美容×テクノロジー! スタートアップトレンド【イベントレポート】
2019年6月13日に東京都の創業支援施設Startup Hub Tokyo(スタハ)にてセミナーイベント「スタートアップ・トレンド」が開催されました。今回のテーマはBeauty Tech。テクノロジーを利用した美容ビジネスモデルの紹介や、今後の美容マーケットについての熱い話がなされた当日の様子をレポートします。
みなさんは2018年が ビューティーテック元年と称されていることをご存知でしょうか?
実は今日本では、美容にテクノロジーを取り入れたスタートアップやイノベーションが数多く誕生しています。またグローバルな観点から見ても、日本の美容業界は、世界中から大きな注目を集めています。
そんな大きな過渡期をむかえる美容業界について、第一線で活躍する三名の方から貴重なお話を伺いました。
■日本の美容ビジネスモデル概況(柳延人)
まず登壇したのはメイクアップアーティストや教育事業のコンサルタント、オーガナイザーなど多面で活躍する柳延人さん。
まず、美容業界の市場について理美容室数、スキンケア市場、ヘルスケア市場についての3つのデータを挙げていただきました。
理美容室は現在約25万店舗。
この店舗数はコンビニエンスストアの約3.8倍と言われており、驚異的な数字と言えるそうです。
また、化粧品の国内市場は約3兆円ですがその半分近くがスキンケア化粧品で構成されています。
そしてヘルスケア市場では、遺伝子検査用品の割合が大きく、市販の遺伝子検査製品を購入するとそれぞれの家庭で自分の健康管理方を知ることができる、というのが最近のヘルスケア市場の特色だということでした。
次に、お伺いしたのはビューティーテックの実例。
柳さん自身がはじめに着手して作ったのはevangelistさんの「BBクリーム。」
当時人気があった美容成分をふんだんに使ったこの製品は、日本の国産BBクリームがなかったこともあり絶大な支持を受けました。
次に紹介されたのは「You Can Makeup」というアプリ。
このアプリではアプリ上に自分の顔写真を取り込み、好きなようにメイクすることができます。柳さんが学院長を務める美容学校では授業の教材としても利用しているそうです。
こちらは、柳さんが「とんでもないバーチャルアプリ」と評されていたことが印象的でした。
これらの製品の他にも
・スカルプDさんの頭皮エステマシン
・株式会社ネイチャーラボさんのニキビ用パッチ
・株式会社クリアーさんのネイルプリンター
・株式会社ワイシードキュメントさんのコスプレデジタル写真集
などを実例として挙げていただきました。
いずれもテクノロジーを生かして美容的ニーズに応えていくという点で共通している事例でした。
最後に、お話いただいたのは、美容専門学校の学院長も務める柳さんから見た美容業界の今後の展望。
美容師の国家試験はクリアすべき技術が明確に定義されており、それさえ覚えれば免許取得は可能だそう。
そのためルーティン化が可能であり、もっと合理的なカリキュラムを行うことができると指摘していました。
■美容とVAPEとCBD(伊藤翼)
続いて登壇されたのは、株式会社コラボ総研の伊藤翼さん。
株式会社コラボ総研は、様々なメディアを運用しながらコラボイベント・グッズを展開し、適切なIP運用やPRをプロデュースしている企業です。
これらの取り組みの中でファッションや美容関係のコラボイベント・グッズなども行い、賞も受賞している伊藤さんからお話を伺いました。
SNSの流行とともに大きくPR方法は変化してきました。しかし、例えばツイッターを見ても少し衰えてきており、伊藤さんはリツイート数と実際のビュー数が乖離していると指摘しました。
そういった状況の中で大切なのは、イベントなどの実際に人が触れられるリアルプロモーションの場だとのこと。
そして事例として美容学校とプロレス、DJイベントとヘアメイク、ファッションショーとアニメ、コスプレと化粧品などをご紹介いただきました。
その経験を活かし、伊藤さんはVAPEメーカーを立ち上げ、これからはCBDに注目しているとのことです。
これは(簡単に言うと)VAPEとは電子タバコ、CBDとは医療用大麻のことを指します。
日本で販売されてるVAPEはニコチン・タールを含まない上にカロリーゼロで、味付きの水蒸気をタバコのような感覚で楽しめます。日本ではあまり知られていませんが、海外では知名度が高く、ハリウッドスターにも人気で10万人を超える大きなイベントも成功しています。
