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IR-2使いから見たTONEX ONE

極小サイズのTONEX 爆誕

IK MultimediaからストンプボックスサイズのTONEX「TONEX ONE」が発表されました。発売は2024年5月24日ごろ(複数サイトに表記あり)

すでにSNS上では大きな話題になっており他社の競合製品を凌ぐと断言する人もちらほら。

とはいえ機材は自分の目的達成に有用か?適材適所の運用ができるか?が重要なポイント。考えなしに飛びつかず吟味検討するのが無難です。

というわけで今回はTONEX ONE検討中の人に向けて競合製品であるBOSS IR-2のユーザー視点からIR-2とTONEX ONEそれぞれの魅力やどんな人に適しているかを書いてみたいと思います。



BOSS IR-2の魅力

32bit 浮動小数点処理

IR-2の内部演算は32bit float。ビット数の大きさはダイナミックレンジの広さを表します。ダイナミクスを活かす上で申し分ない性能です。

きわめて低いレイテンシー

人気プレイヤーLeo GibsonのテストにおいてIR-2のレイテンシー(遅延)は実測1ms以下という驚異的な数値を示しています。

意外と知られていないことなんですが、レイテンシーはプラグインだけにあるものではなくマルチエフェクター含むデジタル機材にも存在します。

アナログ信号→デジタル/デジタル→アナログ信号という変換処理があるかぎりそこにはレイテンシー問題がつきまといます。

IR-2の1msという数値はニアゼロレイテンシーと言ってよいほどのレスポンス。アナログ機材に匹敵する感触でプレイできます。

センドリターンループ搭載

IR-2はステレオセンドリターン(TRSジャック)を搭載しています。このループはプリアンプの後段に配置されているのでIR-2による歪みの影響を受けません。お気に入りのモジュレーション系ペダル、ディレイ系ペダル、リバーブ系ペダルがある人にとって非常に有用な機能です。

独立したヘッドホンアウト

IR-2はメインアウト(標準TSフォンLR)の他に独立したステレオミニのヘッドホンアウトがあります。家庭での練習、レコーディングの利便性を高める要素です。

MDP技術によるアンプモデリング

「CRUNCH」「MODDED」チャンネルにはBOSSの独自技術MDPが使われています。

MDP採用ペダルはどれも高い評価を得ておりGT-1000やWAZAがリリースされた後も需要が落ちていません。あのニュアンスをアンプシミュレーターで体験したい人にうってつけ。

乾電池で動く

消費電力が大きいため推奨はされていませんがIR-2は9V電池でも動きます。可搬性の面で無視できないポイント。

BOSSコンなので電池を入れるエリアがある

信頼性抜群のBOSSコンボディ

「最先端のデジタルギアが最強のケースに収まっている」ことの安心感。BOSSの強みを存分に活かした仕様です。5年という長期間の保証がついている点も見逃せません。

外部スイッチ操作

IR-2は本体スイッチだけでなく外部スイッチからも操作可能。

実際に使ってみるとわかるんですけど外部スイッチってものすごく便利なんですよ。IR-2に限らず。

外部スイッチは、

  • 本体スイッチから物理的に離れた位置にスイッチを追加できる。
    →踏み間違えが起こらない。ラフに踏み抜ける。

  • ボードに組み込んだ本体を動かすことなく操作性に変化を与えられる。

  • ボード手前側に本体を配置する必要がなくなる。
    →スイッチだけ手前、本体は奥でもOKになったりする。

こういったメリットをもたらすアイテムなんです。個人的にあると嬉しいオプションですね。

このあたりよくわかってるな〜!と関心したのがNUX MG-30。比較的安価なマルチエフェクターにもかかわらず頑丈なフットスイッチが同梱されてるんですよ。

愛用者が語る、実力派マルチエフェクター「NUX MG-30」の魅力/サウンドハウスコラム
https://www.soundhouse.co.jp/contents/column/index?post=3543

別売りオプションではなく同梱品として用意すればみんな使ってくれる。スイッチとそれに対応した本体プログラムの利便性を知ってくれる。NUXの心意気が見えた気がして一気にファンになりましたね。



TONEX ONEの魅力

※TONEX ONEは仕様表を読んで書いています。

TONEXエコシステム

自分でキャプチャしたリグを含む数千ものサウンドを利用できるTONEXエコシステム。

他の追随を許さない唯一無二のメリットです。

チューナー内蔵!

