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"つながり"を感じられる獣医学 - X Talks 9.4 -
前回は、飼い主さんとのコミュニケーションの難しさ・大切さから、獣医療関係者に対するメンタルケアと情報アップデート支援の重要性について話を聞きました。最終回の今回は、久保田先生ご自身の話題に戻ります。子育てに関する考え方から理想の獣医学通訳まで、パーソナルな部分を少しご紹介します。"温度感"を伝えるという久保田先生の通訳は本当に素晴らしいです!
人と人を繋げて“温度感”も伝える
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--:改めて、通訳へのキャリアチェンジに後悔はありませんか?
久保田:ありません(キッパリ)。ワークライフバランスが取れていて、今の自分にはすごく合っていると思います。
--:歯切れの良いお答えが聞けました!今のお仕事の魅力は何でしょうか?
久保田:セミナーをしてくれる方々が、みんなすごく素敵な講師たちなんです。
前田:海外の先生ですか?
久保田:そうです、海外の先生たち。獣医学の知識や経験はもちろんですが、人として本当に尊敬できる方々ばっかりなんです。セミナーも魅力的で、ジョークを採り入れながら楽しくお話ししてくれます。それがすごく楽しくて、私が感じているそんな魅力を丸ごと日本の先生たちにも体験して欲しいって思うんですよ。そのまんまを真似はできないけど、何とか伝えたい!
前田:なるほどー!
久保田:セミナーや学会では、獣医学の知識を身につけることは、もちろん大事です。でもそれだけじゃなくて、同じ場を共有している「人と人を繋ぐ」とか、そこにある“温度感”を伝えられたらなって思うんです。
前田:なんだか、めっちゃいいこと言いましたね(笑)
久保田:だって、知識を得るだけなら本を読めばいいし。
前田:知識だけであれば、確かに!
久保田:動物や獣医学と向き合う姿勢も含めて、トップランナーの先生たちがレクチャーしてくれるんです。私が「すごい!」と思うだけじゃなくて、そこもみなさんと共有したいんです。
通訳という仕事で私が一番大切にしているのは、言葉だけでなく、講師の先生の「生き様や姿勢」のような温度感も一緒に伝えることです。私にとって通訳という仕事は、それが一番の魅力でもあります。
前田:いやー、本当に素敵なお話ありがとうございます!すごくしっくりきました。だから久保田先生の通訳はわかりやすいというか、スッと入ってくるんですね。
実際、海外の先生方は人格者が多いですよね。
久保田:ほんとにそう思います。もしかしたら、はるばる日本まで来るっていうことが“ふるい”になっているのかもしれませんけれど。
前田:以前、栗原先生(第7回のゲスト、ノースカロライナ州立大学の栗原学Assistant Professor)と対談させてもらったんです。彼も、海外でアカデミアに残る先生はみんな人格者だって言ってました。それには理由があって、プロフェッサーになるためには全方向からのインタビューがあるそうです。
上司だけじゃなく、部下や学生さんも含めてスタッフ全員に「この人を本当に教授にしてもよいのか?」という聞き取りがあるそうです。横柄な人は上がれない仕組みになってるから、アメリカの教授は必然的に人格者しかいないっていう話でした。我々にとっては「身につまされる」話ではありましたが…(笑)
「自立」を促す子育て
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--:今のところ、久保田先生は働く体制も仕事の内容も充実されていらっしゃる感じですね。
久保田:そうですね。子供がちっちゃいので、家庭は忙しいです。あまり色々な仕事に行って動けるような状況にはないですが、充実しています。
--:人生としては、全方位的に充実してますね。
久保田:そうですね。「今が頑張りどきかな」とも思います(笑)
前田:お子さんはおいくつですか?
久保田:小学校3年生と(保育園の)年長です。
前田:小3ってことは、9歳とか10歳くらい?
久保田:9歳ですね。
--:子育てとお仕事の両立には苦労されますか?
久保田:私の仕事は毎日じゃないので、困ってることはそんなにないです。ずっと働いていたいと思いますし、自分が選択しながら生きていく姿を息子にも娘にも見せたいって強く思ってます。女の子には家庭に入る以外の選択肢があっても良いし、男の子は「女の子だってやりたいことがあるんだ!」っていうことを知ってもらいたいっていうのも、私が働く理由でもあります。
前田:めっちゃ大事ですね。男の子と女の子、どっちが上の子ですか?
久保田:上がお兄ちゃんです。下の娘がね、「ぽやん」ってしてるんです(笑)それで、主人は私に、「君は女だって働いて生活できる力が必要だって言うけど、それがみんなにとっての幸せじゃないかもしれないからね」って言うんです。(私の言い方が)押し付けがましいのかなって思うこともあるけど…(笑)
前田:そこ、難しいですね…。確かに専業主婦になりたい人やそれが合っている人も、やっぱり一定数はいるんじゃないですかね。
久保田:う~ん…。
前田:女性だけでなく、男性でも専業主夫になる方だっていますもんね。
久保田:いますけど…、やっぱり選択肢は残しておいてあげたいって思います。
前田:それは確かにそうですね!(人生って)何が起こるかわからないじゃないですか。だから「自立」するっていうのを目標にするといいのかもしれないですね。
久保田:経済的な自立の上で繋がっているっていうのが、真の愛情じゃないかな?
前田:そうそう!そう思います。精神的な自立だけでなく、経済的な自立というのもやっぱりすごくだいじですよね。
久保田:私も自立はできてないかもですけど。
前田:いやいや、十分してますよ!
他者とのつながりを感じられる獣医学
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--:ではこの辺で恒例の質問を聞きますか?
