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通話アプリで出会った男の子の話

相手と繋がる前の0.何秒かの無音。
それであっ繋がるなと分かる。
「もしもーし」
相手の第一声で、相手の目的を読む。
変に高いテンションでもなく、抑揚薄く平坦なもしもーしってことは1人で暇つぶしだと予測する。

「君いくつ?どこ住み?」
初っ端からの相手への関心が強すぎる人はだいたい出会い厨。そーゆー人は、相手の話をぶった斬って質問してくるから、ちょっと切なくなる。あと、「このアプリって変な人多いよね?」って言う人は下ネタにもってこうとする人。波長の合う人だと勝手に会話が弾む。


その日はやけに自分語りをした日だった。
何を話したかは覚えていない。その男の子は私の話しにふーんとかへーんとか相槌をしながら時々「面白いですね」と言ってくれた。それが私の話しに対してなのか、私という人間なのか、はたまただの皮肉なのかは定かでない。

通話アプリとは無常なもので、一度話せば二度目に話すことはあまりない。利用者の主な目的は暇つぶしなわけで、自分の話すことに対してそれなりのリアクションがあれば、相手は誰だっていい。もちろん1日経てば誰と何を話したかは憶えていない。それでも、私がほぼ無意識的にそのアプリを開き、誰かと話しするのは、多分、誰かと分かりあいたいとか、認められたいって気持ちがあるからだと思う。

 大学生のその男の子が他の男の子と違ったのは、通話後であった。そのアプリには、メッセージ機能があり、次の日、その子からメッセージが来ていることに気づく。開けてみると、画面いっぱいのメッセージであった。内容は、昨日話した私の話しに対しての感想のようなものだった気がする。風が吹けば消えちゃうような関係性の中で、時間を割いて自分にその長文を打ってくれた、その行動は率直に嬉しかった。もちろん、私もそれに対して長文でメッセージを返した。そんな彼との文通にも似たメッセージはしばらく続いた。 
私の考えや人柄に対して肯定的なリアクションをしてくれる彼のおかげで、あることに気づいた。「自分の内面を肯定されるってこんなに嬉しいんだ。」と。
人には、試験や学歴では推し量れないそれぞれの能力があって、時にそれは評価困難で、でもそれはその人らしさを形づくる大事な要素だ。私の場合、それは内向的で物事を深く考えようとする姿勢だった。その片鱗を彼に見せたとき、それが認められた気がして、言わば承認欲求が満たされたのだった。自分を認めてもらう経験って、ありそうでなかったと気づく。そんなことを、通話アプリで出会った彼に教えてもらったのだった。

そして、それをきっかけに、もっと自分の考えを発信して認められたいと考えるようになり、noteを始めたのであった。

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