うつ病彼女と付き合うヒント★LINE編Another Story B
「ふわぁぁぁーーー………っっ」
あくびした。
「眠いんですか?寝てください」
「うん、そのうち寝るよ」
ガサゴソガサゴソ…布団を動かす音がした。
「お布団インーーーー。」
「はいはい。」
「明日はめんどくさい会議があるよ」
「適当にしとけば良いんじゃないですか?」
「多分意見求められるんだよねーー、人間関係考えるとめんどくせーーー」
私の方がうつ病で辛いんですけど、何故アナタの愚痴聞かないといけないんですか???
適当にアドバイスしながら、話しているうちに、会話のペースが遅くなる。
「じゃあ、その指示役の人にはっきり言えば良いじゃん?」
「…………、んん?……うーーん」
そのうち、
「……………っぐ、……………ぐぅぅぅーーーーっ、……………ぐぅぅぅーーーーっ、……………ぐぅぅぅーーーーっ、………」
寝てるやんけ。
自分から通話してきたくせに寝てるじゃん。
昼間普通に働いてて疲れてる人を起こすのも悪いので、通話を切ろうと思った。
けど、無防備にも人前で寝ている、そのいびきを聞いていると、何故か、ほっとした。
一定のリズムで鳴るいびきを2時間ほど聞いていた。
まるで変態である。
そして、私もいつの間にか寝ていた。
次の日の夜。
何もできない日々がいつまで続くのか分からない。明日もきっと、こんな感じだろう。自分の未来が潰れていく感覚がしていた。
一寸先は闇、とか言うけど、果てしなく闇が広がっている気が、
ピコーン♪
「_(┐「ε:)_」
また、オマエか。
「なんですか」
「起きてた」
「寝てまーす」
タタタタタタン♪(LINEの通話呼び出し音)
いやー、なんなんすか???
「寝てまーす」
「起きてるじゃん」
「もう、ぐっすりよ!」
「ぱっちりおめめの女の子♪(きゃりーぱ○ゅぱみゅさんの曲)」
「つけまーつけるー♪」
「今日は化粧した???」
「してみたけど、外に出てない」
「俺がいるよ!」
「仕事やんけ」
「そうでした」
どんだけ暇なの?こんなうつ病女どうでもええやろ。
「会議はねー、1時間遅れではじまってさー」
いや、どうでもいいです。
昨日から重ね重ねで申し訳ないけど、本気でどうでもいい話です。
そうこうしているうちに、
「まぁ。よかったじゃん、とりあえずは分かってくれて」
「………んん、…そう……」
おや?このパターンは?
「……………っぐ、……………ぐぅぅぅーーーーっ、……………ぐぅぅぅーーーーっ、……………ぐぅぅぅーーーーっ、………」
寝てるやんけ。
切るかー。
そう思ったけど、一定のリズムで鳴るいびきを何故か聞いていたかった。
落ち着くのだ。
そのまま、昨日と同じく2時間ほど聴いて、いつの間にか眠っていた。
毎日通話がかかってくるようになって、2週間過ぎた頃に気がついた。眠れなかったのに、3、4時間はまとめて睡眠が取れていることに。
そして、気が付いた。
彼は、私の不眠の苦痛を和らげるために、仕事で疲れている中、毎日通話をしてくれていることに。
夜、布団の中で。文字を打つ。
「毎日通話ありがとうね」
ついに、伝えた。
ピコーン♪
「なにが?」
「眠れないって言うから、毎日わざわざ通話してくれてるんでしょ?今頃気づいたよ、ごめん」
ピコーン♪
「暇。」
タタタタタタン♪(LINEの通話呼び出し音)
「はい」
「暇だからさー」
「子守唄歌ってやろうか?」
「やだー、まだ寝たくないー」
「どんどこっ、どんどこっ、どんどこよー♪」
「どこの子守唄すか?」
美しい人だと思った。
2週間。
私の目はなまくらだった。
頭の中で音楽が鳴っていた。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
どこまでも穏やかな色彩に彩られた
一つの風景画の中
寄り添うように時を止めて欲しい
永遠に
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
歌の後、フェンダー(ギター)の音が高く響いた。
某ヴィジュアル系アーティストの曲が
頭の中で流れていた。
そうだ。
彼の中には、どこまでも穏やかな色彩が広がっている気がした。
外見は無機質だが、その内面には、どこまでも穏やかな色彩が。
ピンク色というよりは、
セピア色みたいだと思った。
この恋は。
次回は、LINE編③をお送りします。