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「麋角解(さわしかのおつる):サンタさんのトナカイの性別は?どんなホルモンで角は落ちるの?」獣医さんの歳時記
自由研究のヒント:冬になると角が落ちるのはなんでかな?
→骨量のバランスをとっている性ホルモンの動きに連動しているよ!オスシカは繁殖期が終わった後(冬)には性ホルモンが低下して角の根本を吸収する細胞(破骨細胞)が元気になって落ちるんだ。メスにもツノが生えるトナカイでは、冬の間は生えていて春になって性ホルモンが低下するタイミングで角が落ちるよ。だからソリを引いているのはメスのトナカイかも。
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12月27日から31日までは冬至の第二候、麋角解(さわしかのおつる)に入ります。
雄のシカのツノが落ちる時期という意味合いです。
麋という字は普段あまり使いませんよね。調べると「オオジカ」という意味だそうですが何を指すのかはっきりしません。weblio日中・中日辞典によると「ヘラジカ」という意味のようです。七十二候も中国から入ってきた文化のはずですが、中国にも日本にもいないヘラジカの字があてられているのは興味深いですね。
URL: https://cjjc.weblio.jp/content/麋
さて、日本に住んでいるシカも冬になるとツノが落ちます。
ツノも様々な種類があります。
主な種類は下記の通りです。
・洞角:骨が角の形の突起となっており、その周りを角上皮が覆っています。ウシ科にあり、オスメス両方が持ちます。角輪ができるので年齢を推定することができます。
・枝角:シカ科に特有です。例外はあるものの、基本的にはオスが持ちます。毎年生え変わり、繁殖期はオス同士がツノで戦います。
生え変わりはテストステロンというオスの体内に多く存在するホルモンと連動しています。血中のテストステロンが低下すると落角(らっかく)します。ニホンジカでは3月頃です。
七十二候は年末なので、実際のニホンジカの落角の時期とはずれがありますね。
動物好きなお子様のために、もう少し落角の仕組みについてみてみましょう。
テストステロンが下がってくると、破骨細胞という骨を溶かす作用を持つ細胞が活性化して角の根元が徐々に吸収されて落ちます。その後はまた骨を作る作用のある造骨細胞によって形成されます。
成長中は袋角というやわらかく中に血管の通った組織を形成しますが、発情期が近くと血流が止まって皮膚が剥がれ、かた〜い角が完成します。
さて、枝角はシカ科ではある例外を除いてオスのみが持つと述べました。その例外とはなんでしょう。トナカイです。なんとトナカイはメスも枝角を持ちます。
そしてオスとメスでは落角の時期が異なります。
オスは秋の繁殖期のあと、メスは春の出産のあとに落角します。
つまり冬に角があるのはメスのトナカイということになります。
一般的に出産後にはエストロジェンというホルモンが急激に減少します。エストロジェンは破骨細胞という骨を吸収する細胞を制御することで骨量を保っています。人間の女性では閉経すると骨粗鬆症になりやすくなることが知られていますが、それもエストロジェンが減少するために起こります。
メスのトナカイの落角はエストロジェン濃度に左右されているという調査もあります。
この研究ではエストロジェンの産生組織である卵巣を除去したメスのトナカイにホルモンを放出するインプラントを設置しています。卵巣除去されていないメストナカイと同じ濃度のホルモンを放出するインプラントを設置された個体では角が生成、維持されました。しかし秋にインプラントを除去すると通常は春に抜けるはずの角が初冬に落ちてしまう個体がいました。それにより、メストナカイではエストロジェンが角の生成と脱落に関わっていることが明らかになりました。
トナカイの角が抜ける手順なんて遠い出来事のように思えるかもしれませんが、女性は自分自身がいつか閉経後に起こること、男性では将来配偶者や子供達にも類似した現象が骨に起きると思うと身近に感じられませんか。
参考:
・村田浩一, 坪田敏男『獣医学・応用動物科学系学生のための野生動物学』, 文永堂出版
・Lincoln GA, Tyler NJ. Role of oestradiol in the regulation of the seasonal antler cycle in female reindeer, Rangifer tarandus. J Reprod Fertil. 1999 Jan;115(1):167-74. doi: 10.1530/jrf.0.1150167. PMID: 10341735.
・土屋徹, 芳賀靖彦, 鈴木かおり『大きな字の情景ことば選び辞典』, 2019
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