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なぜ僕らは甲子園に熱狂するのか? 高校球児から学ぶベンチャー企業のススメ

2019年、夏の甲子園。毎年数々のドラマを生み出してくれる甲子園の時期もいよいよ佳境を迎え、今年も我々は熱狂に包まれています。常々思いますが、甲子園の熱狂は少し他のスポーツへの熱狂と一味違います。

甲子園とは高校球児にとって、まさに「野球が好きな少年の時代」から「プロとして歩む覚悟を決める時期」への過渡期。様々な夢やドラマが渦巻いている様子は、さながらベンチャー企業の勃興の世界のようです。

今回は2019年夏の甲子園に寄せて、甲子園のドラマとベンチャー企業共通点や人材について真面目に考えてみます。

2018年、金足農業VS大阪桐蔭から見えたもの

甲子園ファンもそうでない方も記憶に新しい、2018年夏の甲子園の「金農旋風」。金農旋風という言葉がwikipediaに記録されるほど大きな話題となりました。

第100回の記念大会で、優勝候補である名門・大阪桐蔭と決勝戦で当たったのは秋田金足農業高校。秋田県勢が夏の甲子園の決勝の舞台に上がるのは実に103年ぶりであり、秋田県民だけでなく全国が注目しました。

一方それを迎え撃った大阪桐蔭。選手は全員、超が5回はつく野球のエリートです。ネットでは一時、大阪桐蔭の選手たちの経歴と金足農業の選手たちの経歴を比べた画像が大きな話題になりました。

上の画像はこの二つのチームを比較するときによく用いられた画像です。戦車は大阪桐蔭、トラクターが秋田金足農業……非常に象徴的で話題になったのを覚えています。

突然ですが、スタートアップの企業は金足農業タイプ大阪桐蔭タイプに大別されます。

金足農業タイプ:若く、まだ実績はないが結束の固いチーム。中心メンバーが「面白いこと始めよう!」と声をかけて集って何かを始める。

大阪桐蔭タイプ:目的に沿って集まったエリート集団。それぞれの実績が圧倒的なため、そもそもの組織の基礎能力が非常に高い。

金足農業は甲子園に行ったメンバーを中心に「野球しようよ!」と声をかけて出来上がったチームだというのは有名です。一方大阪桐蔭はかねてからの超強豪校。そこには「甲子園に出たい!プロになりたい!」という強い意志を持った学生たちが実績を引っ提げてやってきます。この構図、まさにスタートアップで会社が始まる二つのルートにそっくりです。

強豪校ひしめく夏の甲子園に挑むのは並大抵ではありません。そこで一位を取るにもまた淀みない結束が必要なのは必定。そう。夏の高校野球はまさにベンチャー企業に所属する人にとって最強に感動できるイベントなのです。

強い野球チームに必ずいる、「CEO」「COO」「CFO」の存在

語り尽くされてきた話ではありますが、夏の高校野球には魔物が住んでいて、単に強い選手を寄せ集めただけで勝てるという訳ではありません。選手たちは甲子園のために何ヶ月、チームによってはそれ以上の期間にわたって共同生活を行いながら研鑽を積みます。

野球がチームプレイのスポーツである以上、この団体生活・集団行動というのは避けては通れない課題です。多くの選手たちが耳にタコができるほど「チームワークを大事に!」「チームメンバーは家族!」と言われているはず。チーム意識はどこの高校であれ一流なはずです。

では、どこでチームの強弱が生まれるのでしょうか? その答えを僕はこのように考えています。

強い野球チームは強いベンチャーと同じく、突出した能力を持つCEO、COO、CFOが存在するのです。主にベンチャー企業で、これらの役職はこのようなことが求められていると考えられます。

[ベンチャー企業のCEO、COO、CFO]
CEO:最高経営責任者。スター性・カリスマ性や強い影響力が求めれる組織のトップ。
COO:最高執行責任者。CEOの想いを形にし、マーケティングや営業の現場などを実際に動かし責任を取る人。
CFO:最高財務責任者。キャッシュフローやお金の動き、裏側の利益に関することに責任を負う人。

