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サゴ脾とハム脾 #食べ物に例えないでよ
獣医学や病理学の世界には様々な「たとえ」が存在します。
腫瘍細胞の増殖パターンのたとえ(例:ロゼット様、花むしろ状。参考)や、大きさのたとえ(例:小児頭大、鶏卵大、小豆大)など……
そんな中で、特に印象に残るのが食べ物に例える表現です。
病変や分泌物を食べ物に例えるのはやめてくれよ……と最初は思っていたのに、気づけば脳にすり込まれ、忘れられなくなっていく……
そんな世界をお楽しみください。
サゴ脾とハム脾
![](https://assets.st-note.com/img/1680583125366-E6Al9U564J.jpg)
©︎2022, mccheng. Sago Soup, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
![](https://assets.st-note.com/img/1680582953895-9BzcJYgo2F.jpg?width=1200)
©︎2022, Pannet. Ветчина свиная, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
アミロイド沈着した脾臓(脾臓アミロイドーシス)のうち、
白脾髄にアミロイドが沈着した場合→「サゴ脾」
赤脾髄にアミロイドが沈着した場合→「ハム脾」
と呼びます。
「ハム」は文字通りハムのことですが、「サゴ」とは何でしょうか?
実は、サゴヤシという植物から取れるデンプンを加工した「サゴパール」という食品に由来しています。タピオカの親戚みたいなイメージです。
美味しそうですね。
さて、サゴ脾やハム脾の肉眼像や病理像をインターネット上で一生懸命探したのですが、そもそも数が少なく、ライセンス的に引用して良いものは全然なかったため、
ハム脾を見てみたい方は、こちらやこちらの図32.4〜32.5
などをご覧ください。もちろん、お手持ちの教科書やカラーアトラスを見ていただいてもOKです。
脾臓の構造
ちょっとここで、脾臓の構造を復習しておきましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1680582953438-AuXksdPRga.png?width=1200)
上記の図のように、脾臓には大きく分けて「白脾髄」のエリアと「赤脾髄」のエリアがあります。
白脾髄には白血球の一種、リンパ球がたくさん集まっているところです。
赤脾髄には赤血球がたくさん存在し、古くなった赤血球はここで壊されます。
脾臓のアミロイド沈着とは
体の中でもアミロイドが沈着しやすい臓器とそうでもない臓器がありますが、脾臓は沈着しやすい臓器の一つです。
サゴ脾(sago spleen)は、白脾髄を中心に、アミロイドが結節性に沈着した状態です。肉眼で見ると脾臓は腫大し、白っぽい粒が散らばったように見えます。
ハム脾(ham-like spleen)は、赤脾髄にアミロイドがび漫性に沈着した状態です。肉眼で見ると脾臓は全体的に高度に腫大し、テカテカと光沢感を増します。そのためか、ハム脾は英語ではlardaceous spleen(ラードのような脾臓)と表現されることの方が多いようです。
![](https://assets.st-note.com/img/1680582953750-8E73REAVq2.png?width=1200)
アミロイドが高度に沈着すると脾臓は腫大し、ヒトでは脾臓破裂の原因にもなります[1,2]。また、アミロイドのせいで正常な構造が圧排され(押しやられ)、脾臓本来の機能が発揮できなくなります。
アミロイドって何?という話は、とてもこの場で語り尽くせませんので、また別の機会に説明したいと思います。
余談
なぜ脾臓のアミロイドーシスでは沈着パターンに違いがあるのでしょうか?
ヒトでは、「サゴ脾」は全身性のAAアミロイドーシスで、「ハム脾」はALアミロイドーシスで見られることが多いとされています[3]。
動物で見られるアミロイドーシスの多くは、炎症に伴う全身性のAAアミロイドーシスで、全身性のALアミロイドーシスは稀だと言われています。となると、動物の脾臓でアミロイドが沈着するならサゴ脾パターンばかりになるのでしょうか?
ところが教科書的には、動物でサゴ脾を見ることはあまりないとも書かれています。うーん?
どうやら、動物ではどのアミロイドがどんなパターンで沈着するのか、が未だハッキリ解明されていないようです。あちこち調べたのですが分かりませんでした。
何か分かれば加筆します。力及ばずすみません。
情報をお持ちの方、ぜひご連絡ください!
おわりに
「#食べ物に例えないでよ」シリーズは、Twitterにて不定期更新中です。
Twitterで語りきれなかった部分をnoteで補足していければなと思っています。
よかったらどちらもフォローしてください!
引用文献
1. Perrone, L.; Gervaso, L.; Bosco, E.; et al. Non-Traumatic Splenic Rupture in Amyloidosis as a Rare Evolution of Multiple Myeloma. Clin. Pract. 2019, 9, 1146. https://doi.org/10.4081/cp.2019.1146
2. 吉田枝里,吉原秀一,大石晋ほか.アミロイドーシスによる脾出血の1例,日本臨床外科学会雑誌 2012, 73(12),3277-3281. https://doi.org/10.3919/jjsa.73.3277
3. admin in PATHOLOGY & LABORATORY MEDICINE, 2017, "Amyloidosis of the Lymph Nodes and the Spleen _ Basicmedical Key", https://basicmedicalkey.com/amyloidosis-of-the-lymph-nodes-and-the-spleen/, 2023/04/04閲覧
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