新型コロナウイルス感染症治療薬候補①オルベスコの薬剤&臨床試験解説
【この記事は現在進行中の臨床試験を紹介・解説するものであり、特定の医薬品を推奨するものではありません。現在、新型コロナウイルス感染症に有効であるという確かな知見が確立された薬剤はありません。】
今回はオルベスコ吸入剤(シクレソニド)の臨床試験について解説したいと思います。
尚、より詳しい臨床試験情報は、下記リンク(臨床試験ポータルサイト)をご参照ください。
https://rctportal.niph.go.jp/detail/jr?trial_id=jRCTs031190269
まずオルベスコ自体の解説を簡単に。
オルベスコは、吸入ステロイド剤であり、その抗炎症作用から気管支喘息治療薬として広く臨床で用いられています。また他の吸入剤にはない、コロナウイルスの活性を抑える作用も期待されています。
ステロイド剤というと副作用が怖いというイメージを持つ方も少なくないと思いますが、吸入剤のため副作用のリスクは低いと言って良いと思いますりません。
(ただしどの薬にも言えますが、副作用が全くない薬は存在しません。薬のもたらす利益とリスクを常に考慮する必要があります。)
使い方ですが、ヘッダーの写真(帝人ファーマHPより)をご覧下さい。上部の金属部分を押し下げると、円形の開口部からエアーが噴出されるのでそれを吸い込むという仕組みになっています。
さて、本題の臨床試験ですが、
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状・軽症患者に対する有効性及び安全性を検討する多施設共同非盲検ランダム化比較試験」という名称になっています。
尚、1日3回・1回400µg(上記写真の200μgのものを2吸入)・7日間連続吸入投与することとなっています。
試験の対象は無症状・軽症患者となっています。重症化してしまうと吸入する力も落ちてしまっており吸入薬を使用するのは難しくなるという理由があると考えられます。
そして、最も知りたい点である、オルベスコが実際にはどれくらい効果があるのか(有効性)は、主に「投与後8日目において肺炎発症を抑制できたか」ということで評価します。また補助的な評価項目として、ウイルス量がどれだけ減少したかという点も考慮されます。
また、効果がしっかりあっても重篤な副作用が発生してしまったり頻度が高かったりしては安心して使用できませんので、副作用の発生率から安全性を評価します。特に今回の試験での投与量は、気管支喘息で承認されている投与量の上限より多い量となっているため、それに起因する副作用発生がないかという点も大事なポイントです。
また今回の試験ではランダム化比較試験という方法が取られます。
これは、薬の効果を証明するために①薬を使う患者さんグループと②薬なしで様子を見る患者さんグループの2つに分けて有効性や安全性を比較します。グループ間で、年齢や性別、喫煙の有無などの治療の効果に影響を与える要素に偏りが出ることを防ぐためどちらのグループになるかをランダムに決定します。
初回はオルベスコの解説をさせていただきました。どんな試験が行われているのかということを知ると少し希望が湧くということもあるかと思います。少しずつほかの薬剤についても書き進めていきますのでまたよろしければお読み頂けますと幸いです。
あとがき:今回の試験では非盲検の説明は省略いたしました。今後ほかの薬剤のところで盲検の説明のときに一緒に言及します。また、臨床試験においては、試験に参加する患者さんのことを被験者というのが一般的ですが、わかりやすさを重視するため患者さんという表現にしております。