では野球チームに置き換えてみるとどうなるでしょうか。

[野球チームのCEO、COO、CFO]
CEO:リーダーシップとカリスマ性を備えたスター選手。オールマイティに多くのことをこなしながらも一つの突出した能力を兼ね備えた逸材。
COO:戦略などに強い頭脳は選手。一時の局面だけでなく多くを見渡し、チーム全体のことを考えながら動けるマルチプレイヤー。
CFO:優秀なマネージャー、チーム全体を裏側から支える。表に出てくることは少ないがその選手がいないと絶対に回らない縁の下の力持ち。

極端なことを言えば、ベンチャー企業ではまずこの三人が揃っていればスタートの段階はなんとかなります。ここからいかにしてその才能を引き立て支えいい影響を与え合うことのできるメンバーを集めるかにかかっているといっても過言ではありません。

それでは、それぞれの資質について触れながら歴代の名選手たちを振り返っていきましょう。

CEO:カリスマ・スターなピッチャータイプ「松坂大輔」「田中将大」

CEOとは会社の中心、強い意志と求心力を持って周りを動かしていくカリスマです。何より必要なのはリーダーシップ。引っ張っていく力。そして裏側に見える本人の圧倒的な努力です。

強い野球チームには少なくともこのCEOタイプが絶対にいます。メディアで注目されることも多く、ドラマを持っていますが、ただそれだけではなく努力が伴い周りを引っ張っていき結果を出すこともできる。

CEOタイプはすなわち「もっとも結果を出せる人」です。あなたの周りに、松坂大輔選手や田中将大選手のような人材はいませんか? きっとCEO向きなはず。

松坂大輔選手
人呼んで「平成の怪物」。ドラマティックな挫折なども経験し、日本のトップ選手にまで上り詰める。

田中将大選手
天性の強肩を生かし、駒大苫小牧高校を連覇に導いたカリスマ。楽天→ヤンキース移籍後も注目を集め続ける選手。

COO:戦略の要を担う名キャッチャー「古田敦也」「谷繁元信」

CEOをピッチャーとするのであれば、その思いを全力で受け止め、そこから一瞬の判断を行い球の送り先を見定めるCOOはキャッチャーのようなもの。

名CEOには必ず名COOがいます。スティーブ・ジョブズ時代のAppleに置けるティム・クック。クラウドワークスの成田修造氏。脚光を浴びやすいのはCEOですが、全体の執行を任されるチームの要として、キレる頭と基礎力が求められる重要なポジションです。

古田敦也選手
高校三年間は無名の選手だったものの、ヤクルト入団後に捕手としての才能が開花。全体を見渡せる戦略的捕手として有名に。

谷繁元信選手
最初は投手として入部したものの、後に捕手に転向。金メダルをとったWBCにも出場していた名捕手。甲子園でもベスト8の戦績。

CFO:チーム全体の利益について思い巡らせるマネージャー、「加藤瞬」

野球チームにおける優秀なCFOはどこにいるのか。もしチームに優秀なマネージャーがいたら、その人がCFOです。

2015年夏に優勝した東海大相模には熱い「男子マネージャー」がいました。裏方として、取材陣にスポーツドリンクを配るなどの徹底した配慮を持ち、時に主将以上の働きをしていたと話題に。毎年夏の甲子園では美人女子マネージャーが話題になりますが、マネージャーとしての仕事は想像以上に激務です。

コーチとの打ち合わせ、部活の予算などの管理、選手の健康面への配慮、備品の管理、練習試合の手配……並大抵の精神力ではできない”強い裏方”であることが大切です。ベンチャー企業でもCFOは表立ってプロダクトに関わることはありませんが、その人がいないと会社が回らないのは確かです。強いチームには間違いなく、裏側を支える強い人材が存在します。

加藤瞬主務
2015年優勝校の東海大相模のマネージャーを務め、東海大の主務に。徹底した気配りとマネージャーとしての強いプライドが話題になった。

人事:周りの選手をよくわかって動けるプロフェッショナル、「黒川史陽」「中川卓也」

2019年、夏の甲子園をもっとも沸かせた選手の一人、智弁和歌山高校の黒川史陽選手。まだ高校三年生とは思えないほどのリーダーシップを放ち、強い気持ちでチームを引っ張っていたのが印象的でした。

