禍話リライト UFO
禍話の語り手であるかぁなっきさん。その後輩であるHさんは山登りが趣味である。
もっとも、その内容が少し変わっていて、スーツに革靴という格好で低い山に入る、というものだそうだ。
そのため、時には周辺の住民に、
(世を儚んでやって来た人なのでは……?)
そう誤解されたこともあったという。
さて、これはそのHさんが友人から聞いた話なのだが、その友人曰く、
「UFOが怖い」
という。
『アブダクション(誘拐)』や『キャトル・ミューティレーション(家畜の虐殺)』という、宇宙人によるものとされる奇怪な事件が多数報告される欧米諸国ならともかく、その手の話のほとんどない日本に住んでいてUFOが怖いとはどういうことなのか、ちょっと想像がつかない。
そこで興味が出てどういうことかと訊いてみると、こんな話をしてくれた。
その友人が何かの理由があって、山の中を歩いていた時のこと。
山とギリギリ呼べるか、そもそも山と呼んでいいのかというような、かなり標高の低い山だったそうだ。
山の日暮れは早いというが、歩いている内に日が落ちて辺りが真っ暗になってしまった。
(こりゃマズイなぁ……)
と思ったが、しかし帰り道はわかっている。
明るい内に下山する予定が狂っただけで迷ったわけではないし、後は今歩いている道をずっと下って行くだけで山から出ることができるわけだ。
そうして慌てることなく山道を歩いていると、
ブウウウゥゥゥーン……
妙な機械音のようなものが聞こえてきた。
(……えっ、何だぁ⁉︎)
驚いて音のする方向を見ると、何かが宙に浮かんでいた。
小さな機械のようなものが、回転しながら浮いていた。
それが小さく見えたことから、友人はその機械のようなものは遠くの空を飛んでいるのだと感じた。
飛行機か何かを見間違えたのだとしたらそのままどこかへ飛んでいってしまうものだろうが、それは上空で静止したまま回転し続けるだけだった。
そして、
ブブブブブブブブブ……
と機械音を発し続けている。
(スゲー! マジなやつだ! UFOだ!)
生まれて初めてそんな現象に遭遇し、友人は感動してしばらくそれを眺めていた。
その内に、それはフッといなくなってしまった。
(……いやぁ、UFOって本当にあるんだなぁ)
そう思い、友人は山を降りた。
翌日から友人はいろんな場所でその体験を話して回った。
そうして話を聞かされた体験者の知人の中に、理系の知識に明るい者がいた。
彼は話の一部始終を聞いた後、少し考え込んでからこう言ったそうだ。
「あのさぁ、音と大きさ、状況から考えたんだけどさぁ……」
「それ、遠くにデカいUFOが飛んでたんじゃなくて、おまえのすぐ目の前で小型の飛行物体が旋回してたんじゃないのか?」
夜の暗闇の中で遠近感が狂っていたために、すぐ目の前に何かが浮かんでいるのを、遠くを飛んでいると勘違いしたのではないか。
周辺の状況や話の内容から判断する限り、そう思えてならないと彼は言う。
「……もしかしたらおまえ、危なかったんじゃないのか?」
その言葉に友人はゾッとしてしまった。
それ以来、友人はUFOに恐怖を覚えるようになってしまい、またあの飛行物体に遭遇したらと思うと怖くて仕方なく、山にも入れなくなってしまったそうだ。
この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『燈魂百物語第四夜①』(2017年2月11日)
から一部を抜粋、再構成したものです。(1:59:45くらいから)
題はドントさんが考えられたものを使用しております。
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