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最近の記事

踵骨隆起からの浅趾屈筋腱脱位に対する内科的・外科的治療法の効果

Outcome of conservative and surgical treatment for luxations of the equine superficial digital flexor tendon from the calcaneal tuber M. Federici, A. E. Furst, S. Hoey and A. S. Bischofberger Summary 本研究の目的は、踵骨隆起からの浅趾屈筋腱(SDFT)脱位に対する内科的・外科的

    • 牡馬における内部生殖器の超音波検査

      牡馬の内部生殖器は骨盤尿道(urethra)、精管とその膨大部(ampulla)、精嚢腺(seminal vesicle gland)、前立腺(prostate gland)、および尿道球腺(bulbourethral gland)から成る。 触診 直腸越しに探査すると、尿道は正中に位置し、坐骨弓において屈曲するが、この部位において固い管状構造物として触知可能である。成熟した牡馬の骨盤尿道の全長は10-13cmほどなので、検査の際は手首より深く挿入する必要はない。 次に精

      • 当才馬における屈腱拘縮

        当才馬における屈腱拘縮は ・子宮内における胎勢 ・スーダングラスなどの毒素 ・遺伝性 ・新生児甲状腺機能低下症  などと関連づけられる。 治療 軽度の場合 舎飼いによる運動制限や、バンデージ被覆が功を奏すことが多い。 それ以外に、理学療法(ストレッチ)、消炎鎮痛剤、ロバート・ジョーンズ包帯法が有効である。 中〜重度 Toe-Extension 装蹄や、スプリント固定が必要となる。 スプリントは皮膚に褥創を形成する可能性があるため、注意すべきである。 また上述の治療に加えて

        • 繁殖牝馬の子宮内膜炎に対する治療法

          繁殖牝馬の子宮内膜炎において、 ・子宮防御機構の是正 ・病原性細菌の排除 ・交配後の炎症コントロール が、治療を成功させるためのファクターとなる。 細菌性または真菌性の子宮内膜炎に対しては、子宮洗浄と抗生物質(局所・全身)により治療を実施することが一般的だが、すべての子宮内膜炎が子宮洗浄と抗生物質に良い反応を示すわけではない。 生殖器の解剖学的異常、過度の子宮粘液による抗生物質の失活、微生物によるバイオフィルムなどにより子宮が汚染され続け、治療の効果が認められないことがある

          老齢馬における下部尿路疾患

          老齢馬、特に高齢の繁殖牝馬では、会陰のコンフォメーション不良や膀胱炎、出産や交配に伴う尿道損傷が原因となって尿失禁が認められることがある。 また高齢の種牡馬では、膀胱内の沈殿物に伴う排尿障害が認められることがある。 正確な原因は不明だが、脊椎炎に伴う痛みにより、体を進展させて満足に排尿できず、炭酸カルシウムが長期間に渡って膀胱に蓄積するためと推測されている。 診断 直腸検査 正常、あるいは排尿障害に伴う肥大した膀胱が触知される。 エコー検査 一般に沈殿物(高エコー)を

          老齢馬における下部尿路疾患

          老齢馬における慢性腎不全(CRF)

          老齢馬において腎盂腎炎、あるいは糸球体腎炎がCRFの原因となる。 腎盂腎炎は、高齢の繁殖牝馬、特に会陰のコンフォメーションが悪い馬によく認められ、糸球体腎炎は、老齢馬よりも中齢馬(8~15歳)で一般的である。 臨床兆候 ・臨床徴候 ・体重減少 ・食欲 & 活力低下 ・多尿多飲 ・浮腫 上記の他に、 ・発熱 ・疝痛(軽度) なども腎盂腎炎において認められる。 診断 生化学検査 ・クレアチニン↑ ・BUN↑ ・ナトリウム↓ ・クロール↓ ・カリウム↑ ・カルシウム↑

          老齢馬における慢性腎不全(CRF)

          馬と心雑音

          馬の心臓の聴診では、心臓の4つの弁から出る音を聞き分けることができる。 まず馬の左側から、最も心音が強く聴取できる「僧帽弁領域」を探し、そこから背側に移動して「大動脈弁領域」、頭側に「肺動脈弁領域」を探す。 次に右側から最も心音が強く聴取できる「三尖弁領域」を探す。 I 音(S1) 房室弁が閉鎖して、心室圧が急速に上昇する時に生じる振動により生じ、 僧帽弁領域で最も強く聴取される。 低周波で構成されており、Ⅱ 音と比較して長い。 Ⅱ 音(S2) 大動脈弁および肺動脈弁(

          馬とカルシウム

          生理カルシウム(Ca)は筋収縮、血液凝固、血管系機能などの生理反応において主要な機能を果たしており、全ての動物にとって重要なミネラルである。 体の構造を保つために、その多くは骨格に存在(99%以上)しているが、臨床的な観点では、細胞外 Ca 濃度が最も重要であり、そのうちの血漿 Ca 濃度だけが容易にモニタリング可能である。 また血漿 Ca は、タンパク結合型、イオン化型、複合型の三つの分画として存在している。 Caの恒常性に関与する主なホルモンは、上皮小体ホルモン(PTH

