【新日本プロレス】1998年①
nwoブームで社会現象を巻き起こした1997年。
1998年はそのブームも多少落ち着いてきて、次なる一手を模索する一年となります。
一方でオーナーである猪木の意向や、押し寄せる総合格闘技の波も無視しきれなくなってきたことで、徐々に混迷が目に見えるようになってきます。
それでも客足が遠のくのはまだまだ先。改めて、闘魂三銃士全員が当たり前のように一枚のチケットで見られる事の威力の高さを感じさせます。
①FINAL POWER HALL in 闘強導夢 1.4
いわずもがな、長州の引退興行です。
この大会の関心事は長州の引退試合を置いて他にないんですが、
とはいえ試合順に沿っていくつかトピックを上げてみます。
・第二試合 IWGPジュニアヘビー級選手権試合
大谷晋二郎vsウルティモ・ドラゴン
一昨年の8冠統一トーナメントで悔しい敗戦となったドラゴンを相手に大谷がチャンピオンとしてリベンジを狙います。
ただ、試合の多くはドラゴンが支配している印象。日本には馴染みの薄い変形のフランケンシュタイナーや丸め込みを多用し、いつフォールを取られるかヒヤヒヤしたファンも多かったでしょう。
最後は、すっかり流行り技となったラ・マヒストラルを抜けた大谷がドラゴンスープレックス2連発で逆転勝利。
チャンピオンとしての大谷も、気付けば5度目の防衛。
・第四試合 西村修凱旋帰国試合
藤波、西村vs中西、小島
新日本の頑固者、西村の帰国試合。じつはこの前にも、2年以上に及ぶ海外修行を一度経験していたのですが、帰国後もパッとしなかったため二度目の海外修行に行っていたのでした。
頑固な西村ですが、この時ばかりは団体からの圧力に負けてヘビー級への肉体改造に着手して帰ってきました。
(というか、ナチュラルな西村は細すぎるんですよね…)
試合の印象はあまり無いんですが、試合後に帰ってきた西村そっちのけで「今年こそね、僕は鶴田さんとの試合を実現させますよ」と自分の展望を語る藤波さんが印象的でした。
・第五試合 長州力引退試合5人掛け
長州vs藤田、吉江、高岩、飯塚、ライガー
この試合に限らず、大物選手の引退試合だと必ず「誰が引退試合の相手になるのか」と話題になりますが…
恐らく、この試合の『?』は過去一だったと思います。
なぜ5人掛けなのか。なぜこのメンバーなのか。。。
若手にチャンスを、という意味であれば藤田、吉江、高岩くらいまではわかるんだけど、飯塚…?ましてライガーってなんか接点あった!?なぜジュニアと試合するの!?引退試合で負けたくない、的な!?
と、当時色んな憶測を呼んだこのマッチメイク。
ただ、終わってみれば良い試合でした。
藤田、吉江はヤングライオンらしい気迫を見せた上でリキラリアットで敗れ、高岩は昔散々いじめられた分の成長した姿をみせる。この辺から長州も疲労の色が見え始めつつもしっかり勝っていきます。
そして、飯塚戦でまさかのギブアップ負けを喫することで、最終戦のジュニアの大エースであるライガーとの戦いが階級を超えてより緊張感のある展開になる…と。ライガーの技をしっかりくらいつつ、全力のリキラリアットでフォール勝ち、5人がけを4勝1敗で無事リングを降りる事となりました。
こうして振り返ると、思えばこの5人の組み合わせが最善だったのかもな、と思ってしまいました。
例えば引退試合に橋本真也を当てたらこういう試合にはできなかったでしょうから。
この後、長州はこの日対戦した5人に握手を求めるんですが、全員が左手も添えつつ頭を下げながら握手に応じる中、藤田だけはふてぶてしく片手で握手に応じていたのが、こうナチュラルに大物だなぁと 笑
そして、このあと出てきた袴姿の猪木が
「長州・・・ありがとう。長州をこのような形で送り出していただき、皆様もありがとうございます。(中略)私のファイナル・カウントダウンも4月4日の東京ドームを最後に…」と、まさかのこのタイミングでの引退発表。
人の引退試合に、それより大きな爆弾を放り込む猪木も、やはり大物!
・第六試合 異種格闘技戦
ドン・フライvs小川直也
この試合から小川が従来の柔道着から、ショートスパッツとリングシューズにコスチュームチェンジ。ただ体型はいわゆる「肉体改造前」の状態です。
しかし、所感としてはかなりいい感じのプロレスラーに仕上がってきたように見えました。
しっかりした太ももの筋肉に、脂肪は付いてるけど胸や背中ががっしりしていてそこまで気にならない
いよいよ、小川を柔道家から「プロ格闘家」として本格始動させる狙いだったのでしょう。
ただ、この試合に関しては完全にフライの手のひら。
反則をかいくぐって投げ技を決めるが決めきれず、最後はフライの”疑惑のグローブパンチ”からのスリーパーホールド。
いや、フライのプロレス適応力高すぎ…。
・第七試合 異種格闘技戦
橋本真也vsデニス・レーン
タックルで足を怪我して試合終了。ほぼ何もせず橋本の勝ち。
ただただ橋本が気の毒。去年のメインイベンターが、ほぼ何も残せず。
・第八試合 越中詩郎復帰戦
蝶野正洋vs越中詩郎
やたらアキレス腱が切れる越中の復帰戦。
試合自体よりも、蝶野が入場に横浜ベイスターズの三浦大輔投手と鈴木尚典選手を帯同してきたことが話題になりました。この二人も出世しましたね 笑
試合は、途中危険な角度のパワーボムで蝶野が意識を失いかけるも、最後は危なげなくカウンターケンカキックで勝利。
・メインイベント IWGPヘビー級選手権試合
佐々木健介vs武藤敬司
さすがの名勝負。
中盤、強烈な低空ドロップキックで機動力を止めた武藤が執拗な足四の字固めで追い詰める(IWGPタッグ選手権ではこの技で負けている)。
食い下がる健介にトドメの雪崩式フランケン…と思いきやこれを雪崩式パワーボムで切り替えした健介が、ノーザンライトボムでカウント3。
試合は武藤が組み立てましたが、この試合は健介の一発に懸ける説得力があってのものだったと思います。
あと、以前から使用してはいたものの、武藤の低空ドロップキックを軸にした試合というのはこの頃からが顕著になったように感じます。
・長州力引退セレモニー
先に試合を終えたばかりの健介がベルト姿で花束を贈呈。終始笑顔の長州というのもかなりレア(いまはいつでもニコニコしてる爺さんになりましたが…)
言葉少なのマイクアピールをして、10カウントゴングのあと花道を下がるんですが、ここで来ていたTシャツを客席に投げ入れるサプライズ。
これも、現役時代では到底考えられないことで、ああ、引退するんだなと感じさせる寂しいシーンでした。
終わってみれば、長州引退・猪木の引退発表。そして本隊対nwoは健介がギリギリ最後の牙城を守った格好になりました。
ここから、対nwoがどうなっていくか、そして猪木の引退試合までの道のりがストーリーの主軸となっていきますが、今回はここまで。
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