そして現在、伊藤さんのVAPEメーカーは多くのアニメキャラクターとのコラボ展開を果たしており、少しずつその市場を拡大させているとのことでした。
そして、CBDは認知症などにも効果があるという実験結果から医療用としても重要視され、海外ではCBDを利用したエステなども普及しているそうです。
上記の二つの例から分かるように、テクノロジーによって大きく形を変え美容品となったものも、数多く存在するとのことでした。
最後に、伊藤さんはスタートアップという観点で考えたまとめとして
・固定概念にとらわれず、さまさまな業種・方法にチャレンジすること
→美容は人の生活・感情・体験に基づくものだから
・周りの人たちの行動をよくみて、それに対して自分は何を持っているのか、何ができるのかを知ること
・自分が精神的に疲れない道を探し、それを極めていくこと
これらが成功する上で大事なものだとし「楽しいことをしましょう!」という言葉で締めくくりました。
3.@コスメにみるビジネスチャンスを広げるプラットフォームの活用法(西場貴之)
最後の登壇者は、株式会社アイスタイルの西場貴之さんです。
@コスメは株式会社アイスタイルが企画・運営するサイトで、月間3.1億PV、月間ユニークユーザー数1,600万人を誇る人気サイトです。
西場さんによると、アイスタイルはBEAUTY×ITをスローガンとしており、ITの力を使って美容業界を盛り上げていくという展望を掲げています。(以下から3分ほどのコンセプトムービーがご覧いただけます)
さらに、アイスタイルが掲げる『プラットフォーム構想』についてのお話もありました。
生活者がアットコスメ上で美容に関する全ての
・モノ(化粧品)
・コト(クチコミ・ニュース)
・ヒト(ユーザー・美容のプロ)
・場所(サロン・店舗)
がつながる体験を提供する
上記のプラットフォーム構想を掲げる理由として「以前は大手が独占していた市場が、近年は多くのプレイヤーが存在する状態に変わってきたこと」、「世界的に見ても日本市場は拡大していること」から、情報が氾濫している現代では迷えるユーザーが増えていることを挙げました。
その上で、アイスタイルの目指すところは「@コスメによってユーザーデータを蓄積し可視化することにより、ユーザーのことを知りAIによってユーザーとあらゆるものを繋げること」だと語りました。
また、ブランドとユーザーを繋げる上で、@コスメは既にユーザーを抱えたコミュニティのため、ユーザーとコミュニケーションを取るための良いプラットフォームとして活用できるとのお話がありました。
具体的なメリットとしては
・コミュニティを作る手間・コストを抑えられる
・デジタルでのコミュニケーションを省略する
などが挙げられるとのことで、西場さんは「スタートアップという観点から見て、小さく産んで大きく育てることが大切」「全部整える前にまず動くことことが必要であり、そのためにプラットフォームを活用することは有効ではないか」と提案し、トークセッションを締めくくりました。
5.質疑応答
多くあがっていた質問の中で、特に盛り上がっていたのはメンズビューティーの分野。
伊藤さんは、男性アイドルの興隆などに比例してメンズビューティーの需要の高まりを感じること、柳さんは今年がメンズビューティーの当たり年であり、需要が高まっている今年はメンズビューティーの仕掛け時であるとお話しされていました。
西場さんは、それらを踏まえた上で、まだまだ市場は小さいことを指摘し、今後メンズビューティー市場を拡大させるためには、ブランド側は正しい知識の発信とメンズビューティーを文化に浸透させる努力を行い、男性に美容による成功体験を与えることが必要ではないかと語っていました。
5.おわりに
今回のイベントでモデレーターを努めたのは、VERSUSの山口哲一氏。
今後の多様な展開に大きな期待を持てる美容業界。
エンターテインメントの分野を組み込んだ事業の可能性も必ず存在します。
VERSUSでは「エンターテイメントに関連した事業を、テクノロジーを使ってやりたい」と考えている人を求めています。
こちらの記事を読んで、少しでもエンタメ・スタートアップに興味を持って頂けた方、一緒にやって見たいと思った方は、ぜひこちらからお気軽にご連絡ください。
(文:井上敬耶)