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猫の慢性腎臓病についてのあれこれ

『知り合いの猫が慢性腎臓病になってしまったのでうちの子もならないか心配。』
『昔飼っていた子が慢性腎臓病だったので、今から飼っている子に今のうちからしてあげられることってないの?』
『健診で腎臓が悪いって言われたけど、何かしてあげられることは?』

こんな悩みのある飼い主さんも多いのではないでしょうか?
確かに猫の腎臓病は非常に多いし、完全に避けることは難しいです。

だけど知識を持つことで可能な限り腎臓を長持ちさせてあげられるかもしれません。
特に重要なポイントは以下の2点です!

  1. 食事管理

  2. 十分にお水を飲ませること

慢性腎不全に対する理解を深めてもらいつつ、具体的にどんなことが腎臓を長持ちさせることにつながるのか書いていこうと思います。


<そもそも慢性腎臓病ってどんな病気?>

慢性腎臓病とは「慢性的(3ヶ月以上)な腎障害の存在および/または持続的な糸球体ろ過量の低下」として定義されています
…??何言ってんの?って感じかもしれないので、もっと簡単に言い換えてみると、

  • いろんな原因で腎臓がダメージを受けている状態

  • 腎臓が本来の仕事を十分にできていない状態

  • これらが一時的じゃなくて、何度か繰り返し検査しても持続的に存在している状態

言ってることはこんな感じ。

じゃあ腎臓の本来の仕事ってなんでしょう?

体の中の細胞は主に摂取したタンパク質から尿素などの老廃物を絶えず作っていますが、
これは体にとって有害なので体の外に尿として捨てなければいけません。

そこで、
腎臓は糸球体というところで血液のろ過(老廃物を尿として捨てる)を行ってくれています。

糸球体でろ過されたばかりの尿を原尿と言って、この中には生体に必要な成分(水分・電解質・ブドウ糖など)も含まれているので、次に送られる尿細管という場所で必要な成分を体に再吸収します。

そして再吸収されなかったものが老廃物の含まれた尿として体の外に排出しされます。

濾過(糸球体)→再吸収(尿細管)→尿として排泄
っていう流れです。

慢性腎障害ではこの老廃物をうまく体外に出せなくなっている状態です。

腎臓には他にも血圧・体液量の調節や、造血ホルモンの分泌など大事な働きをしていますが、今回そこまで知らなくても大丈夫なので、ここでは割愛します。

<食事で慢性腎臓病の発症は予防できる?>

残念ながら、完全に腎臓病を予防できる食事は存在しません。
病院で売ってる腎臓の療法食も、あくまで慢性腎臓病の進行を抑えるのが目的であって、発症を予防するものではありません

時々、検査で腎臓に全く問題のなかった子の飼い主さんに
「猫って腎臓病が多いって聞くし、若いうちから予防のために腎臓用の療法食を与えた方がいいですか?」って聞かれることがあるんだけど、
答えはNOです。

腎臓病用の療法食は慢性腎臓病になってしまった子の管理のために、タンパク質やリンなどを制限していますが、
これを成長期の子とか、健康な子に与えると栄養バランスが偏ったり、充分なカロリーを摂取できないことがあります。

だから療法食は必ず獣医師指導のもで必要な時に与えるようにしましょう。

基本的には年齢に合った総合栄養食で充分です。
それでも、少しでも腎臓に良い食事を与えたいと思う方に向けて、
具体的に食事と腎臓病の関係を見ていきたいと思います。

1)ウェットフード
お水の摂取が大事だよってのは後述しますが、充分な量の水分摂取は腎臓の負担を減らしてくれます。
食事に含まれる水分含有量は以下のとおりで、
ウェットフード:約75%
ドライフード:約10%
ウェットフードはドライフードに比べて水分がたくさん摂取できるので、特に普段自分からあまり水を飲んでくれない子にはオススメです!

2)オメガ3脂肪酸配合
オメガ3脂肪酸は腎臓を含め様々て色々なところに効果があると言われていいますが、
実際にはオメガ3脂肪酸が腎臓病を予防するという確たる根拠はないとも言われています。
2つの食事で迷った時に、入ってないものよりは入ってる方を選ぼうというくらいのスタンスで充分なのかもしれません。

3)太り気味ならダイエットフード
ダイエットって急に腎臓と関係ないことを…
そんなことはありません!
実は太っている猫は膀胱結石・膀胱炎になりやすいということが知られていて、これらは時に腎臓が悪くなるきっかけとなることがあります。

例えば、
尿管結石で急性腎不全になってしまって、なんとか手術で取り除けたんだけど、腎臓にダメージが残って慢性腎臓病になってしまうとかは珍しくなありません。

もちろん他の病気になってしまうリスクも高くなります。
慢性腎臓病は比較的高齢の子で罹患することが多ので、他の疾患との兼ね合いも予後に大きく関わってきますが、日頃から体重管理をしておくことで、他の基礎疾患を予防しておくことも重要です。


今は色んなペットフードがインターネットで購入可できるようになりましたが、自己判断で決めず、気になるフードをいくつかピックアップして獣医にその子に適した食事かどうか確認してもらうのがいいと思います。

<お水の重要性について>

猫の祖先は元々砂漠に生息していたので、元々あまりたくさんのお水を飲む動物ではありません。
けれどあまりお水を飲まないとおしっこが濃くなり、腎臓に負担がかかってしまい、腎臓の寿命が短くなってしまいます。
だから飲水量には気をかけてもらいたいんだけど、どうやって気に掛ければいいのでしょうか?

