある。
正確な原因は不明だが、脊椎炎に伴う痛みにより、体を進展させて満足に排尿できず、炭酸カルシウムが長期間に渡って膀胱に蓄積するためと推測されている。
診断
直腸検査
正常、あるいは排尿障害に伴う肥大した膀胱が触知される。
エコー検査
一般に沈殿物(高エコー)を伴う膨張した膀胱を認める。
可能なら尿路全体を描出するべきである。
尿検査
尿カテーテルでを採尿し、細菌培養、感受性試験を実施する。
治療
内科的療法
膀胱炎の場合、適切な抗菌薬の長期投与を実施する。
また生理食塩水による膀胱洗浄も有効である。
尿の酸性化も治療の一つだが、困難であることが多い。
塩化アンモニウム、あるいは塩化カルシウムの投与(15~20g/8h, PO)、
あるいは陰イオン/陽イオン比が高い配合飼料を与える方法が報告されている。
なお、馬の尿の酸性化において、アスコルビン酸(ビタミンC)の投与は効果に議論がある。
膀胱炎を伴わない尿失禁に対しては、フェニルプロパノールアミンが有効である。
この薬はアドレナリン受容体に作用し、尿道括約筋収縮させ、尿失禁を改善する。
また排尿障害を呈する場合は、鎮痛薬により排尿痛をコントロールし、
ベタネコールの投与(12~20mg/8h, SQ)を実施する。
外科的療法
繁殖牝馬において会陰のコンフォメーションが悪い場合、キャスリック縫合を実施する。
多尿について
多尿は老齢馬によく認められる。
最も一般的な原因はクッシング症候群であるが、慢性腎不全、心因性多飲症、まれに糖尿病などが原因となることもある。
臨床症状、尿検査、生化学検査、副腎皮質刺激ホルモンと抗利尿ホルモンの測定により、一般的に多尿の原因が明らかになる。
equine geriatric medicine and surgery より抜粋