前作の反省を活かしたのか最初からチューナー機能が備わっています。大英断。

かゆいところに手が届くエフェクト郡

チューナーのほか「ノイズゲート」「コンプレッサー」「リバーブ」を本体ノブで調節可能。IR-2も「アンビエント」というツマミでホール、ルーム、スプリングリバーブいずれかのMIXレベルを調節できますが、ゲートやコンプは非搭載。

サンプルレート192kHz

ビット数こそIR-2に及ばないもののサンプルレートは192kHzという精細さ。キャプチャしたリグを妥協なく再現できる不満のない処理能力です。

ステレオ・モノラル両対応

標準TRSフォンひとつではありますがステレオ、モノラル、ヘッドフォンアウトが可能。単機能IRローダーの需要をごっそり持っていきそうな仕様です。

プリセット数の多さ

最大20個のプリセットを登録可能。LEDインジケーターの色まで指定できるので今どのサウンドを有効にしているかひと目で判断できます。

高価なプラグインが付属

IK Multimediaの魅力といえばバンドルソフトウェアの豪華さ。TONEX ONEにはTONEX SEが付属します。



共通の魅力

IRローダー機能

サードパーティ製キャビネットIRのロードが可能。キャブシムはほんとーーーーーに好みが分かれる部分なので自社のおすすめを押し付けない仕様にしているのはとても好印象。

キャビネットシミュレーターのオンオフ

キャビネットシミュレーター機能を単独でOFFにできます。アンプのパワー部だけを使う「リターン挿し」運用において必須の機能です。ミキサー経由のパワードモニターやFRFRを使わずいつものアンプに接続できるのはとても快適。

オーディオインターフェース機能

オーディオインターフェース(AIF)としてレコーディングで使用できます。もちろん遅延のないモニタリングでプレイしながら録音可能。アンプシミュレータープラグインが不要になるためDAWリソースの節約にも大きく貢献します。

Windowsパソコン、Mac、Androidスマートフォン、iPhoneに対応。デモ音源くらいのプロジェクトならタブレット端末やスマホで作れる時代に嬉しい仕様。

A/Bスイッチ切り替え

スイッチを踏むことで2つのアンプ(プリセット)を切替可能。2chアンプライクに使うもよし、アンプ2台として使うもよし。ライブで役立つ機能です。


こんな人におすすめ

IR-2は「実機アンプの代替として質実剛健なものが欲しい人」に向いている製品です。

レスポンスの優秀さ、外部エフェクターとの親和性、追加スイッチによる操作性、ヘビーデューティーなボディ…

僕のように愛用のペダルボードがあるプレイヤーにとってセンドリターンの有無はとても重要です。

デジタル面の機能をよくばらずハード面にコストを割き、なおかつ価格も抑える。現場で重用されてきたBOSSらしい思想が見える製品だと思います。

対してTONEX ONEは(あくまで仕様書上での評価ですが)「単機運用したい人向けのセミオールインワンペダル」です。

チューナー、ノイズゲート、コンプレッサー、リバーブは「せめてこの機能は搭載してて欲しかった」と言われることが多いエフェクト。

IR-2も「ノイズゲートがあれば…」と言われていますし、TONEX PEDALはユーザーの声を受けてチューナー機能の実装に至りました。

【余談】IR-2も裏で薄くゲートが掛かっているような感触を覚えることがあります。もし隠しゲートがあるならいっそアプリから設定できるようにして欲しいところ。

モジュレーションやディレイは無くとも「この機能さえ」の筆頭が揃っているTONEX ONEはIR-2よりも快適に単機運用できるペダルと言えます。プラグインの方で使い慣れているリグをそのまま持ち出せる点も嬉しい。

「アンプ直は嫌。でもG1 Fourですら荷物に感じる」ような人にはもってこいの一品ではないでしょうか。電池スナップ含めてもポケットに入れられるくらい小さいですからね。

IK Multimediaは新しい価値を創造するのが上手い会社です。TONEX ONEもまた未だ埋まっていない需要の隙間を理想的な形で満たしてくれる機材として愛されていくのではと思います。

冒頭で述べた通り、機材は適材適所で使い分けるもの。TONEX ONEが発売されてもIR-2やMultiStonp、TONEX PEDALといった既発製品の選択価値は残ります。よ〜く吟味しながら機材拡充していきましょう!

Shades Guy


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