中毒15:ペットのヒキガエル中毒
もうすぐ啓蟄(けいちつ)。冬眠していた亀やカエルが目覚める頃,という意味だそうです。我が家の亀は高齢のため今年は冬眠させませんでした。みなさんのお宅はいかがでしょうか?
さて,お散歩などで犬や猫がカエルに遭遇して食べちゃったらマンソン裂頭条虫に気を付けよう!と大学では教わりました。が,ヒキガエルの場合は毒液にも注意です。ヒキガエルの毒は心臓に毒性がある物質が含まれています。毒はヒキガエルの仲間全てが持ちますが,毒性は種類によって様々です。
ヒキガエル中毒はヒキガエルの種類により毒の量などが異なります。日本ではニホンヒキガエル(Bufo japonicus)による中毒がみられます。アメリカのヒキガエル中毒ではColorado River toad(Bufo alvarius)とオオヒキガエルmarine toad(B.marinus)の2種類が主で特にMarine toadでは致死的な中毒を起こすこともあります。ニホンヒキガエルの毒素やどの程度の毒を持っているかなど不明な点も多く,特効薬もないことから接触させないよう注意が必要です。
■原因物質
インドールアルキルアミンindole alkyl amines(LSDに似ている),強心配糖体cardiac glycosides, non-cardiac sterols.
■症状
症状は毒液に曝露されたすぐに起こってきます。高体温、多量の唾液分泌、興奮,昏睡,不整脈などの心毒性。日本のニホンヒキガエル中毒では嘔吐や下痢,小腸炎がみられたという報告もあります。
■中毒量
全てのBufo属のヒキガエルは耳下腺から毒を出します。防御的な反応として毒液を出します。種類により毒の濃度など異なることが予想され、中毒量ははっきり分かっていません。
■なりやすい犬種
遭遇するのは日が沈んでから〜夜,早朝が多いとされます。その時間帯や、水辺の近くを散歩する際は注意が必要です。
■治療
大量の水で5〜10分口内を洗浄します。
高体温(40.6度以上)がみられる場合は動物を水をはった入れ物にいれて冷やします。体温が39.4度になったら引き上げて冷え過ぎないようにします。
重篤な頻脈tachycardiaがみられるときはアトロピンを投与します。頻脈はジギタリス様の毒素によって起こります。
■注意すべきこと
ヒキガエルの毒は身を守ろうとした際に分泌されることから,ヒキガエルを発見してもペットが興味をもってちょっかいを出さないようにする必要があります。
ヒキガエルを発見した時にすぐにペットをその場から離せるよう,散歩中はノーリードにさせず何かあれば速やかに紐を引けるようにリードをあまり長くし過ぎないようにすることをおすすめします。
■参考
・TILLEY, Larry P.; SMITH JR, Francis WK (ed.). Blackwell's five-minute Veterinary consult: canine and feline. John Wiley & Sons, 2015.
・大関好明, et al. 犬の実験的ヒキガエル中毒における臨床症状と病理学的所見. 日本獣医師会雑誌, 1991, 44.6: 616-621.
・ニホンヒキガエル 国立環境研究所 https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/40040.html 2023/02/16参照