前田:そうですね。お話の中で、ちょいちょい久保田先生の考えていることの本質が出ていた気もしますが…。
久保田:出てました?(笑)
前田:出てました!(笑)
久保田:何か材料はありましたか?
前田:いっぱいありましたよね。
久保田:メンタルヘルスとか?
前田:メンタルヘルスもそうですし、「温度感を伝える」とか。
久保田:そうですか…。なんだかちょっと恥ずかしいですね(笑)
--:では、「久保田先生にとって、獣医学とは?」
久保田:事前に考えてきたんですけど、やっぱり難しいですね…。私にとっての通訳を通した獣医学、あるいは獣医学を通しての通訳ということで考えると…。
動物を含めて、他者との繋がりのCHEMISTRYを感じられるのが獣医学だなって思います。
前田:おー!ケミストリー!なるほど!それは新しい視点です!
久保田:獣医学って、動物に優しくするっていう、人の優しいところが根本にあるんです。その上で、人同士が繋がることで、本とかだけでは得られない心の動きが伝わるじゃないですか。そういうのが、人間にとってすごく大きなことだって感じます。私自身も、そんなつながりですごく励まされることがあります。
前田:めちゃくちゃわかります!
久保田:コロナ禍があって、人と接することのないオンラインセミナーもあったけど…。やっぱり、対面で話すと伝わることってあるじゃないですか。それを感じられると、私は喜びを感じるんですよね。
前田:オンラインが普及したからこそ、対面のよさに改めて気づくってありますよね。
久保田:通訳者として、その感動をお助けできるのも嬉しいんです!
前田:確かに。久保田先生は言葉だけでなく心の通訳もされているんですね。
--:やっぱり、リモートでやるのと対面では、そこはかなり違いますから実感されますよね。
前田:リモート通訳もやるんですか?
久保田:そうですね、Zoomとかでも通訳します。全然違うわけじゃないんですけど、リモートだとみんなの顔が見れない…。講師の顔は見えるけど、皆さんの顔が見れないから寂しさはありますね。
音声だけで参加される方もいらっしゃるので、一方通行感があります。例えばアメリカにいる講師とはZoomで顔を見ながら繋がりを感じられるけど、それが、私の通訳を通してこっちの人(聴衆)に「ちゃんと伝わってるのかな?」っていうのはあります。
前田:すごくわかります。講師側も全く一緒です。オンラインだと相手の顔が見えないのでリアクションが見えないんですよね。だから不安になる。
--:受け手の反応がわかるっていうのは大事ですよね。
久保田:そうですね。特に、私は獣医師の先生方のためにやりたいから、ちゃんと伝わっているのかなっていう反応は感じたいですね。
前田:なるほど。
久保田:「どんな分野の通訳でも」っていう感じだったら、あんまり気にならないかもしれないです。
--:獣医さんのために何かしたいっていうモチベーションがあって、手段として通訳のお仕事なわけですね。
久保田:やりがいが違いますよね。
--:(記者という)同じ言葉を扱う仕事として、私もとても勉強になります。今まで、単純に言葉を渡していただけだなと…。
久保田:いわゆる「ビジネス」の現場とは違うところもありますから。
--:スポーツの分野などでは、「気持ち」も併せて伝える大切さを改めて考えました。
久保田:なるべく汲み取って、伝えたいですよね。
--:そうですね。本当に勉強になります。
前田:いや~、久保田先生が獣医師のことをめっちゃ思ってくれてるんだなって思って、なんか感動しました。
久保田:いえいえ。自分が臨床獣医師だった時に苦労したので、今頑張っている先生方のお役に立ちたいんです。
前田:AIが台頭してきて、いろんな仕事がなくなるみたいな話があるじゃないですか。体を使うブルーワーカーの仕事がなくなるって言われてたけど、実際に減ってきたのはホワイトカラーの仕事。頭を使う仕事がなくなりつつあって、身体を使う仕事は残ってるんですね。
久保田:確かに。
前田:考えてみれば、AIには体がないから。それと、心とか思い出とか生き様とかが、人間に残されたAIに対抗する最後の領域だっていう話があります。僕も本当にそうだと思います。臨床獣医師は頭も使いますけど、結局、体が資本の仕事じゃないですか。だから頭を使うホワイトな部分もあるし、身体を使うブルーな所もあるのが獣医師の仕事かなって思います。
久保田:めっちゃブルーなところも…
前田:ブルー多めですけど(笑)
久保田:多めですね(笑)
前田:でも頭も大事だから、ライトブルー的な(笑)AI時代のこれから、「ライトブルーワーク」が生き残るんじゃないかっていうのが僕の仮説です。
久保田:ライトブルーワーク(笑)! 私もそれを目指します!
前田:僕もそれを目指して頑張ろうと思います!
--:本当に色々と貴重なお話をありがとうございました!
久保田:こちらこそ、ありがとうございました!
久保田先生のお話をうかがって個人的にいちばん感じたのは、"つながり"と"サポート"を大切にされている姿勢でした。これは、通訳のお仕事についても、メンタルケアや論文の紹介といった構想においても感じたことです。ご自身の経験を基に、常に「寄り添いながら支える」というスタンスが久保田先生の生き方のように思います。自分の生きざまを見せることで、お子さんの自立を促すという子育てにも、そんな優しさが垣間見えるような気がする今回のVET X Talksでした。
VET X Talksでは、これからも様々な角度から「獣医学(研究)はおもしろい!」ということを分かりやすくお伝えしていきます。次のゲストは、ゲノム編集という最先端の研究に携わる専門家をお迎えする予定です。ご期待ください。
今回話題にのぼった、獣医療関係者のメンタルサポートや新しい論文に関する分かりやすい情報発信の仕組みづくり。興味のある方がいらっしゃいましたら、是非、ご連絡ください。よろしくお願いします。
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