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ヴェナル軍曹
2023年4月14日 17:55
十年ほど前。Aさんが四十代の頃の、ある夏の話だという。厄介な大きな仕事が片付いて、週の終わり、彼は久しぶりに図書館へと赴いた。鮮やかな印刷でピカピカに光る新刊や幾つかの雑誌を漁った後、のびのびとした気持ちが高じて、普段赴かない『美術』の棚へ足を運んだ。「……あのぅ、取引相手が西洋の画家が好きって話してたんですよ。で、その人の話し方が上手くって。なんかすごく魅力的だったんで……」背表