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Discover(探索)- UXデザインプロセスのダブルダイヤモンドモデルを解体
これまでにない良質なユーザー体験を提供する『UXデザイン』が近年注目を集めていますが、そのプロセスは定型のフォーマットが存在せず、なおかつプロセスの段階を何度も行き来するため、理解できそうでできないという方も多い印象です。
株式会社VERSAROCが提供する本マガジンでは、UXデザインの概要やプロセスを解体してnoteにまとめることで、読んだ方のUXデザインに対する解像度を上げ、また実際に業務に取り入れられることを目指しています。
今回は、主にプロダクト開発時のUXデザインにおいてUXデザイナーが好んで使用する「ダブルダイヤモンドモデル」というフレームワークの中の、「Discover(探索)」のフェーズに的を絞って解説します。
UXデザインとは、"User Experience Design"の略で、日本語では「ユーザーエクスペリエンスデザイン」と訳されます。直訳すると「ユーザーが体験するデザイン」となりますが、これは製品やサービスを使うユーザーが得る全体的な体験をデザインすることを指します。
ダブルダイヤモンドモデルとは
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ダブルダイヤモンド(Double Diamond)モデルは、UXデザイナーが好んで使用するデザイン思考プロセスの一種です。発散と収束の繰り返しを視覚的に表し、それが2つのダイヤが並んだように見えることからダブルダイヤモンドと呼ばれています。
Discover(探索)、Define(定義)、Develop(展開)、Deliver(提供)の4つのフェーズを時に行き来しながらよりよいユーザー体験をデザインします。それぞれの工程で本が書けてしまうほど奥深いフレームワークですが、本日は Discover(探索)のフェーズのポイントを確認していきましょう。
▼ダブルダイヤモンドモデルについてはこちら
Discover(探索)は調査と共感のフェーズ
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Discover(探索)フェーズのゴールは顧客であるユーザーや、提供者のステークホルダーの共感ポイントを見極めることです。ユーザーのニーズを知るためのインタビューはもちろん、プロジェクトの目的や市場、競合サービスを理解するためのステークホルダーインタビューも有効となるでしょう。
UXデザイナーの質問によって情報を集め、調査し、圧倒的な共感を目指します。Discover(探索)のフェーズに限った話ではありませんが、情報の収集と調査に十分なラインはありません。
時間や資金などのリソースを管理しながら、可能な範囲内でできるかぎり調査を進め、あつめた情報の中で考えられる最大の「圧倒的共感」の仮説を立てていきます。
調査方法の例:インタビュー
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Discover(探索)フェーズでの調査にはいくつかの方法があります。製品を実際にユーザーに使ってもらい、その使い方を観察する方法、オンラインや街頭でアンケートを取る方法、その道の専門家へインタビューを行う方法など、あらゆる角度からプロジェクトの解像度を高めていくのです。
今回のnoteでは、ビジネスへの共感を目的としてステークホルダーインタビューと、顧客理解を目的としたユーザーインタビューの2つを簡単に解説します。
ステークホルダーインタビュー
ステークホルダーインタビューの目的は、プロジェクトのゴールを明確にし、共有することです。UXデザインは顧客体験を改善するものですが、提供しているプロジェクトがビジネスである以上、そこにはかならず達成したい目的や、予算や労働力などの制約が存在しています。
ステークホルダーインタビューではUXデザイナーが中心となりつつ、プロダクトオーナーやマネージャー、企画、マーケターを巻き込んで、プロジェクトに関わるメンバー全員がプロジェクトのゴールを明確にし、共有できる状態になることを目指します。
社内、社外を問わずステークホルダーと意見交換することでお互いの状況が言語化され、プロジェクト全体がスムーズに進むようになるという副次効果もあります。
ユーザーインタビュー
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ユーザーインタビューの目的は、ユーザーを理解し、困りごとや嬉しいことに対して共感していくことです。UXデザイナーの主戦場といってもよいでしょう。ユーザー本人すらも気づいていないような、潜在的なニーズの仮説を立てます。
