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脳天を駆ける飛行機の丘

飛行機が好きなのです。
そう思ってお盆の最中、成田に向かったのだ。
確か、ひこうきの丘というのがあったなと。


その丘は確かに広大で、飛行機を見るには良い場所だった。しかし正直、超高性能のバズーカ砲みたいなカメラか望遠鏡でもなきゃ、こりゃキツイなと口を開けてぽかーんと空を見上げるしかなかった。するとまさにそのバズーカ砲を小脇に抱えた、いかにも航空ファン風の男性が別の場所をアドバイスしてくれたのだ。


「さくらの山がいいですよ」
ほう。それは何処に?ここから近くです、車でもう少し。御意に。ではそちらに。
てなわけでその「さくらの山」を目指したのである。


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「さくらの山」はちょっぴり小高い丘の、道の駅のような施設のそばにあった。
緩い坂道を登っていくと、そこにはこれまた「いかにも」な人がわらわらと。バズーカ砲のみならず、それをキープ&リフトアップするための長身なる三脚を設置している人が数名。しかも彼らの手には、無線機があるではないか。遠巻きに彼らを観察していると、どうやら飛行機の発着情報をその無線で受信し、撮影のベストタイミングを協力体制で狙っているようだった。


その意気込みには感心するしかなかった。おそらく航空ファン同士で協力体制が結ばれ、かたや航空機の発着を睨む者と、ベストショットを狙う者とで目的を同としているのだろう。彼らは航空機の撮影に正真正銘本気であり、チラ見目的で成田にやってきたふらりなわたしとでは、そのスタンスが全く異なっているわけだ。
そんな彼らに感心し、ちらちらと観察していたところ、彼らの動きが突如機敏になった。三脚の前にスタンバイを始め、ファインダーをカッチリと覗き、微動だにしない緊張体制に入った。


その間も無く。大きな大きな機体が爆音と共に頭上を通過した。そのあまりの大きさにわたしの声はすっかり奪われてしまい、スマホを持つ手は固められた。
あんな大きな物体が脳天直上を通り過ぎるのを、わたしは見たことがない。
機体はユナイテッド航空。航空会社の判別どころの話ではない、機体の何もかもが鮮明に目の前に飛び込んできて、あんな巨大な物体が空に浮いて、あんな速さで自分の真上を駆け抜けていくとは。

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この写真の比ではない。これとは全く別の、視界の大半を占める巨大な鉄鋼だ。


思わず納得した。航空ファンのバズーカ砲や、足長の三脚や、綿密な無線機での作戦を。
これほどまでの手間隙、費用をかけてまでも撮影したいものなのだ、それほどに素晴らしいものなのだと彼らにプレゼンされれば、わたしは首をぶんぶん振って頷くことだろう。
たった一秒遅れても大問題だ。あの大きな機体を最高にクールな角度かつ、最高にキマる構図で撮影しようと願えば、秒を争うしかない。そりゃ無線も三脚もバズーカも、正確な情報も要るわなと。


そんな納得の中、さくらの山の灼熱。
熱射がいくら降り注ごうとも、彼らは上空にやってくる機体を刻一刻と待ち続けるのだろう。タイムテーブルとファインダーを凝視し、どの航空会社のどんな機体がどの方向を向いて飛んでいくのかを。


面白い人たちだ。いろんな人々の、いろんな熱中。
飛行機好きの端くれの端、わたし。


何にせよ構わない。
のめりこめる愉しみがある。
十分に素敵なことではないか。





さくらの山のほか、成田発着の飛行機が見やすい場所や詳細はこちらに。



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吉原 紅
ありがたく生命維持活動に使わせていただきます💋