子馬のロドコッカス・エクイ(R. equi)肺炎

子馬におけるロドコッカス・エクイ(R. equi)感染症は、生後30~90日齢に現れる、肺炎を主徴とする疾病である。
最も一般的な症状は、広範な膿瘍および化膿性リンパ節炎を伴う化膿性気管支肺炎だが、その他に腸炎、ブドウ膜炎、感染性・免疫介在性関節炎、骨髄炎なども引き起こす。

肺機能喪失に対する子馬の代償能力が優れていることもあり、早期診断が難しい疾病である。

臨床所見

初期に呼吸数の増加と軽度の発熱が認められるが、症状が見逃されることが多い。

病状が進行すると、鼻翼の拡張や、腹式呼吸が認められるようになり、聴診上、肺雑音が聴取される。また呼吸困難に陥った症例はチアノーゼを示す。

またR. equi 肺炎を発症した症例の50%は腸炎、30%は感染性・免疫介在性関節炎(特に膝関節と足根関節)を併発していると考えられている。

診断

R. equi 肺炎の診断には血液検査、肺エコー検査、肺レントゲン検査の他、気管洗浄液の細菌学的検査、ELISAによる血清学的検査が用いられる。

血液検査ではWBC、フィブリノーゲン、α-グロブリンの増加が認められる。

R. equi 肺炎は牧場によって発生頻度に隔たりがあり、頻発する牧場では、子馬の体温を毎日2回測定し、発熱している場合は、獣医師による肺エコー検査を実施するべきである。同様に血液検査でWBC > 13.000 / μLの子馬がいる場合も、獣医師による検査が推奨される。

肺エコー検査における病変は0から10までのグレードで評価される。
病変のグレードは、肺エコーで認められた最もグレードの高い膿瘍によって決定され、例えば左肺にグレード1の膿瘍が複数あり、グレード3の膿瘍が1つある場合、左肺はグレード3と定義される。

このグレードの概要は以下の通りである。

GRADE 0: 病変無し
GRADE 1: <1 cmの病変
GRADE 2: 1-2cmの病変
GRADE 3: 2-3cmの病変
GRADE 4: 3-4cmの病変
GRADE 5: 4-5cmの病変
GRADE 6: 5-6cmの病変
GRADE 7: 6-7cmの病変
GRADE 8: 7-9cmの病変
↑胸水が貯留している場合は、膿瘍に関わらず、このグレード
GRADE 9: 9-11 cm
GRADE 10: 肺葉全体にわたる病変

肺エコー検査は、経過の確認にも用いることができる。

治療

リファンピンとマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンによる治療が一般的だが、エリスロマイシンは副作用で下痢を誘発するため、アジスロマイシンやクラリスロマイシンなどの他のマクロライド系抗生物質も治療に利用されている。

その他セファロチンとゲンタマイシンの併用も効果があるとされる。

用量として…
リファンピシン:5mg/kg を1日2回経口投与
アジスロマイシン:最初の5日間は1日毎、その後は2日毎に10mg/kg を経口投与
クラリスロマイシン:7.5mg/kgを1日2回経口投与

またマクロライド系抗生物質は日光と反応して、高体温を引き起こす可能性があるため、治療中は子馬を馬房に入れる必要がある。

治療を早期に開始することで、予後が改善し、治療期間が短縮(4-8w→2w)することができる。


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