          馬とカルシウム

          馬の全身麻酔におけるプロポフォールの使用

          近年、馬の全身麻酔において、バランス麻酔やマルチモーダル鎮痛の概念が導入されている。 プロポフォール(Pro)は、短時間作用型の注射麻酔薬であり、CRI の速度調節で麻酔深度を容易に調節でき、蓄積が少なく、麻酔からの回復も優れていることから、馬における全身麻酔に利用されている。 今回はプロポフォールを用いた全身麻酔について紹介する。 用法 前投与 メデトミジン 5〜7 μg/kg 導入 ミダゾラム(0.02〜0.06 mg/kg) ケタミン(1 mg/kg) プロポ

          馬の全身麻酔におけるプロポフォールの使用

          馬のエンドトキセミア

          正常な腸粘膜バリアと蠕動運動は、消化管内腔に存在するエンドトキシンの吸収を防ぐが、疝痛などの消化器疾患が起こると、粘膜が損傷し、エンドトキシンは急速に細胞内に浸透する。 そのためエンドトキセミアは、馬の消化管疾患の合併症として発症するリスクが高い。 治療 エンドトキセミアの治療目的は、以下に分けられる。 ・組織損傷に起因するエンドトキシンの血液循環系への侵入防止 ・心血管系の虚脱防止 ・損傷を受けた腸管からのさらなるエンドトキシン吸収の防止 輸液 基本的な治療の一つで

          馬のエンドトキセミア

          馬のウォブラー症候群

          ウォブラー症候群は後躯を主とした運動失調あるいは不全麻痺などの神経症状を呈する病態であり、若い牡馬に好発する。 原因は脊柱管の動的あるいは静的な狭窄であり、脊髄神経の圧迫変性により神経症状が歩様に現れるとされている。 動的狭窄は運動時、特に頚部の屈曲時にのみ起こり、C3-C4およびC4-C5で最もよく認められ、生後8~18ヵ月の馬に好発する。 静的狭窄は頚の位置に関係なく起こり、C5-C6およびC6-C7に最もよく認められ、通常1~4歳の馬に発症する。 診断 歩様検

          馬のウォブラー症候群

          セボフルラン麻酔におけるメデトミジンCRIの臨床有用性

          通常、馬の手術時の全身麻酔には、吸入麻酔薬が用いられている。 中でもセボフルランは血液溶解度が低く、 ・麻酔導入が迅速 ・麻酔深度の調節が容易 ・覚醒が円滑  といった利点を持っている。 その一方、セボフルランは用量依存性に呼吸循環系を抑制することが知られており、麻酔のリスクを高めている。 それゆえ、吸入麻酔薬の必要量を減少させることを目的としたバランス麻酔法 (吸入麻酔薬と麻酔補助薬の併用法)が、応用されている。 一般に、α2アドレナリン受容体作動薬が麻酔補助薬に用

          セボフルラン麻酔におけるメデトミジンCRIの臨床有用性

          グラム陽性球菌に対するセファゾリン投与法

          時間依存性抗菌薬であるセファゾリンは、血中薬物濃度が MIC を超えている時間(fT>MIC)が長いほど効果が高くなると考えられており、吸収が緩徐な筋肉内投与ではより高い効果が期待されている。 本報告では、セファゾリンの筋肉内投与および静脈内投与の PK/PD 解析から、輸送熱やフレグモーネの原因菌であるグラム陽性球菌に対する投与法が検討された。 健常馬 7 頭にセファゾリン 5 mg/kg の静脈内および筋肉内投与が実施され、投与後の血中セファゾリン濃度測定、St

          グラム陽性球菌に対するセファゾリン投与法

          馬における気管切開術

          気管の解剖学 馬の気管は食道の腹側(頭側)〜右側(尾側)に位置し、左右の幹気管支への分岐は第4-6番目の肋間で起こる。 平均的な成馬における気管断面の直径は5.5cmで、わずかに扁平な円形をしているが、これは気管に存在する軟骨輪の背側が欠損し、間隙を結合組織や気管平滑筋線維が架橋していることに由来し、呼吸時の気管拡張を可能としている。 また各軟骨輪の間には輪状靱帯が存在し、頚の動きに伴う気管の柔軟性に寄与している。 一時的な気管切開術 一時的な気管切開術は、急性の上

          馬における気管切開術

          子馬のロドコッカス・エクイ(R. equi)肺炎

          子馬におけるロドコッカス・エクイ(R. equi)感染症は、生後30~90日齢に現れる、肺炎を主徴とする疾病である。 最も一般的な症状は、広範な膿瘍および化膿性リンパ節炎を伴う化膿性気管支肺炎だが、その他に腸炎、ブドウ膜炎、感染性・免疫介在性関節炎、骨髄炎なども引き起こす。 肺機能喪失に対する子馬の代償能力が優れていることもあり、早期診断が難しい疾病である。 臨床所見 初期に呼吸数の増加と軽度の発熱が認められるが、症状が見逃されることが多い。 病状が進行すると、鼻翼の

          子馬のロドコッカス・エクイ(R. equi)肺炎

          子馬の感染性関節炎

          子馬では、出生直後から出生後30~45日齢までに罹患した感染症(臍・呼吸器・腸管)が、感染性関節炎を引き起こすことがある。 子馬の感染性関節炎は以下の4つに分類される。 S型(滑膜性) E型(骨端性):骨端の軟骨下骨に感染が存在 P型(成長板性):成長板骨幹端側に感染が存在 T型(手根・足根骨性):手根・足根骨の感染を含む 一般にはS型とE型が多いが、他の型も散発する。 臨床所見と診断 典型的な臨床症状として、跛行、発熱、関節の腫脹がある。近位の関節では腫脹が

          子馬の感染性関節炎