矢部浩之、何言うてはるんですか?の研究
僕は昔、短期間だが芸人をしていた事がある。
さしたる実績は残せなかった、というより覚悟が足りなくて辞めてしまったが、今でもお笑いの事を考えたり、分析するのは好きだ。
しかし、芸人は一種の村社会で他業種の人間がお笑いについて語るのをとことん嫌う。
舞台に上がったことも無いくせに何が分かるんだと、とことん潰しにかかる人ばかりだ。
まぁ、幸い僕はただの一般人で芸人の目にも触れる事は無いだろうから、思った事を好きに書きたいと思う。
とはいえ、普段ネットや何かではあまり語られていない視点で・・・
てな事で、芸人についての記事はこれからもしていく、今回語るのはナインティナインの矢部浩之。
矢部浩之、ネットでもつまらない
何で芸人やってるの?
とかそんな声をよく見る、僕も今まで大して凄いとは思わなかったが、
最近考え直した。
矢部は凄い。
僕の中で、矢部浩之のハイパフォーマンスが顕著にわかるのは、もう終わってしまったナインティナインのオールナイトニッポンだ。
ナイナイのオールナイトでは、岡村が番組開始冒頭から、最近起きたニュースや、自身の近況について話す。
矢部発信で会話が展開していくことは稀だ。
そして、
岡村は意外とオチのない話もする。
普通に怒っているだけだったり、特に終着点のないトークも普通にする。
それを、コントロールするのが矢部浩之。
要は、普通の会話を、芸人の笑える話に変えていく。
僕は、ナイナイのオールナイトを聴いていた当時に、他の芸人のラジオとは違って聴きやすい印象を持っていた、コーナーの区切りがハッキリしていて、他の芸人さんのラジオよりもキッチリしていてグダグダにならない、そんな印象があった。
それは岡村が几帳面な性格というのもあるのだが、やはり矢部の力が大きい。
順にいこう。
まず、
矢部は合いの手が抜群にうまい
無駄に口を挟まずに、相手の会話のテンポ、相手が喋りやすいように相槌をする。
そして、
それを聴く時のテンションが絶妙だ。
例えば話は古いが、ビートたけしのオールナイトニッポンで聞き手になっていたのは放送作家の高田文夫。
高田は、よく笑いそのトークに楽しんでいるのを明確に出しながら話を聞く。
お笑いにおいて聞き手が、よく笑い楽しんでいるのを明確にする事で、リスナーもその空気に持ち込むのは、常套手段で大体ほとんどのお笑い芸人がそうだと思う。
自分達はこれで楽しんでいます。
という空気感に、リスナーを引き込む、それは確かに大事なことなのだが、そこまでファンじゃない人間や初見の人から見ると、なんでそんなに盛り上がってるのか不思議に思うし、途中から聴いた人間は入ってこれない。
深夜の静寂に、くだらない事でバカ騒ぎしてるだけに聴こえる事も多々あって、そこにリスナー目線は無かったりする。
それを踏まえて矢部を考えると、相槌はしっかりして、笑ってはいるのだが、テンションはニュートラルだ。
その会話に引き込まれてはおらず、矢部はいつもの矢部のまま、会話に必要な言葉を足していく。
そして、
一番凄いのが間のとり方だ。
先ほども話したが、岡村は意外と普通のオチのない話をする。
ただ不満を言っているだけの会話に着色していくのは矢部だ。
矢部がよく岡村に大していうセリフ、
例えば岡村を評してちっちゃいおっさんという。
ラジオの中でもよく言う。
このちっちゃいおっさんは何を言ってるんだ?
という楽しんでいるのか、冷めているのか、絶妙な感覚を間と相槌でリスナーに感じさせる。体感させるのだ。
当人だけで完結させずに、その空気感ごと提示する。
分かりやすく言うと、アンガールズのジャンガジャンガのネタに近い。
アンガールズは、なんとも言えないグダグダ感を見せた後、微妙な間を作りジャンガジャンガでしめる。
あのネタは要は、日常の微妙な空気感と間を提示した後、ジャンガジャンガでしめることによって、その空気感を見ている人に提示しているのだ。
あるあるネタのハイブリッドバージョン
体感型あるあるネタと言った感じで、今見たとしても、物凄い革新的なネタだったと思う。
話はそれだが、それに似たような微妙で絶妙な空気感を矢部はリスナーに提示する。
この空気、この人おもろないですか?
とリスナーに問いかけてくれるのだ。
それの真骨頂が、矢部のツッコミの代名詞の
何言うてはるんですか?
だと思う。
なんでやねん!
ではない、何言うてはるんですか?
だ、聞いている、問いかけているのだ。
当人の独断と偏見で、なんでやねん!
と一刀両断するのではなく、
この人は何を言ってるんだろう、おかしな事を言ってる事を示唆させるように、相手に見ている人に促すように、体感させるように、考えさせるように、言うのだ
何を言うてはるんですか?
と、
矢部のツッコミは敬語ツッコミと言われる、矢部以前にはなかなか聞いたことはなかった。
矢部の敬語ツッコミは、敬語でツッコむ事の新しさは語られている事があったと思うが、
何言うてんすか?
や
何してはるんですか?
というツッコミが、
なんでやねん!や、何してんねん!
という、ツッコミの人間の独断と偏見ではなく、岡村に問いかけるように。
そして、岡村に問いかける姿を視聴者にリスナーに見えるように提示する。
矢部は、自分がおいしくなるんじゃなくて、常にボケが面白く見えるようにしている。
だからこその、
何言うてはるんですか?
なのだ。
この人はおかしな事を言ってませんか?
と、おかしな事言ってる人に焦点が当たるように問いかけるのだ。
最後に一つのエピソードを話して締めたいと思う。
大昔、ナイナイのオールナイトニッポンで、矢部浩之がポツリと言った一言がずっと頭に残っていた。
当時、フジテレビが"お台場ドットコム"というイベントをやっていた。
その話をナイナイの2人がしていて、その中で矢部がポツリと言った。
「お台場ドットコムって、主催してる側の発想ですよね、だってお客側からしたら混むの嫌じゃないですか、どっと混んでる場所なんて行きたくないじゃないですか」と
矢部はいつも相手が面白くなるように、そして、視聴者の目線を、温度を常に考えている。
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