フィレンツェスタイルリングができるまで
ここのところ、二点一緒に制作しているフィレンツェスタイルリングであるが、下の写真は、彫りがようやく完成したところ。
あとはこのリングを磨くだけ。
とは言え、この穴一つ一つに木綿糸を通して磨いていくので、これまた結構時間がかかる。
このリングはまず半分(鋳造から上がってきた2ピース)の状態から形成していく。
(鋳造前のモデル作りは上のようにシンプルなリングを作り、それを半分にして、リューターを使って穴を開け、一つ一つマーキースの形に糸鋸を使ってカットしていく。)
鋳造の物を
この時点でマーキースの形を綺麗に整えるために、一つ一つ糸鋸で削っていく。
表面を紙やすりで綺麗にして
それから2個のピースをロウ付けしてリングの形になる。
それから上下に縁用の平たいリングを再びロウ付けする。
こちらをまたヤスリや紙やすりで整えてから、ピカピカに磨く。
他の物と比較しても、ここまでにかかる手間暇もかなりのものだ。
そしてここから彫りに入る。
まず上下の縁部分に彫りを施す。
そしてようやく側面に取り掛かる。
ここまで来ると、おお、ようやく本格的な彫りだ!
と充実感もみなぎる。
一つ一つの彫りの工程をたどっていくことで、どんどんと輝きが増していくのが、
これまた興味深い。
余白を残さず、これでもか!これでもか!とぎっしりと彫りが加えられていく。
このぎっしり感が西洋っぽいとつくづく感じる。
和物が好きな私は、日本画の余白などに心惹かれていたので、はじめの頃はこういう作品に少々抵抗があった。
余談になるが、生け花なども余白の美だと思う。
こちらの人は盛りだくさんに花を生けるのが好きだ。
生け花の先生がおっしゃっていたことだが
イタリア人が生けると、ペタッとした感じになると。
平面的にぎっしり詰め込むからだろう。
奥行きを計算すれば、少しの花材で、美しさは演出できる。
一輪挿しに花一本と葉物だけで、美を表現することも十分にできるわけだ。
余談が長くなった。
彫りを終えてここから、最後の磨きに入る。
ブログ冒頭で申し上げた木綿の糸を通しながらの磨きである。
同じタイプのリングであっても、石入りの場合は、リングの形が出来上がった時点で、
先に石を留めて
それから同様の彫りの工程へ。
フィレンツェスタイルのリングというのは、シンプルとは程遠い見た目同様、
恐ろしく手間暇がかかっているのである。
この輝きは、身につけて思ったのだが、
確かに、気分を盛り上げてくれる。
大きな石で主張するのではなく、
ぎっしりと敷き詰められた彫りの、繊細な輝きは
そこはかとなく自尊心を高めてくれるような気がする。
作り手としては手間暇かけて生み出したわが子のような存在が、
身につけてくださる方を違う次元にお連れすることができれば、作者冥利につきることだろうなぁと思う。
それでは皆さん今日も最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
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