【4/21加筆・修正】中国のアビガン論文撤回について考える(詳報)
4月4日に日本経済新聞にて報じられた、中国でのアビガン(ファビピラビル)論文の撤回。4/21現在、再度論文が掲載されたことが確認できる(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095809920300631)
試験の内容については特に大きな変化はなく、結論はやはりこの論文の結果からアビガンの効果の有無を判断することはできないと考えられる。
さて、そもそもこの論文で取り上げられた試験はどんなものだったのだろうか。ここから先はやや専門的な文章となるため、まずは↓リンクの簡単なまとめ(概略版)をご覧頂いた方が良いかもしれない。
試験は中国・深圳市の第三人民医院で実施された、アビガン投与群とカレトラ配合錠(プロテアーゼ阻害剤:HIV治療薬)投与群の比較試験であった。
ファビピラビルの投与量は1日目:1600mg×2回、2日目から14日目:1回600mg×2回と現在、日本において新型コロナウイルスに使用を検討されている用量より少ない。(日本では1日目:1800mg×2回、2日目から14日目:1回800mg×2回が臨床試験において設定されている容量である)
結果として、アビガン投与群はカレトラ投与群と比較して胸部画像に有意な改善を示し、改善率は91.43%対62.22%(p=0.004)であったとした。
一見アビガンの優秀さを裏付ける論文であるが、非ランダム化試験であったため(かつ非盲検であった)、カレトラ群の方が
・年齢が若い
・痩せている(体重が少ない若しくはBMIが低いということだろう)
・発症からより早く治療が開始された
・発熱者が少なかった
というような結果に影響を及ぼす可能性のある差が二群間に生じてしまい、本当にアビガンが有効だったかどうか疑わしい論文であるとの指摘がなされた。
したがってこの論文の結果からアビガンの効果の有無を判断するのは早計であると言えよう。現在日本国内、また海外にて複数のランダム化比較試験が進行中である。その推移を注視していきたい。
参考:medical news today