人と人を繋げて“温度感”も伝える --:改めて、通訳へのキャリアチェンジに後悔はありませんか? 久保田:ありません(キッパリ)。ワークライフバランスが取れていて、今の自分にはすごく合っていると思います。 --:歯切れの良いお答えが聞けました!今のお仕事の魅力は何でしょうか? 久保田:セミナーをしてくれる方々が、みんなすごく素敵な講師たちなんです。 前田:海外の先生ですか? 久保田:そうです、海外の先生たち。獣医学の知識や経験はもちろんですが、人として本
「薬だけください!」への対応 --:前回、獣医療従事者のメンタルヘルスには飼い主さんとの関係性が大きく関わってくるというお話がありました。 久保田:そうですね。特に飼い主さんとの関係性については、大学などで体系的に教わるという機会がありません。それぞれが身につけてきたコミュニケーションスキルに依存すると思います。 前田:本当にそうですね。 久保田:だから、テクニックとして「こういう時はこういう風にしましょう」っていうある程度の知識を知っていると、手を差し伸べる方
獣医療従事者に必要なサポート --:色々なセミナーの通訳をされることが多いということですが、講師として来日されるのはアメリカの先生が多いんですか? 久保田:基本的にはアメリカから来られる先生が多いです。でも、イギリスやヨーロッパ、オーストラリアからもいらっしゃいます。 前田:出身は別の国でも、アメリカの大学で活躍されている先生も結構いますよね。 --:やっぱり獣医学研究はアメリカが強いんですか? 前田:強いと思います。 久保田:予算の規模も全然違うって
臨床獣医師から獣医学通訳者に --:久保田先生のお仕事は非常にユニークだとうかがっています。 前田:“オンリーワン”ですよ! 久保田:ちょっと変わってはいますけど(笑)、他にも同業者が何人かいるので、オンリーワンじゃないですよ。 前田:そうなんですか?でも僕が知っている中では断トツの通訳さんです!なので今回は「通訳」という、これまでとは違った話を聞きたいと思ってます。そもそも、どうして通訳というお仕事をはじめることになったんですか? 久保田:きっかけは、東
継続的な予算確保の難しさ --:前回は、「本当にやりたい研究をやるって、大変ですよね」という伊賀瀬先生のコメントが印象的でした。特に、研究者の方々が予算確保に苦労されているというのは知りませんでした。 前田:研究を続けるって、本当に大変なことだとつくづく思います。科研費(※)のような競争的研究資金を途切れなく取り続けるって、本当に難しいなと思います。 前田:実は最近、個人的に研究費の寄付を募るサイトを作ったんだよね。 伊賀瀬:そうなんですか?クラウドファンディングで
全能感から「何も知らない…」を経て --:VET X Talksでお会いすると、研究者の皆さんがすごく謙虚なのに驚きます。これまでも話題に出ましたが、研究をすると「知らないことを知っていく」から、そういう姿勢になるんでしょうか? 前田:なると思います、やっぱり(笑) 僕も若い頃は、今よりも全然傲慢だったと思います(笑) 伊賀瀬:僕もそうですよ(笑)傲慢でした!僕が一番で、「何でも知ってる」って思ってました(笑) 前田:研究すると、知らないことだらけっていうこ
獣医学研究が"三方よし"をつくる --:飼い主さんがサプリに頼るのも、ご自身が良い薬を開発できていないせいだというお考え…。ものすごくプロ意識を感じます! 伊賀瀬雅也先生(以下、敬称略):プロ意識かどうかはわかりませんが…、「何とか病気を治したい」とは、すごく思います。 前田真吾先生(以下、敬称略):そこは僕もすごく共感するな。臨床系の獣医学研究者は誰でも、まずは「目の前の子たち(=動物)を治したい」っていう気持ちが強いよね。それが、ヒトの治療にまでつながったら
"代謝"に注目したがん治療の研究 --:早速ですが、今回はどんなテーマでお話しますか? 前田真吾先生(以下、敬称略):VET X Talksは、主に獣医学生さんや獣医師の先生、そして獣医療に興味のある飼い主さんに向けて獣医学研究の魅力を語るっていう趣旨です。そこで今回は、若手のホープとして伊賀瀬先生に来ていただきました! 伊賀瀬雅也先生(以下、敬称略):ホープだなんて…(笑)今回、特に“お題”をもらってないんで、「何を話せばいいんやろう?」とドキドキしながら来てま
