踵骨隆起からの浅趾屈腱脱位

浅趾屈腱を踵骨に固定している支帯(retinaculum)が損傷すると、浅趾屈腱が飛端から脱位(luxation)または亜脱位(subluxation)することがある。
脱位は両方向(外側>内側)に起きるが、まれに浅趾屈腱が分割し、それぞれ内側と外側に脱位することもある。

跛行は通常、急性かつ重度であり、飛端部の腫脹を伴う。また急性期には腱の位置が水平方向に変動するため、馬が驚き、頻繁に患肢で蹴る仕草を見せる。
症例によっては、静止時は腱が正常な位置にあるものの、運動時に脱位または亜脱位することがある。

診断は身体 & エコー検査により実施される。また踵骨腱下包の関節鏡検査では、浅趾屈腱の内側支帯と、それに関連する線維軟骨の損傷が認められ、踵骨腱下包と踵骨皮下包が交通する。

急性期には鎮静と鎮痛が重要である。
腱の脱位が継続する場合、長期間のストールレスト(4~6ヶ月)を行い、症例によっては厚くパッドを詰めた full limb bandage や full limb cast で肢を固定する必要がある。
跛行は通常改善するが、機械的な跛行が残存するため、馬場馬術への使用は制限される。しかし、競馬や障害馬術への復帰は可能である。
腱の内側方向への脱位が持続している場合、跛行の程度が高いことが多く、競技への復帰は困難である。

外科的な治療として、損傷した線維軟骨を切除し、残存する支帯と不安定な浅趾屈腱本体を分断、外側方向へ浅趾屈腱を恒久的に亜脱位させる方法がある。
また支帯の修復術や再建術も報告されているが、結果は信頼性に欠ける。

安定した亜脱位を形成することで、運動機能的に健全な馬となる。

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