老齢馬における慢性腎不全(CRF)

老齢馬において腎盂腎炎、あるいは糸球体腎炎がCRFの原因となる。
腎盂腎炎は、高齢の繁殖牝馬、特に会陰のコンフォメーションが悪い馬によく認められ、糸球体腎炎は、老齢馬よりも中齢馬(8~15歳)で一般的である。

臨床兆候

・臨床徴候 ・体重減少 ・食欲 & 活力低下 ・多尿多飲 ・浮腫

上記の他に、
・発熱 ・疝痛(軽度)
なども腎盂腎炎において認められる。

診断

生化学検査
・クレアチニン↑ ・BUN↑
・ナトリウム↓ ・クロール↓ ・カリウム↑ ・カルシウム↑

尿検査
・尿比重(1.008-1.014)
・鏡検(腎盂腎炎では白血球、尿円柱、細菌を認める)

腎盂腎炎が疑われる場合、尿検体の培養 & 感受性試験を実施するべきであり、
・Streptococcus zooepidemicus ・Escherichia coli
・Enterobacter spp. ・Proteus spp.
などが一般に認められる。

糸球体腎炎の診断には、尿蛋白と尿クレアチニンを測定すべきである。
蛋白/クレアチニンが>3であれば、存在が疑われる。

エコー検査
両腎のサイズ、エコー輝度、結石の有無、腎盂の拡張、尿管の拡張を評価する。
正常な腎臓のサイズは9 × 15cm程度だが、
糸球体腎炎では正常より小さく、腎盂腎炎では正常より大きく描出される。
また右腎の生検をエコーガイド下で実施可能である。

直腸検査
エコー検査ほど有用ではないが、尿管の拡張や結石を触知できる可能性がある。

治療

一般的に支持療法となる。
可能であれば、腎毒性を有する薬剤を全て投与中止すべきである。

輸液療法
患畜が脱水状態にある場合は輸液療法が有効である。
また腎盂腎炎が疑われる場合は、持続輸液を実施する。
また新鮮な水を常に飲めるようする必要があり、
糸球体腎炎の場合を除き、飲水に電解質(NaClとブドウ糖をそれぞれ6~10g/L)を追加する。

食餌療法
罹患馬には、
中程度のタンパク質、高カロリー、低カルシウム、低リン、低カリウムの飼料が
理想的だが、腎不全の重症度によって異なる。
他の栄養価に関係なく、十分なカロリーを与えることが、最も重要である。

栄養補助食品として、
・ビタミンE ・ビタミンC ・ビタミンB群 
・アマニ油 or キャノーラ油(50g程度)

抗菌薬
腎盂腎炎の馬は、適切な抗菌薬で少なくとも4週間治療すべきである。
尿の細菌検査は、治療中 & 治療後に実施する。

equine geriatric medicine and surgery より抜粋


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