「挑戦」から「教育」のフェーズへ --:では最後に恒例の質問です。栗原先生にとって獣医学とは? 栗原:僕にとっての獣医学は、ここまでは ”挑戦" でした。これからの僕にとっての獣医学とは、"教育" です! --:人生のフェーズが変わったということですか? 栗原:はい、ここまでの僕にとっては、獣医学って挑戦だったんです。レジデントに応募するのも、色々な試験を受けるのも、それから会社を作るのも。米国獣医画像診断専門医の資格を取ったので、欧州獣医画像診断医も取ろうと
過去は変えられる --:前田先生の泌尿器に関する研究は、岐阜大から東大の大学院に行って、その後さらに環境が変わったからこその出会いなんですね。 前田:岐阜大から東大(の大学院)に行った時にも、分野が変わったんです。学部時代は皮膚とアレルギーを研究していました。東大の内科に来た時にも、アレルギー(の研究)を続けられると思ったんですが、その時も当時の教授から「アレルギーはダメだ」と言われてしまって…(笑)。 --:前田先生のコントロールが効かない状況だったわけで、運命
ベストフレンズ --:栗原先生の人生に影響を与えた "3人のおじいちゃん" について、教えてください。 栗原 学先生(以下、敬称略):ロンとポールとボブっていう3人です。ロンが一番年上で、55歳までテキサスA & M大学の教授だったんです。なんですが…、いきなり「スイスに住んでみたい」って大学を辞めて移住しちゃったクレイジーな人です。しばらくしたらスイスにも飽きて、イランで獣医師のレジデントシステムを立ち上げたりしていて…。バイタリティ溢れるすごい先生です。 釣り
病気の原因を探る画像診断 --:「画像診断専門医」というのは、どんなお仕事なのですか? 栗原 学先生(以下、敬称略):病気には原因があります。(ヒトを診る)医療でも獣医療でも同じですが、それを突き止めるのが診断です。血液検査と並び、病気の原因を突き止める大きな役割を担っているのが画像診断です。 画像診断によって病気が治ることはありませんが、診断なくして治療はありません。もちろん、すべての病気とその原因がわかっているわけではないので、診断がつかない場合もあります。
医学部のような体制に向けて --:これまでうかがったお話から、獣医学研究者も臨床獣医師も、それから女性も男性も、キャリアを積むうえで解決すべき制度面での課題はまだまだ多いですね。藤原先生は、今後も臨床研究の中で後進を育てながら、女性の研究者がいればサポートしていかれるのですね? 藤原亜紀先生(以下、敬称略):引き続き、女性の獣医師が臨床を長く続けられるような環境づくりに取り組みたいですね。私はある程度の立場もできたので、色んなことを気にせず言えるようになりました。たぶ
産休・育休中とその後の課題 --:前回の対談で藤原先生がおっしゃったように、女性の場合、やはり出産という現実的な問題で仕事を続けることが難しいこともありますね。 藤原亜紀先生(以下、敬称略):出産は、本人が納得したタイミングが一番良いと私自身は思っています。私はキャリアアップが遅くなると焦りを感じると思ったので、少し仕事の経験を積んでからにしました。 でも生物学的な観点から言えば、何も考えずに妊娠したタイミングで産むのが苦労しないと正直なところ思います(笑)。もしも
「男だから」「女だから」 --:今回、初めて女性の先生をお迎えしました。センシティブな話かもしれませんが、獣医学研究者や大学教員として「女性だから」という理由で不自由を感じることはありますか? 藤原亜紀先生(以下、敬称略):私の場合、何かの時に「女性だから選ばれた」と言われるのが嫌だったので、明確に実績を残すよう常に努力するようにしていました。そういう女性はたぶん多いんじゃないかなと思います。 時には、「あ~、女性だからね」みたいな雰囲気を感じる時もありますが(笑)、
たくさんの動物たちを救うために --:藤原先生は臨床研究に熱心だとうかがいました。前田先生も同じですが、藤原先生も臨床だけでなく、研究だけでもなく、どちらにも携わっておられるのはなぜですか? 藤原亜紀先生(以下、敬称略):臨床だけだと、目の前の子(動物)しか助けられませんよね。臨床現場で「おかしいな」と思ったことを解決して、自分が直接診ていなくても、世界中で同じ病気に苦しんでいる子たちを助けるための研究が大切だと思います。特に私の分野は論文数なども限られているので、