宮本浩次という身体のスケール -「東京協奏曲」発表によせて
「東京協奏曲」MVが公開された。
デュエットのときにいつも感じることだが、宮本浩次の声は、およそ異なる声質の持ち主とでも軽々と楽々と歌をなじませてしまう。なんという音色の豊かさだろうか。
今まで以上に丁寧な言葉運びや緩急つけたのびやかな息づかいも素晴らしい。
「ベルリン天使の詩」を髣髴とさせる構図や、実際に空調室外機の上で上着をひらひら風になびかせている姿が、自然と天上から東京に舞い降りた天使を想像させる。
天使の比喩は作詞作曲した小林武史自身の言葉でもあるから、まずは歌詞に着目しよう。
彼女は 言うなれば
踊るように生きている感じだ
という歌詞が、「ジョニィへの伝言」の踊り子についての宮本浩次の解釈を受けての、コバタケの答えのように聴こえる。「言うなれば」「ように」の比喩表現は現実からの飛躍を感じさせ、「ジョニィへの伝言」のファンタスティックな夢物語の雰囲気を引き継いでいるのではなかろうか。
これまでの彼らの音楽作りが反映されているような歌詞があちこちにちりばめられていて、まるで相聞歌を読んでいるような気持ちになった。
いつもポーカーフェイスで鷲のような眼をした辣腕プロデューサーにしては、大胆な歌詞が続くが
鳴らせ オレの いのちに触れてく
鉄の弦をかき鳴らし 愛の歌で
言葉になれ
鉄の弦とは小林武史のピアノだろうか、宮本浩次のギターだろうか。
それとも東京という巨大な街、息をひそめた建造物をかき鳴らすのだろうか。
宮本浩次という歌の身体が、東京から世界へ、そして宇宙というスケールへ、無限に拡張してゆく。
どこまでも縦横無尽に。
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