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7月の読了

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「その日暮らし」の人類学

「ヤノマミ」を読んで以降、人類学という分野に非常に興味が出てきた。

「『その日暮らし』の人類学」はLiving for Today、つまり「その日暮らし」で生きているアフリカや中国の人々にフォーカスを当てた本。資本主義の中で、常に未来に備えてものやお金を貯め込みながら生きる我々にとって正反対な暮らし・価値観が詰まっていてとても興味深かった。

本の中では「インフォーマル」という言葉が多く出てくる。インフォーマル=非公式。日本語に直してみると、中国とインフォーマル経済が強く結びついていることに納得がいく。いわゆる「パクリ」やコピー商品を悪びれることなく大量に生産し、安く売る。パクられた側はもちろん、外野であっても決して良い気持ちで看過できるものではないが「本物は高価だが質が良く長く持つ、偽物は安いが質は悪くすぐダメになる。ならば長期的なコスパを考えて本物を買う」・・・ということにならないのが「その日暮らし」で、結果的に需要と供給は一致してしまう。

有名ブランドの明らかなコピー商品のバッグを持った女性が「本物が欲しいわけではない。偽物と分かっていても、流行りのものを私も持ってみたいだけ」と言っていたのが印象的だった。

決して裕福ではない生活だけど、彼らは私たちよりも圧倒的にフレキシブルだし、何にでもビジネスにしちゃうし、不安定であることに不安を感じていない。文中の生活にシフトできるかと言ったら正直無理だけど、不安定がチャンスであるという考え方はとても勉強になった。

不安定で不確実な生活は、人びとに筋道だった未来を企図することを難しくさせるが、代わりに好機を捉え、その時々に可能な行為には何でも挑戦する大胆さをも生み出す。不確実性が不安でしかなく、チャンスとは捉えようがない社会は病的でもあるかもしれない
目標や職業的アイデンティティを持たず、浮遊・漂流する人生は私たちには行きにくいものにみえるが、タンザニアの人びとはこうした生き方がもたらす特有の豊かさについて語る。それは、職を転々として得た経験(知)と困難な状況を生きぬいてきたという誇り、自分はどこでもどんな状況でもきっと行き抜く術を見出せるという自負であり、また偶発的な出会いを契機に何度も日常を生き直す術であった。

不確実であることが、「希望」がないことと同義で語られる。先がどうなるかわからないことは、新しい希望にあふれているとも言えるのに

赤と青のガウン

彬子女王殿下の英国・オックスフォード大学の留学を記したエッセイ。これが、もう、めちゃめちゃよかった!!これを高校生の時に読んでいたら、「イギリス留学したい!」って言っていただろうな…と思うくらい。

読みやすくウィットに富む文章で、彬子女王殿下のお人柄の素敵さ、親しみやすさ、そして上品さが滲み出ていた。「一般の人々は皇族にどんなイメージを持っているだろう」「こういうことは驚くだろうな、意外と思うだろうな」という色々な出来事や決まりごとを一般人の目線でバッチリ捉えていらっしゃって、書いてあることすべてが面白い。移動の際の護衛の方の話、パスポートの色の話、留学中にエリザベス女王に招待されちゃう話などは、出先で読んでいたにも関わらず顔をほころばせずにはいられなかった。

皇族だから、”日本のプリンセス”だから、学位取得までの道のりにショートカットがあったとか特別扱いがあったなんてことが全くないのは文中の通り。登場人物はみんなめちゃめちゃ豪華で、彬子女王だから出会えた・・・部分はもちろんあるけども、彬子女王の地位ではなくそのお人柄や努力・奮闘ぶりに周りが自然と惹かれて、惜しみないサポートをしたのだなと感じた。

スピノザの診察室

2024年の本屋大賞ノミネート作品。Audible聴き放題対象でした。
朗読の方が素晴らしくて、主人公の雄町先生の優しくて落ち着きのある聡明な医者という雰囲気がすごく丁寧に伝わってきた。

医療はいつも必ず奇跡を起こしてくれるわけではない。それを一番よく知っているからこその淡々さと、でも優しさと確かな腕を持って一人ひとりの患者さんに向き合う雄町先生の姿はとても素敵だったな。

患者さんに「もう死にたいなあ」と言われたことは私も何度かある。傾聴というのは難しいもので、「そんなこと言っちゃダメですよ」と諭すのが正解だというわけでもない。いつも「そうなんですね」と当たり障りのない返ししかできなかったけど、雄町先生の「そんなに急がなくて良いのではないですか」という台詞はすごーーーく腑に落ちて良い言葉だな、と思った。

残された命の時間をゆっくり、丁寧に考えるための本。

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