見出し画像

知識も基礎もないわたしがデザイナーとなった経緯、その理由



わたしはグラフィックデザイナーの端くれである


わざわざ「端くれ」と言ったのにはこんな理由がある
わたしは何処の美大も出ておらず
デザインの専門学校も出ていない
つまり世間一般の人が想定するであろう場で
デザインを学んだ経験がないのだ

そのことは長年わたしを
真綿で締め付けてきた事実そのものだった
デザイン関係の仕事をしている人なら
概ね察しもつくでしょう
そういう場所の求人応募に行くと大抵
基礎のないわたしに雇用側が聞いてくる質問はこれだった


「どこでデザインを学んだの?」

その質問を投げかけられる度
わたしの罪の意識は疼いた
それは自分が勘違いをして
場違いな場所に来てしまったかのような
そうとは知らず軽装で
高級レストランを訪れてしまったような
そんなバツの悪さがあった


ではわたしが端くれとはいえ
自らをなぜグラフィックデザイナーと
呼べるようになったかと言えばそれは
現場での叩き上げ経験のおかげだった


……………………………………………………


わたしは新卒で広告代理店に入社した
とは言えその広告代理店は洒落たイメージの
それではなく求人広告会社だった


当然そこで作っていたのは求人広告ばかり
どんなに大きくても広告サイズは一頁を超えない
一頁の制作を丸ごと任せてもらえるのは
キャリアのある先輩上司だけで
新人のわたしに充てられたのは小さな広告枠が殆どだった


それでもわたしは毎日その会社で
数センチ×数センチの枠の中をひたすら構成した
求人広告にデザイン性など必要ないだろ?というご意見も必然
広告を先駆的なメディアと捉える
洒脱なピラミッドにおいて
求人広告のポジションというのは
底辺に近いものであり
その事実に反論する余地はない


それでも22歳のわたしは毎日それを作り続けた
数センチ四方の四角の中で
いかに余白をクールに残し
いかにして人の心に響く言葉を
キャッチフレーズに落とし込むかを日々考えた
それでもわたしの仕事は所詮
その程度のものだった

デザインの座学を受けたこともなければ
基礎中の基礎である色彩の勉強をしたこともない
人間の目に訴える絶対的な比率のことでさえ
知ったのは退社後のことだった


そんなわたしが在職中初めての賞与で
会社にあったデスクトップのPower Macと
同じマシンを買っていたことには
今でも感謝している
今では考えられないほど重く鈍かった
あのPower Mac
わたしは退社後に赤子を育てながら
密室でその林檎を触り続けた
作れと言われるものなど何もなかったけれど
そう言えば学校を出てからの
わたしの人生の側にはずっと
齧られた林檎があったのだ 

画像3


それから数年を経たある日
わたしはふと気づいた
モノに美を感じる感覚がいつの間にか
わたしの中に確実な枝を伸ばしていたことに


それは小難しい比率や数字や定説に帰するものではない
わたしだけの肚感覚だ
それは口では説明できない
「なんとなく」の感覚であり
その曖昧さゆえ
他人に理解してもらうことはできない
だけどわたしだけはその存在を知っている
そんな不確かなもの


デザインの基礎など
一ミリもなかったわたしだったが
会社で日々与えられた業務をしていた経験が
いつの間にやら種を芽吹かせ枝を這わせ
気づけば樹木へと姿を変えてくれた

画像4



わたしは一生「デザイナーの端くれ」なのだろう
それでいいじゃないか
美術の知識もデザインの基礎もない自分
それでいいじゃないか
どこの美術学校を出ていなくとも
名乗ってしまえばそうなれるのだし
それでも不安なら自分の体を使って
感覚で身につけてしまえばいいのだ


そうやって肚の底からようやく
基礎のない状態でやってきた自分を
それでもいいと認められるようになった時
わたしがふと発見したのは
他人の不足を許容している自分の心だった

他人の不完全
他人の知識不足
他人の非社会性
他人の未熟

その全てに何の判断もつかなくなった自分が
自ら認識できるほどクリアな状態でそこにいた

不思議なものだ
自己の未熟さを認め切ると
他人のそれなど目に入らなくなるのだ
これを逆説的に捉えれば
他者を見て比較・批判できるということはつまり
自分の中にある弱さや未熟さを
認めていないということなのだ

画像3


趣旨が大きくズレましたが
今もし何かの職業に就きたいと
ルートを考えている人がいるのなら
必ずしも一般的な道を行く必要はないということ
そうしたいのならそうすればいいけれど
皆がそうしてるからという理由で選択をしなくていい
知識が足りないのなら身体で覚えればいいし
他の場所から知識を吸収したっていい
むしろその方が自分に適しているという場合も
人生には往々にしてあるのです


ルートは外してもいいし遠回りをしてもいい
自分が楽しめるであろう手段を選ぶこと
そのことをどうか心に留めておいてください




グラフィックデザイナーの端くれより
(今は文筆家を名乗っていますが)



↓ 今日ブログのリンクバナー作りました^^
よろしければ遊びに来てくださいね♪

画像1


この記事が参加している募集

ありがたく生命維持活動に使わせていただきます💋