【短編小説】 イタリアンレストランにて
過去の記憶はぼんやりしている。
白くて薄い膜が張っているようだ。
写真もある、映像も残っている。その時よく聞いていたCDをかけるとはっきりした空気感を思い出され触感や香りさえ蘇ってくる。
間違いなく事実として経験したことなのに、それでも本当に自分の身に起こったことなのか分からなくなることがある。
思い出はいつも美しいものだ。二度とその楽しかった時に戻れないから哀しくなる、と誰かが全部わかってるような訳知顔で言っていたがそれは嘘だ。
目を瞑ってその時の状況を強く思い浮かべれば誰