社会的養護出身なら現場福祉職はやめといたほうがいいよ。
今年就活をする社会的養護出身の若者に言いたいことは色々あるけど、一番伝えたいのは、とりあえず現場福祉職は避けたほうがいいということです。
数年前から毎年言ってる気がしなくもないが。
理由はいくつかあるが、
①そもそも当事者は関わらない方がいいから
②業界的に「休みづらい」から
③日本の社会保障制度との兼ね合い的な面での理由
ということで今回はこの件について書いてみます。
いちいち書かなくても伝わるとは思いますが、福祉職を軽蔑しているわけではないです。福祉職はなくてはならない仕事だし、私自身、そこから恩恵を受けて育ってきたので。従事されている方々のことはとても尊敬しています。
ただ、親にも頼れない"社会的に弱い人"があえて目指すべき業界かというと違うと思う。という話をしたいだけです。
①そもそも当事者は関わらない方がいい業界
これについては、児童養護の専門家の先生方が口をすっぱくして仰っている。社会的養護出身者で、福祉職、とくに児童養護に関わる系についた人はとにかく予後が悪いらしい。
私はなんとなくそれを予見したのと、ある方に説得されたこともあって別ルートに行った側だから、あんまり実感をもって語ることはできないのだけど、社会的養護出身者で自らも児童養護職についている子達をSNSで見てるとたいてい精神疾患で労務不能になってる。
せっかく「うまく"自立"するために大学に行こう!」と言って受験勉強をがんばって大学に入学し、勉強に精を出しても、そもそも福祉系の学科を選んだ時点で、精神疾患の有病率と中退率があがるらしいし、そこを乗り越えなんとか卒業し、働きはじめたとしても、福祉業界に関わった時点で、メンタルヘルスが脅かされるリスクがほかの業界に行った場合よりも上がっているという現実があると思うと、福祉職どころか、そもそも福祉系の学部に行くことすら危なっかしい選択だということがわかると思う。
②業界的に「休みづらい」
過去に深刻なトラウマ経験があろうとなかろうと、そもそも働いた時点で、運が悪ければパワハラに遭い、精神上の健康を損なう人だっている。
そうでなくても、仕事と関係ないところで精神的なしんどさを抱えて、その結果働くことにも影響が出て、気づかないうちに限界を超えて「ある日朝目が覚めたら体が動きませんでした」となることだってあるかもしれない。(ちなみに私はこのパターン)
そうなったときに、重要なのは「休める会社か」ということだと思う。
「どうあがいても出勤不可能です」と言ったときに「じゃあ休みな」と言ってもらえる職場かどうか。
それは結構、出勤のスタイルと、それと会社の白黒度によっても左右される部分だと思う。
たとえば、オフィスワークでホワイトな会社だった場合、「まずは有給を使って休みましょう」と言われる。
それで4日休み続けた時点で、診断書をもらえれば傷病手当の受給対象*になる。ブラックな会社だとどうなるかは、ネット上にあふれかえるいろんな方の言葉を見た方が参考になると思う。
しかしこれが、勤務形態が変わると話が変わってくる。
シフト制である時点で休むことへのハードルが上がる。
仮にホワイトな職場であったとしても、だ。
福祉職の勤務スタイルはたいていの場合、シフト制だ。
体調が悪くなったときに、利用者のことよりも、現場のことよりも、何よりも優先して自分のことを考えて4日休むことができるような強い心の持ち主なら別にいいし、私もあんまり気にしない。
けど、福祉職に就く人には、自己犠牲ができてしまう人が多いから、だから余計心配なんだ…そういう意味でもやめといた方がいいと思う。
ちなみに、前職が福祉職の私の知人は、そこで休むという選択を自ら選ばず、シフトを守ってから退職したそうだが、それによってまず傷病手当の受給要件から漏れてしまった。しかも働けない状態なので、求職活動をしていることが受給要件になる失業給付金も住宅確保給付金も表向きは受給対象外。
結局、どうすることもできないので、地域の障害者支援センターに相談したところ、求職活動をしているていで失業給付を受けることになったそうだ。
それまではしばらく貯金を切り崩して生活をしていたらしい。
*労務不能になって4日以上休んだ場合、医師の診断書があれば給料の代わりに傷病手当というのを申請して受給できる。
それによって調子が戻るまで療養するという手段がとれるけど、シフト制だとそもそも4日連続で休むことが難しい。
そうやって休ませてくれる職場かどうかもわからないし。
③「頼れる家族はいますか?」と聞いてくるような社会ですが。
日本では、なんらかの理由で働けなくなった場合、まず「頼れる家族はいますか?」と聞かれる。
大の大人がそんなことを聞かれるような、絵に描いたような家族主義の社会。その時点で、家族がいない人たちは、周縁化されている。
精神疾患のwebサイトを覗くと、「実家に帰って療養しました。」にはじまり「パートナー・配偶者が支えてくれました」「知人・友人が助けてくれました」的なエピソードがずらーーーーー!っと並んでいる。
….
正直、「あなたにはそうやって支えてくれる人がいてよかったね」という感想しか出てこない。
これじゃまるで頼れる人がいる前提での自宅療養じゃないか。
「家族の献身的な支えがあって、うつを乗り越えました」
的な美談にしたいのかなんなのか知らないが、それじゃそうやって頼るすべがない人は何を参考にしたらいいのさ?
④結局、個人療養になるんだ
現状では、個人療養するしかない。
公私ともに適切なサポートがなかった場合それがどれだけ大変か。
これは、実際に経験してみないとわからないと思う。
とくに労務不能になった場合に申請したら傷病手当というのが受給できるが、その申請にだってお医者にかかることが条件なんだ。
お医者にいけないくらい体調が悪かったら、それだけでもう行動できないから、体調がよくなるまで一人で耐えるしかない。
しかもうつがひどいときは人に「助けて」をいうことすらできなくなる。
そんな状態でどうやったら助かるというのだろう。
⑤社会保障も自治体の財源に依る
かりに、誰か支えてくれるようなパートナーや友達がいたとしても、生活のためのお金はどうやって調達するの?って話だし、他人の脛をかじるわけにはいかない。
となると結局、頼りになるのは社会保障制度であり福祉ということになる。
でも、その福祉サービスも結局、供給する自治体の財力に影響を受けているので、地域によって受けられるサービスに差が出てくる。
人口12万の地方都市と中核市と大都市の特別区では窓口業務の対応のレベルも変わってくる。(これは身をもって感じたこと
「困ってます、助けてください」と言って確実に助けてもらえるような、生活支援の財源が潤沢にあるような地域でもないかぎり、親に頼れない若者が目指す職業として福祉職はいいとはいえない。
(どんづまった気がしなくもないがここで結論とする)