MAIL MAGAGINE Vol.46
<2023年6月28日配信 / ワインの紹介>
平素よりVERTをご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。
店主の6月後半は、来客多し、イベント多し…で、胃痛からの顔に発疹という難儀な状態になりました(涙)。久しぶりに、1週間以上アルコールを抜き、肉ちょっぴり野菜多めの食事、カフェインも控えて早寝しています。早く治りますように!
夏本番を前にして、ワインと食品が色々と入荷しております。
ワインはちょっとご無沙汰していたフランスから、食品はイタリアから、人気の商品や新しいものも。
メルマガでご紹介しきれないほど、ワインも食品も入荷していますので是非オンラインショップをチェックしてみてください!
今回も最後までお付き合いくださいね。(店主 味岡)
フランス、アルザス地方から涼やかなワインが届きました。
Domaine Fischbach ドメーヌ・フィシュバック
フランス、アルザス地方。
第二次世界大戦の直後に祖父母が植えた古い葡萄畑を持続可能な方法で守り、次世代に繋ぎたいと現当主ジャン・ドレフュスが立ち上げたドメーヌです。
ドメーヌ(Domaine)とは、葡萄畑をもち、ワイン醸造・生産をするワイナリーを示すフランスの言葉。
1584年からの歴史あるドメーヌ・フィシュバックですが、フランスが経済優先に舵をきったこの半世紀、一族はドメーヌの継続は困難と判断してワイン醸造を中止し、葡萄畑は貸し出していました。
それから長い間「ドメーヌ」としては機能していなかったフィシュバックですが、現当主ジャン・ドレフュスがフランス、ブルゴーニュで醸造を学んだ後、オーストラリア等で経験を積み、満を持して帰郷。契約期間の終了で返却されてきた畑を自ら手入れして葡萄栽培を行い、ワインを醸し、ドメーヌとしての再出発を果たしました。
再出発にあたってジャンが選択したのは「ナチュラルワイン」。
代々続く家族の歴史を、永く持続可能なかたちで次世代に繋ぐための選択です。
畑では化学肥料や除草剤などを用いず、ビオディナミを取り入れた有機栽培を実践。
グラン・クリュを含む、葡萄畑の広さはなんと4ha!そして、その畑は21もの区画に分かれています。
小さな区画はわずか2aほどの面積しかなく、多種多様な土壌、立地、そして品種があり、それを有機栽培で管理することの大変さ…!
ワイン造りでは、自然酵母による自発的な醗酵を待ちます。
人の都合で味わいを調整するための添加物の類も一切使用しません。
酸化防止剤としての亜硫酸塩を必要と判断したときは使用しますが、近年は添加しないワインが多くなってきました。
家業を継ぐとしても、近代的な農業と醸造設備で利益を追求するやり方もきっと選択できたと思いますが、そうせずにナチュラルワインの道を選んだジャン・ドレフュスの人柄がワインにきちんと表現されています。
昨今流行りのナチュラルワインにありがちなうわつき感など微塵も感じさせない、真っ直ぐで1本筋の通ったピュアで力強い味わい。
ナチュラルワイン好きにも、そうでない人にも、おすすめしたいワインばかりです。
Crémant d’Alsace Brut NV
クレマン ダルザス ブリュットNV
私の夏の必需品、安定感抜群のピュアなクレマン!
(クレマンはフランス語でスパークリングワインの意味)
近年、アルザスの自然派ワインの造り手たちでは定番になりつつある『糖分及び酵母添加をしない瓶内二次発酵』のクレマンです。
瓶内二次醗酵(シャンパーニュ方式)では、泡を造り出すのに瓶内で2回目の醗酵をします。
一般的には、2回目の瓶内醗酵の際、白砂糖などの糖分と安定した醗酵を促すために酵母を添加して行いますが、こちらのクレマンでは収穫した葡萄果汁を添加するのみ。醗酵は自然に任せて行われます。
昨今流行りで巷に溢れる「ペットナット(Pét-Nat)」。
ペティアン・ナチュレル(Pétillant Naturel)の略語で、微発泡性のスパークリングワインです。
ナチュラルワインの造り手に人気で、世界中で生産されるようになったので、みなさんも見かけることがあると思います。
こちらは「田舎方式」という最も原始的な方法で、醗酵途中のワインをボトリングし、瓶内で進む醗酵により発生した泡をワインに閉じ込めます。
一見、シンプルだし、自然派ワインらしくて良いんじゃない?と思いますが、その実、熟練のテクニックが必要なんです。
醗酵の状態を見極めてちょうど良いタイミングで瓶詰めしないと、瓶詰め後の醗酵が強すぎた場合は、いくら王冠で栓をしていても輸送中に噴き出したり、最悪の場合、ガス圧で瓶が割れたりします。逆に醗酵が弱かったり、瓶詰め後に進まなかったりすると、泡がない場合もあります。
それ自体を悪いと決めつけるつもりはないんですが、できれば安定して発泡してて欲しいし、ワインとしてきちんと成熟したもの(醗酵がきちんと行われたもの)を飲みたい、と私は思います。
なので、こういった微発泡性のワイン(ペットナット、フリッツァンテ)を扱う場合は、私は昔からそういった造り方をしてきた地域や造り手のものを仕入れるようにしています。
それでもたまに、開けてみたら泡がないとか、逆に冷やしても噴き出すとかあるので、必ず試飲もしています。(抜栓時に注意事項があれば、お伝えしています。)
こちらのクレマンではそういった”当たり外れ”がなく安定して発泡していますし、ナチュラルな瓶内二次醗酵ですので、心地良いきめ細かい泡、ピュアな果実の風味と長い余韻を楽しむことができます。(糖分や酵母を足したシャンパーニュ方式では、それらの味わいで繊細な果実の風味がマスキングされがちです。)
2つの有機栽培された白葡萄、シャルドネとオーセロワのブレンドは爽やかで程よいコクがあり、これからの季節にぴったりです!