ここで、顕在ニーズと潜在ニーズについて確認しておきましょう。顕在ニーズとはユーザー本人が気づいている願望です。「もっと〇〇したい」と本人が言葉にすることができます。
顕在ニーズに対して潜在ニーズは本人も気づいていないような願望です。望みを叶える、または困りごとを解消する具体的な方法がわからないため、かなりあやふやな情報にとどまります。
潜在ニーズのとらえかたよくわかる例として、ヘンリー・フォードの言葉がよく用いられます。
もし、人々に”移動手段として何が欲しいのか?”と聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えただろう
「もっと速い馬が欲しい」は当時のユーザーの顕在ニーズであり、ヘンリー・フォードはそこからさに踏み込んだ「もっと速い移動手段がほしい」という潜在ニーズに気づけたからこそイノベーションを起こせたと考えられます。
また、顕在ニーズと潜在ニーズはしばしば氷山に例えられます。水面から見えている氷山は全体の30%程度で、およそ70%は目では見えない水面下にあります。ユーザーのニーズも同様に、ユーザー自身が気づいているニーズは全体のほんの一部であり、見えていない部分にこそ大きなニーズが隠れているのです。
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UXデザイナーはユーザーインタビューを通して、潜在ニーズを見つけ、さらにその潜在ニーズの中からも引き出すことすらできないニーズに仮説を立ててプロジェクトを進めていきます。
ユーザーインタビューの手順
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これからユーザーインタビューを始めてみたいという方のために、ユーザーインタビューの手順をご紹介します。大きく分けると「準備・実施」の2ステップで進めるとよいでしょう。
とはいえ、ユーザーインタビューに決まったフォーマットはありません。ここでご紹介するのはあくまでひとつの例ととらえ、プロジェクトのリソースやゴールに応じて臨機応変に進めていただいて結構です。
ユーザーインタビューの準備
ユーザーインタビューの準備段階として、インタビューするべき対象を具体化します。専門用語でこれをペルソナと呼び、ペルソナの設定方法もいくつもあるのですが、ひとまずプロジェクトの利用者となりえそうな人物を対象としてよいでしょう。
ペルソナが決まれば、ペルソナになるべく近い人物を実際に探してインタビューをさせてもらう必要があります。知人やプロジェクト関係者から人づてに探してもよいですし、クラウドソーシングや専門の業者をとおして設定していく方法もあります。ここでのインタビュー結果は今後のプロダクト開発に大きな影響を与えるため、できるだけペルソナに似た人物を設定したいところです。
インタビュー対象者が決まったら、実施前にインタビュースクリプトを準備しておくことをおすすめします。インタビュー後に聞き逃しがないように、聞いておかなければいけないことはスクリプトシートとしてまとめておきます。
ユーザーインタビューの実施
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インタビュー時はユーザーの意見をそのまま聞いていけません。ユーザーが言葉にできる願望はや困りごとは顕在ニーズであり、このユーザーインタビューで明確にしたいのは潜在ニーズの方だからです。
一方で、UXデザイナーが自身の仮説を立証するためにユーザーインタビューの流れを変えてしまうのも避けなければいけません。UXデザイナーの目的は隠れた潜在ニーズの仮説を立てることですから、インタビュー中に仮説を思いつくこともあるでしょう。しかしその仮説に気を取られすぎて、インタビューそのものの方向性を操作してしまっては真実がわからなくなってしまいます。
インタビュー実施中はユーザーを理解すること、共感するように徹するようにしましょう。
まとめ
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今回は調査と共感のフェーズであるDiscover(探索)について解説しました。UXデザイナーは限られた時間や予算の中からビジネスのゴールとユーザーのニーズの仮説を立てなければいけません。
仮説を立てるためにインタビューなどの調査をしながら、圧倒的共感のポイントを探していきましょう。Discover(探索)のフェーズのあとには Difine(定義)で分析していきます。これはまた別の記事で紹介させてください。
弊社ではUXデザインコンサルのご相談をお請けしております。お気軽にお問い合わせください。
▼次のDefine(定義)のフェーズはこちら
株式会社VERSAROC
代表取締役 江渕大樹
hiroki_ebuchi@versaroc.co.jp