☆今どれくらい飲んでいるかどうやったらわかる?

  • ペットボトルから水を注いで、1日にどれくらい減ったかを測る

  • 器に入れる前と、次に水を入れ替える時の水の量を計量カップで測ってみる

  • 目盛り付きの器を使ってみる

こういった方法で測ってみることができます。
あとは食事に含まれる水分を足したら、その子の1日の水分摂取量がだいたいわかります。
→ウェットフード:約75%
→ドライフード:約10%
例)ドライフード20g/ウェットフード50gを1日で食べている場合
20gの10%で2ml、50gの75%で37.5ml⇨合計39.5ml

☆実際どれくらい飲んでればいい?

体重(kg):お水の量(ml)
2kg:約140ml
3kg:約190ml
4kg:約240ml
5kg:約280ml
6kg:約320ml
8kg:約400ml
10kg:約470ml
大体で大丈夫ですが、この量と今実際の水分摂取量との間に大きな差があるようなら、もっと水分を摂取してもらう努力が必要かもしれません。

☆どうやって不足分を摂取させたらいい?

正直これは簡単じゃなくて、色々と工夫する中でなんとかお水を飲んでもらえるようにするしかありません。
いくつか工夫のポイントをお伝えできればと思います。
point1)常に新鮮なお水が飲めるようにする
注いで時間の経過したお水や、毛が浮いたお水などを嫌がる子がいます。
1日1回ではなく、複数回お水の交換をしてあげましょう。
point2)水のみ場所を変える/増やす
猫にはその子それぞれのお気に入りポイントがあって、
食事する場所の近くや寝床、落ち着ける場所の近くなど複数カ所に設置してみると、お気に入りの場所で飲んでくれることが期待できます。
point3)流水にしてみる
置いてある水はあまり飲んでくれないのに動くお水はよく飲んでくれる子もいます。
循環式の水入れもあるので試してみると良いかもしれません(その場合、汚れを取り除いてくれるフィルターがしっかりしたものを選びましょう)。
point4)器を変えてみる
場所と同様、器の好みにうるさい子もいるようです。
今は様々な材質や大きさ/高さ/形の器が売られてるので、色々と試してみましょう!
point5)ドライフードからウェットフードに変更してみる
上述の通り、ドライフードとウェットフードでは水分含有量に大きな差があって、
ドライフードをお湯でふやかして与えるのもアリだけど、ふやかすと食べなくなってちゃう子もいるので、気に入らないようであればすぐに戻してあげましょう。

<早期発見のために見逃したくないサイン>

覚えておきたいポイントは2つ。

  • おしっこの量が増えた

  • お水を飲む量が増えた

腎機能が低下していくと、おしっこを濃くするための再吸収が上手く出来なくたって、薄いおしっこがたくさん出るようになります。
そしておしっこの量が増えて水分がたくさん出て行けば、脱水しないように水を飲む量も増えていきます。

おしっこの量はトイレ掃除の時に猫砂の塊の大きさで増えたかどうかわかることが多いかと思います(塊にならないタイプの猫砂もあります)。
最近ではアプリと連動してトイレに入った回数、おしっこの量、ウンチの量、体重などを教えてくれる便利なトイレなどもあるみたいです。

猫が1日に飲む水の量は正常で体重1kgあたりだいたい50ml以下くらいなことが多いので、これを大きく超えるようなら病的な多飲かもしれません。

おしっことお水の量が増える病気は他にもあるので、普段のだいたいの量を把握しておくことがすごく重要です。

<まとめと最後に伝えたいこと>

1つ最後に伝えたいことがあります。
それは『なんだかんだで1番大事なことは定期的な健康診断をする!』ということ。
もちろん今まで書いてきたことも普段の生活の中で愛猫を長生きさせてあげるために重要な知識だけど、
それでもやっぱり動物病院での健康診断に勝てるものはありません。

「元気なのに連れて行くのがかわいそう」
「ストレスになるので検査は受けたくない」

気持ちはすごくわかります。

だけど健診はそもそも一見健康に見える子の隠れた病気を見つけるためのものだし、一般的には健診でそこまでストレスのかかる検査は行われません。

早く病気を見つけてあげるメリットの方が大きいと思いませんか?
最近では昔にはなかった、早期に検出できる腎臓マーカーなんかも測定できますし、できれば定期的な健康診断を受けられることをお勧めします。

では本当の最後に今回の内容をまとめてみたいと思います!

  • 食事管理は大事だけど、健康な子に療法食を与える必要はない!(むしろ体に悪い)

  • 健康ならその年齢に合った総合栄養食で大丈夫!

  • 腎臓を守るために新鮮なお水を充分に飲ませよう!

  • 十分な水分を取ってもらうためにいろいろやってみよう!

  • お水、おしっこが明らかに増えてきている時は病気の可能性を考えよう!

最後まで読んでくれてありがとうございました!

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