夏の休日用にストックしておいて間違いなしの1本です。
Suff'Hic Blanc 2020
スフィック・ブラン 2020
スタンダードクラスのシリーズ「スフィック」の白ワインです。
「スフィック」とは、アルザスの言葉で”ぐびぐび飲めちゃう”というニュアンスです。
その名の通り、あまり気取らずにサクッと飲めるカジュアルなシリーズなんですが、実は2020年ヴィンテージのこのワイン、輸入元に3回目の入荷ということでかなり私の好きなコンディションになっていました。
以前に感じた荒削りな酸や果実味がまろやかになり、熟成による香ばしさが生まれ、全体的にグッと深みのある味わいになっています。
カジュアルライン、若飲みシリーズといっても、やっぱりこれくらい熟成させてあげると良いよね…というお手本のような1本です。
これが最終ロットになるそうですので、是非ご賞味くださいね!
Cosmik(18-19-20)
コスミック (2018,2029,2020)
2017年までは、伝統的な製法で醸造・瓶詰めしていた、グラン・クリュ(特級畑)「アルテンベルク・ドゥ・ベルグビテン」のリースリングのみを使用し、マルチ・ヴィンテージで醸造・熟成させたワインで、フィシュバックのフラグシップとなる1本です。
これを知ったとき、なかなか勇気のいる決断をしたものだと感心しました…。
アルザス地方のグラン・クリュ(特級畑)といえば、誰もが手に入れられるわけではない数少ない貴重な区画。1584年から存在するドメーヌ・フィシュバックだから所有できる畑といえます。
現在では温暖化の影響もあり、フランス北部のアルザス地方でも葡萄がよく熟するようになりましたが、その昔は寒さが厳しく難しい地域でした。
そのなかで、日当たりと土壌、その場所にある葡萄の個性を最高に表現できる条件を備えた特に優れた区画とされたのが「グラン・クリュ」です。
通常通りに醸造・瓶詰めしてリリースすれば、それなりの値段で販売できます。
それをせず、2018年、2019年、2020年と収穫ごとに継ぎ足しながら醸造・熟成をしていく、いわば「シェリー酒」で行うソレラシステムを取り入れて、マルチヴィンテージで仕上げて瓶詰めする勇気たるや…。
とはいえ、以前よりも更にナチュラルでピュアなワイン造りに傾倒する今のジャン・ドレフュスにとっては、当然の選択だったかもしれません。
貴重なグラン・クリュの葡萄では醸造の失敗は許されない…必然、”伝統的なスタイル”で醸造することになり、酸化防止剤(亜硫酸塩)の添加は免れない。
それなら、いっそのこと「酸化熟成」することで酸化防止剤の添加なしで造ってみよう。
しかし、1ヴィンテージだけでそれをした場合、味わいのバランスをとるのが難しく、それだけで瓶詰めできるまで、ジュラのヴァン・ジョーヌのように非常に長い時間がかかってしまう。しかも、出来上がっても独特の風味が強く、シチュエーションや食事を選ぶものになる。
そこで若いワイン(次の収穫年の葡萄で醸造したワイン)を足すことで味わいのバランスをとり、状態が良いと判断したところで瓶詰めすれば良いのでは?
そんなジャンの思考が目に浮かぶようです。
一見すると特異な造り方のようですが、実はかなり古くから行われてきた製法です。
マルサラの原型、イタリア、シチリアのデ・バルトリ家が造る「ヴェッキオ・サンペーリ」
シャリーの原型、スペイン、アンダルシアのトロ・アルバラが造る「モンティーリャ・モリレス」
マルサラもシェリーも、地元から遠く離れた場所に運搬するために、酒精強化(高アルコールの酒を足して醗酵を人工的に止める)していますが、もともと現地で飲まれていたのは、ポテンシャルの高い白葡萄を使ってマルチヴィンテージで造られた、れっきとした「ワイン」でした。
今のように酸化防止剤のない時代、酸化のリスクを減らし、風味豊かなワインをできるだけ長く安定して提供するための古人の知恵。
そこに着目して挑戦したジャン・ドレフュス氏は本当に素晴らしい造り手だと思います。
前置きが長くなりましたが、で、肝心なお味はというと…非常に残念ながらここ最近、体調を崩してしまい、試飲できておりません!!(涙)。
とはいえ、葡萄の質、醸造面から察して、間違いのないワインだと思いますし、私が今一番飲みたいのは、このワインです!
輸入元代表のコメントから。
「シェリーの熟成法で知られるソレラシステムと同様の熟成を経たこのワインは、さすがグラン クリュと思わせてくれる高いポテンシャルのビシッとしたミネラル感を軸に、若々しくフレッシュな果実味とほのかに感じられるシェリーのような熟成香が同居したユニークなバランスのワインに仕上がっています。
一方で、甘い雰囲気やリースリングの特徴とされる石油香は感じられず、みずみずしさと荘厳さを感じさせてくれるテンションの高いワインという表情もあります。まさに大地に備わった力と人の叡智が高次元で結びついた素晴らしいハーモニーを聞かせてくれるワイン。じっくりと楽しんでいただきたい1本です。」
こういったワインは、赤ワインの代わりに、メインのお料理とも合わせられますので、赤ワインがちょっときついなぁという夏場の2本目のワインとしてもおすすめです。
もちろん抜栓後も非常に安定しているので、ゆっくりと楽しめて結果的にお得なワインとも言えます。
グラン・クリュの葡萄を使い、3年以上の時間をかけて醸された貴重なワイン、是非ご賞味ください!
<食品の紹介記事に続く>
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