さて、先ほどあげたCEO・COO・CFOタイプとは異なりますが、ベンチャーでもっとも大切な採用の部分を担う人事には、CEOとはまた別のカリスマ性が必要です。

人事は会社の中でもっとも「個人の振る舞いを通しチームの評判をあげること」、「粘り強く挑める点が必要」なポジションです。智弁和歌山高校の評判ごとあげた黒川選手はまさに「人事タイプ」です。

もうひとり人事タイプを挙げるとすれば、2018年大阪桐蔭の主将を務めた中川卓也選手。常勝軍団と呼び声の高い大阪桐蔭を見事にまとめあげ、注目を集める試合の中でも采配を持ち続けました。

黒川史陽選手
智弁和歌山高校三年、二塁手でありながらプレーの美しさやリーダーシップで非常に注目を集めた選手。2019年夏の甲子園のスターの一人。

中川卓也選手
100回大会での大阪桐蔭優勝時、笑顔を見せるチームメンバーの中一人号泣していた姿が話題に。重圧に耐えながらチームを支えた名将。

広報:華があり、野球そのものへ人々の興味を引き込む「清宮幸太郎」

もう一つベンチャーで重要なポジションといえば広報。まだ無名な小さな会社こそ必要とされる広報活動の担当者は、華があり、魅力を伝えるのが得意な一方、地道で真面目な部分も必要です。

ストーリーテリングに長けていることも重要な資質です。魅力を伝え、興味を引き込むことができるのは重要な才能。

甲子園の名選手の中で向いていそうなのは、清宮幸太郎選手。三年次、主将として行った選手宣誓の冒頭「私たちは野球を愛しています」という言葉は野球ファンにとってもそうではない人にとってもたまらない一言でした。このような”華やか”でもあり”質実剛健”でもある選手は間違いなく広報向きです。

清宮幸太郎選手
早稲田実業高校一年生から期待の選手として三番一塁手に。「和製ベーブ・ルース」として国内外から注目された。華やかな経歴と地道な努力が大きな話題に。

高校球児たちがなぜベンチャーに向いているのか

ここまで長く高校球児たちを例にあげながらベンチャー人材としての資質について語ってきました。しかしながら僕は総じて高校球児はベンチャー企業向きの人材であると思っています(本人が望むかはまた別の問題ですが……)。

甲子園の最大の魅力は、「負けたら終了、後がない中一回一回の試合に全力投球」「相手が強豪でも無名校でも、とにかく全身全霊。手を抜かない」「チームで乗り越える強さ、絆、結束(泣ける!)」この三つだと思っています。

どうでしょうか。ベンチャーっぽいと思いませんか?

ベンチャー採用に携わる人がまず求職者に対して気になる点は様々ですが、主に共通しているのは以下の通りです。

最後まで諦めない粘り強さ
 最初から最後まで徹底的にこだわり抜く。VERTEXグループの「Move Extremely

全身全霊で挑んだ経験がある
 プロフェッショナルとしての自覚。メルカリにおける「Be a pro

チームプレイ、チームで乗り越えることに慣れている
 一人だけでは出ない成果を追い求める。グッドパッチの「Play as a Team

この辺りの考え方は多くのベンチャー企業に共通しているものです。ベンチャーの経営に携わったことのある人、ベンチャーのメンバー、これから入る人にはぜひ甲子園の試合を見て欲しいと力説したくなったのはこれをお伝えしたかったからです。

まとめ:なぜ僕らは甲子園で血が騒ぐのか

使い古された表現ですが、大人になってからも甲子園球児たちの頑張る姿に自らの思いや人生を投影する人は多くいます。僕自身その一人です。ベンチャーにジョインし、そこで生きる覚悟やチームを作ることを重ね合わせながら甲子園の試合を見ていると本当に胸が熱くなります。

実は今回僕がこの記事を書いたのは、高校野球大好きな上司からいろいろなエピソードを教えてもらったからです。「なんだかベンチャーっぽい」「ベンチャーでのワクワクに似ている!」と思い立ち、言語化するためにこの記事を作成しました。

もしこの記事を見て血が騒ぐのであれば、あなたもきっとベンチャー向きの人材です。高校球児たちが頑張る夏。あなたも血湧き肉躍るような業界へ足を踏み出してはいかがでしょうか。


▼筆者が所属する株式会社VERTEXグループに関する記事はこちらで読めます。


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